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専門医が解説:今さら聞けない子宮頸がんワクチンの最新事情


はじめまして。婦人科がん専門医として、日々多くの患者さんを診療しています。今回は、**子宮頸がんの予防に有効なHPVワクチン(子宮頸がんワクチン)**について、最新情報を交えながら解説します。

実は、日本では一時期、HPVワクチンの積極的な勧奨が差し止められていた時期があり、その間に「接種しそびれた世代」が生まれてしまいました。現在は、キャッチアップ接種という救済措置が設けられており、対象の方は無料でワクチンが受けられます。しかし、この制度にも期限があるのをご存知でしょうか?
初回接種は2025年3月末までと期限が迫っていますので、気になる方はぜひこの記事でポイントを押さえてください。


■ そもそもHPVとは?

HPV(ヒトパピローマウイルス)は、子宮頸がんの発症原因のほとんどを占めるウイルスです。性交渉の経験がある女性の多くが一度は感染すると言われていますが、その大半は免疫力で自然排除されます。とはいえ、一部のハイリスク型HPVに長期間感染が続くと、子宮頸がんへ進行する可能性が高まります。


■ HPVワクチンで防げる子宮頸がん

子宮頸がんの主な原因であるハイリスク型HPVの感染を防ぐことで、子宮頸がんの罹患率を大幅に下げることが可能だと、多くの研究・データで示されています。海外では若い女性の発症率や死亡率が劇的に低下している国もあり、「ワクチンの効果は確かにある」と認められています。


■ キャッチアップ接種とは?

日本では、2013年から2022年までHPVワクチンの積極的接種勧奨が停止されていました。その間に接種の機会を逃した女性(主に1997年度~2007年度生まれ)が、定期接種として無料で受けられる救済措置が「キャッチアップ接種」です。

  • 対象者:公的に定期接種の対象年齢だった当時(小学6年~高校1年相当)に接種できなかった女性(生年月日で区切られます)。

  • 費用:無料

  • 接種回数:過去の接種歴によって異なり、多くの方は3回接種。

  • 実施期間:地域によって異なりますが、国としては2025年3月末までに「初回接種」することを推奨しています。

ポイント

  1. 2025年3月末までにワクチンの1回目を受ける必要がある(2回目・3回目はその後でもOK)。

  2. 接種間隔に注意してスケジュールを組むこと。

  3. 対象者は自治体からのお知らせを受け取っている場合が多いが、未着の場合は住んでいる市町村の窓口や産婦人科に問い合わせを。


■ どうして初回接種の期限があるの?

ワクチンの定期接種制度は国・自治体が費用補助を行う仕組みです。無期限ではなく、一定期間内に受けなければ「定期接種」として扱われなくなり、自費になる可能性があります。

したがって、「まだ受けていない」「対象世代だけど知らなかった」という方は、2025年3月末までに少なくとも1回目のワクチンを受けることが重要です。


■ ワクチンの安全性は大丈夫?

過去に副反応に関する報道が目立った影響で、ワクチンそのものへ不安を抱える方もいるかもしれません。しかし、現在の科学的根拠では「因果関係が明確に証明されていない」という見解が主流です。
もちろん、どんなワクチンにも副反応はありますが、そのリスクと子宮頸がん予防のメリットを比較した場合、メリットの方が明らかに大きいと考えられています。詳しい情報は厚生労働省のサイトや、信頼できる医療機関の資料で確認するのがおすすめです。


■ 接種時の注意点や相談先

  1. 年齢や既往歴を確認する

    • 既に一部接種した方は、残りの回数や接種ワクチンの種類を確認する必要があります。

  2. 産婦人科や小児科、保健センターに問い合わせ

    • 自分がキャッチアップ対象か不明な場合は、まずは自治体のHPや保健センター、もしくは産婦人科に問い合わせるとスムーズです。

  3. 副反応に不安がある場合

    • ワクチン接種後の経過観察や副反応に関する相談窓口があります。事前に主治医やかかりつけ医に確認しましょう。


■ 専門医からのメッセージ

私自身も月に100名以上の婦人科がん患者さんを診察する中で、「もっと早くワクチンを知っていれば…」と悔やむ声を何度も耳にしました。HPVワクチンは100%のがんを防ぐわけではありませんが、子宮頸がんリスクを大幅に下げる有力な手段であることは間違いありません。

一時期の報道や情報混乱で接種機会を逃した方、まだ迷っている方こそ、まずは正しい情報を集めて検討してみてください。キャッチアップ接種の期限である2025年3月末まではあとわずか。この機会を逃すと自費になる可能性もあるため、ぜひお早めに行動を!


■ まとめ

  • キャッチアップ接種の初回期限は2025年3月末

  • 接種対象の方は無料で受けられるが、自治体ごとにスケジュールが異なるので要確認

  • 副反応や安全性に関して不安があれば、医師や保健所に相談し、最新の正確な情報を得ることが大切


今後の連載予定

  • 「もう少し詳しく!HPVワクチンの種類と接種スケジュール」

  • 「子宮頸がんはこんな検査でわかる:検診の受け方・タイミング」

  • 「子宮頸がんと漢方治療?専門医が解説する補完療法の可能性」

これらのテーマで、さらに深い情報や疑問に応えていく予定です。フォローや「スキ」、コメントでのご質問もお待ちしております。あなたの健康を守る一助となれば幸いです。


【免責事項】

本記事は一般的な医療情報を提供するものであり、個々の症状や状況に合わせた診断・治療を行うものではありません。具体的な判断や治療方針については、必ず医療機関の専門家にご相談ください。


この記事をきっかけに、HPVワクチンや子宮頸がん予防について少しでも関心を持っていただけたら嬉しいです。今後も婦人科領域に関する情報を定期的に更新していきますので、ぜひチェックしてくださいね。

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