僕たちは大人になれなかった
僕たちは大人になれなかった
恋愛小説はあまり読まないのですが、この本はとても読みやすくて面白かったです。
私は、昭和生まれ、平成に育って令和は親といった具合です。
この小説は、ちょうどそのくらいの世代から少し上かな。なんかタイプスリップしたような気持ちになります。映画のような恋愛、ドラマのような展開そういう感じではなく、もしかしたら自分の昔の話かもって思えるお話といった感じでしょうか。すごくリアルな物語です。
平成の雰囲気がすごくノスタルジックに描かれています。
それから、個人的には、このヒロインの女の子が自分と感覚がすごく似ている感じがして楽しかった。小沢健二が好きってところがいい。出てくる音楽やなんかも懐かしいものばかり。いいとこついてるなって思います。
ホントに、描写が細かいのかなって思います。そこにいないんだけどなんかほんとにそこに自分がいるような感じ。自分の過去リアルに体験したことがある「感覚」の部分だけをうまくつなぎ合わせてくれるような本です。
自分の感覚って年によって、経験することによって、すこしずつ慣れとか、先入観とか?いろんな要素で変わっていくと思うんです。初めての事と、100回目の事じゃ感じ方も全然違ったり。
人生で立った一人、僕が自分より好きになった相手の話。
それはただ美しい話じゃないし、大きな事件やドラマチックな展開があるわけでもない。
人の弱さとか、不完全さが愛おしくなるようなそういうお話です。
日常の嬉しいことや悲しいことを報告したくなったら、それは恋だと、作者は言います。
美しいものや、おいしいもの。写真を撮るときに思い浮かべる人がいたら、そういう事でしょうね。私もそう思います。