精神科医をめざす

はじめに

こんにちは、ぽろにあです。私は医学部卒業後12年、某科医として勤務し、13年目の春から精神科医に転科しました。この経験を踏まえて、精神科医になろうとしている初期研修医の方、精神科への転科を考えている先生方に向けて、注意点や勉強しておいた方がよいことを書いてみます。お役に立てば幸いです。何かご質問がありましたらTwitter(@ru4WHdE0KyUUvLx)までお気軽にどうぞ。

精神科への転科を含めた自己紹介

 将来何科に進もうか――大学卒業時、3つの科でとても迷いました。1つは結局12年取り組むことになる某科、あとは放射線科と精神科です。検査をたくさんしないと診断がつきにくいような科ではなく、「立ち合い勝負」とでもいうような科に行きたいと思いました。結局卒業大学の某科の医局に入局し、大学病院と関連病院で数年勤務し、その後は医局を辞して(医局を辞した理由については、そのうち改めてお話ししたいと思っています)民間病院で医長、部長職を経験しました。

 その間、某科のことなら知らないことは何もない、というレベルまで、徹底的に勉強し臨床に取り組みました。しかし12年目のある日、突然自分の中で情熱が燃え尽きてしまったことを感じました。同時に、学生時代に専攻科を迷ったことを思い出しました。時は学会専門医から専門医機構専門医への過渡期であり、専門医を取得することまで考えると転科のハードルはかなり上がっていましたが、精神科はまだ民間病院で学会専門医を取り得る(指定医も)時期で(大学病院勤務や専門医機構専門医は避けたかった)、精神科病院で精神科医としてのスタートをきることを決めました。

 転職エージェントを介して、関東の某精神科病院への就職を決め、それから入職までの間に精神科の教科書を大量購入して、とことん勉強しました。勿論臨床のさじ加減的なところは、実際の勤務の中で学ぶべきことなのですが、その前に基本的な知識がないと話になりません。指導して下さる先生も、いい歳の医者にいちいち基本的なことから教えるのは骨が折れるでしょう。ひとまず向精神薬(それまでデパスとマイスリーぐらいしか知りませんでした)の一般名、商品名、用法容量を単語帳に書いて暗記し、それぞれの作用機序、特性、副作用などを覚えました。お勧めの本は後述します。

 そして3年の月日が流れ、4年目に精神保健指定医を申請し取得、精神科専門医を受験し筆記合格しました。精神保健指定医のレポートの要領、専門医試験の筆記試験についての記事は、また別に作らせていただきます。

精神科を考えている初期研修医の方へ

 精神科病院に勤める可能性を考えると、いろいろとできるようになっておいたことや、学んでおいた方がよいことがあります。精神科病院では、患者さんの全身管理を含めて、かなりのことを自分でやることになります。内科の先生がいてくれる病院もありますが、非常勤で週1回しかこない、などの病院もざらにありますので。

 まず、誤嚥性肺炎や麻痺性イレウスへの対応を求められることが多いので、基本的な補液や抗生剤選択を学んでおきましょう。心電図についてはQT延長についての知識が大事ですが、今は自動解析でたいていはわかります。認知症高齢者や、長期入院患者さんが最終的に肺炎等で亡くなることも多いのでDNRの取得についての説明も学んでおくべきです。手技としては、患者さんが転倒して外傷を負うことにも遭遇しますので、基本的な縫合手技ができることは必要です。また、中心静脈カテーテル挿入もできるとかなり役立ちます。あとは精神科に進んでからでも間に合いますが、頭部画像の読影や、神経診察についてもできるとより良いです。

お勧めの本

 精神科関連の書籍は200冊以上読みましたが、ここでは少しだけ……。

『精神科臨床はじめの一歩』宮内倫也著 :転科前にこれを使って、各薬剤の特性をまとめて覚えました。とても良い本です。

『予測して防ぐ抗精神病薬の「身体副作用」』長嶺敬彦著 :向精神薬の副作用については最低限このぐらいは事前に勉強しておきたい。

『精神障害のある救急患者対応マニュアル』上條吉人著 :精神科勤務の中で求められる救急対応については最も分かりやすいと思います。

おわりに

 以上、精神科専攻を少しでも考えている皆様のお役に立てば幸いです。お読みいただきありがとうございます。



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