失敗から学ぶ7
まとめと提案
(1) CdS/CdTe太陽電池で、連続光照射実験をしている時、ある瞬間に短絡電流(光電流)が急激に減少する素子がある。そしてこの素子への光照射を止めて、短絡電流が流れない状態でしばらく経った後、光照射をすると短絡電流は元の値に戻る。この現象を、私は、光電流疲労と名付けた。
(2) ペロブスカイト太陽電池に於いても、光電流疲労現象が生じる素子がないか実験することを提案する。 もし、光疲労現象があれば、この現象を利用して高寿命のペロブスカイト太陽電池を短期間で予測できると考える。
(3) ペロブスカイト太陽電池には、色々の界面が存在する。その界面で発生する電場は、欠陥などの深い不純物準位により変化し、光電流疲労の要因となりうることが考えられる。
(4) さらに、このような深い準位のある半導体で太陽電池を作る場合は、光電流が流れて電子や正孔が深い不純物準位にトラップされ、pn接合の構造が変化する。その変化を積極的に利用して、トラップされた後のpn接合が高い変換効率になるということも考えられる。実際、セレン太陽電池では、太陽光に当て続けて電力を取り続けると変換効率が上がると言う話を聞いたことがある。砂漠などで利用する太陽電池では、このような構造が望ましいのかも分からない。
以上、最近ペロブスカイト太陽電池が脚光を浴びているのに刺激され、私の数十年前の体験を述べた次第である。昔の記憶にもとずく話なので、間違っていることも多いと思うが、ペロブスカイト太陽電池は、日本独自の技術とのことで、私もその成功を願っている。このノートが何らかの参考になれば幸甚である。