一発試験と人々
ここでの初めての日記の冒頭でも触れたのだけど
免許を更新忘れでうっかり失効してしまって、現在一発試験で再取得に臨んでいる。
先日、仮免許の技能試験をパスしたので残り2つの試験である。
当初はとんでもないことになったと思ったけど、
今さらになって学科の勉強や、試験場に何度も通ったりするのは案外面白い。
試験のために試験場に行くと、やはり一発試験を受ける人達と一緒になる。
自分みたいに失効した人もいるけど、届け出教習所というところに通っている人もここの一発試験を受けるらしい。
外国人の人や、大学生なんかが結構そういう人の中にいるようだった。
自分は指定教習所に通っていたので、不思議に思った。やっぱり安いからだろうか。
色々な人を見るのが好きだ。
とある日の外国人の人。
何度も試験中に他所を見るので試験官にガンガン怒られ追い出されそうになる。
何であんだけ怒鳴られてもまだ見るのだろうかと不思議だったけど、
外に出ると同じ試験を受けていた別の女性と一緒にいた。
どうやら夫婦で受けに来ていたみたいで、たぶん奥さんを見ていたのだろうと分かった。
若い学生風のスケボーを持った男の子。
やっぱり若い女の子にナンパ風に「初めまして」と話しかけている。
どうも何か教習所が一緒で顔を見かけたことがあるような風だった。
ナンパだろうと思っていたらその男の子の彼女のような子が戻ってきた。
みんな同じ試験を受けているらしい。
その後どうも彼女だけが合格したようで、先の2人だけが試験室から何故かさわやかな笑顔とスキップで廊下へと消えていった。
どういう関係だったのか、何故スキップしていたのか良く分からない。
仮免技能試験に初めて行って落ちた日に、会った女の子。
何にせよ試験というのは落ちると予約して解散、受かると手続きのために居残りになる。
技能試験はとくに、試験中も落ちるとその時点でコース走行が終わるので失点が早ければ帰されるのも早い。
そんなので試験に落ちてトボトボ帰りのバス停を待っていると、
ほどなくして自分の後で試験を受けていた女の子がやってきた。
自分と帰り時間が被るというのは、かなり爆速で落ちたということになる。
そんなわけでバスの中で話をした。
大学生の子で、やはり届け出教習所に通っているそうだ。
教習所では教官にベタ褒めされて、昨日も教習所で練習していたので自信満々のルンルンで受けに来たら爆速で落とされたらしい。
笑ってしまった。
どうも最初のクランクを出る左折で後輪が乗り上げていたようだ。
何でも教官からうけた『左折は小回りでなるべくササっと行くべし』という教えが原因だったようだ。
一発試験受けさすのに、適当な教官がいるもんだ。
その子と次は予約一か月先かと嘆いていた。
その後彼女は受かっただろうか。
自分は何か試験場の雰囲気が好きだ。
普段なら交わらないような、街の雑踏よりもっと多様な雰囲気の人達が
1つの場所に入り混じって列に並んだり、言葉を交わしているところが。
何となくその多様さが、それぞれの人生をより際立たせているように思える。
印象に残るのは技能試験の車を待っているベンチで座っている時間だった。
試験なので、私語もスマホも禁止。
真夏の太陽とセミの音だけを聞きながら、年齢も国籍もバラバラの人々が
汗をかいてじっと何も言わず、空や地面をそれぞれに見ている。
ただじっと過ぎていく時間の中に、様々な人達がバラバラのまま空間を共にする。
スマホやインターネットで見知らぬ人と時間を共有することが無くなった最近、
その時のベンチは何か自分にとって深く心に残るものがあった。
そして試験には落ちたけど。
2回目では通ったから良しとしよう。