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短い物語P&D『星々のディスタンス』

宇宙望遠鏡は黙って観測していた。
地球と他の惑星との距離が急速に離れ始めているらしい。
パンデミックのせいだねと、人は冗談の飛沫を飛ばしている。
離れて行く星があれば、その反対もあるだろう。
近すぎて月の気持ちなんて考えたこともない。
宇宙望遠鏡は地球に急接近する隕石も発見した。
やんちゃで憎まれっ子は世にはばかる。
過去を償っていなくても大丈夫らしい。
隕石の衝突によって滅ぶと分かった人類とって、そんなことはどうでもいいこと。
大富豪と役人は何もできないだろう。
大勢の人たちがゲームをしたまま終わるかもしれない。
おそらく誰も間に合わない。
神々のヘルメットは土の中。

地球上は最後までいざこざ絶えず人間らしい。
そんなことには興味が無い宇宙望遠鏡は、隕石上に人影を見つけた。
けれど、もうフェイクニュースにもならない。
ただなぜか、隕石の軌道が変わった。
地球を避けるように遠ざかる。
これが奇跡なら予言されていたのかもしれない。
偶然ならば後で誰かが脚色するだろう。

STAY EARTH

宇宙における僕たちの認知度は、決して低いわけじゃない。 ~終わり(短い物語P&D『星々のディスタンス』)

星々のディスタンス

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