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ハイパー宇宙人息子誕生

犬の鳴き声で目が覚めた気がした。
お盆の真っ只中の早朝、スースは目覚めた途端破水した。
「まただ。」とスースは思った。
8年前のキャノンの時と全く同じパターン。
破水ときくと『大洪水』みたいなのを想像するかもしれないけど、実際は『雨漏り』程度(あくまでスースの場合はかも)。生理用品をあてて病院に向かった。 

破水の場合は即入院。
陣痛はきてなかったので、まだまだお産にはならないだろうという予想。夕方頃に陣痛始まる。だんだん強くなる陣痛を拳を腰の辺りにグリグリして逃す。陣痛逃しのプロかってぐらい上手い具合に痛みを逃がせるので思わず、近くにいたスッタに「天才かもしれん!」と興奮気味に伝える。少しでも眠って体力温存できる様に、と、弱い睡眠剤を処方されて飲んだ。

睡眠剤が効き始めるよりも早く陣痛が進み、あれよあれよという間に分娩室に運ばれることになった。
分娩室はカーテンで二つに仕切られていて、カーテンの向こうからはすでにどなたか出産に挑んでいる声がきこえる。
助産師さんが
「お盆でせんせいが少なくて‥。」
と、少し申し訳なさそうに言った。
反復横跳びをしているかの如く、カーテンから現れて股をのぞいてはカーテンに消えていくお医者さん。
2人の出産を一手に引き受ける勇姿だ。
さすが経産婦といったところか、スースのお産はスムーズだった。
(キャノンの時は全然出てこなくて、結局お医者さんがスースに馬乗りになり両手で腹を押し、ひり出したのだ。病院中にスースの地を這うようなうめき声(スースは声が低い)が響き渡り、待合室で待っていた、普段飄々としているスース父がスース母に「大丈夫かな?」ときいたという。)
産み終えた途端に飲んでいた睡眠剤が効き始め、我が子との対面もそこそこにスースは爆睡してしまった。

こうしてオーピーは誕生した。

授乳の時間になり起こされた。
新生児室に向かう。
新生児室では生まれたての赤ちゃん達が小さく透明なケースの様なベッドに入って並んでいた。
みんな柔らかそうで心地よさそうな産着に身を包み、頭には小さなニット帽をかぶっている。
オーピーを見つけて、スースは「まただ。」と思った。
8年前のキャノンもそうだった。
みんながかぶっている可愛らしいニット帽、オーピーはかぶっておらず、頭の横にちょこんと置かれているのだった。

みんななんならぶかぶかなのに‥
キャノンもちょこんと置かれてたな‥
頭の鉢がでかいんやなあ‥
脳みそがめっちゃつまってるんちゃうん?多分。知らんけど‥

などと、帽子のせいで取り止めもない考えが頭をよぎるスースであった。


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