気が利かない女の呼び名
どうしようもないタイトルをつけてしまったが、色々考えたのだけど今の所これがベストである
何の話しかというと女性を一言で形容する様々な呼称についてだ
古今東西昔から年齢や性格、見た目や経歴などのスペックから何となく本人を知る周辺の人間なら納得してしまうような、女性に対する褒め言葉にも陰口にもなるスラング的な形容詞がたくさんある
例えば「お嬢様」
これが一番わかりやすい、本人との関係性によって褒め言葉にも陰口にもなる形容詞的な称号で「彼女はお嬢様だから」と言われたら多くの人は恵まれた環境に育ち、苦労知らず世間知らずで見た目は人並み以上、みたいな女性像を思い浮かべるんじゃないだろうか
ただ「お嬢様」はエセも多いし反感から蔑称に用いられることもままあるのでホンモノの場合は「深窓の令嬢」とか「箱入り娘」とか呼ばれてきたと思われる
一方、明らかな悪意を含む「行かず後家」「出戻り」「お局」などの、主に結婚が相い整のっていなかったり年齢がいった女性に対して(私か!)昔から言われてる古典的な蔑称も公には減ったとはいえ一部のムラ社会では未だに根強く使われてるらしく、長年女性を生き辛くする要因の一つとして浸透してきた
それらのド定番とは別にバブルの頃からは流行語的な呼び名も色々生まれ、すぐ思いつくだけでもおやじギャル、艶女(アデージョ)、シロガネーゼ、美魔女、癒し系、セレブ、森ガール、不思議ちゃん、メンヘラ女、歴女、鉄女、、etc. ライフスタイルに至るまで細分化された女性への呼称の例は枚挙に暇がない
これらはすべてマスコミが仕掛けて広まったものなので時代とともに流行り廃れてきたのだが、この中だと「美魔女」は需要が拡大する一方のアンチエイジング市場とがっつりタッグを組んでしぶとく定着してきたと言えよう
がしかし、なんかもう語感が古い、完全に古い(個人の感想)
全く個人的な見解だけれど、これを褒め言葉として使う感覚が昔から全然わからなくて、私の中では「美魔女(笑)」でありどちらかというと蔑称にカテゴライズしてきたのである
言葉の意味付けというのは人それぞれなので美魔女を目指している人や、呼ばれて嬉しい人や良かれと思って呼んでる人達は「美魔女=年を重ねても美容に気を使ってる綺麗な女性」という褒め言葉で使ってるだろうから否定はしないけれど
少なくとも私はそうは思わないので実際たまーに気を使っていただいてそう称されることがあっても
「は?真夜中に豆大福を食べながら半田ゴテをいじってる女に向かって一体何言ってんの、こちとらヨガもしなけりゃハーブティーも飲まないし」と期待に添えなさすぎて申し訳ない気分になるのである
いや、美魔女の話をしたかったのではない
気の利かない女の称号についてである
発端は友人Sりんだ
Sりんと言えば前回の記事で登場した「zoomの背景が婚礼ダンス」の女性であり、週1ペースで彼女ともう1名でzoomでひっそりと生存確認しているのだが、前回Sりんが自分のことをふと「でくのぼう」だとつぶやいた
その時私はキョトン顔をしたと思う
理由としては
でくのぼうって久々に聞いたな
でくのぼうって女性に使う言葉ではないのでは?
でくのぼうの「ぼう」って「棒」みたいだから図体が大きくぼーっとした男性のことじゃないの?(Sりんは小柄)
などの理由からしっくりこなかったのでそう言ったらSりんはすぐ意味を調べてくれた
どうやら「でくのぼう」は「木偶の坊」で棒ではなかったが木彫りの人形のように役に立たない、気が利かない人という意味だった
私のイメージとはそんなにズレていないし、Sりんは一般的には十分に優秀な女性なので謙遜が過ぎるのだがそんなことよりも
私が気になったのは木偶の坊の「坊」である
坊って坊や、というように年齢はともかく少なくとも男性に対して使う呼び方なので木偶の坊は役に立たない、気が利かない男性のことだろう
なるほど、だとしたら女性の場合はなんて言えばいいのか、言葉遊び好きの頭が無駄に思考を巡らせる
・・・
・・・
・・・
木偶の嬢(でくのじょう)!!
そうだ、でくのじょうだ、コレはいい!語感もいい!(語感大事)
不要不急の物しか作らないし、飲み会では自分から料理を取り分けたりしないし、焼き鳥の盛り合わせの串は外さずにそのまま1本食べたいし、人にビールを注ぐのも注がれるのも苦手だし、生搾りレモンサワーを頼むくせに店の人に絞ってもらうし、立食のパーティーでは全く動きたくないので気付けば円卓に一人になっていてウーロン茶を飲み続けているような
まさに役に立たない、気が利かない、愛想のいらないことなら全部任せて欲しい私にはぴったりじゃぁないか♡
もう「木偶の嬢ブルース」でも歌えそうである
しかも蔑称の「木偶」の後に敬称の「嬢」が付くことで落としすぎない絶妙の甘辛ミックスなバランスをとっているところも言葉として良い、気に入った
「木偶の嬢 -dekunojo-」
これなら人から呼ばれてもいい、というよりむしろ自分から言いたい感じさえある
共感した3人はそこからいかに自分は木偶の嬢か、という話でひとしきり盛り上がり、zoomを終了する頃には「生存確認ミーティング」は「木偶の嬢ミーティング」となっていた(そもそも「嬢」というにはおこがまし過ぎる年代だがそこは触れないでいてほしい)
ちなみにこれまで私が個人的に名付けられて気に入っていた呼び名に「強がりのホステス」というのがある
これも「ややこしい女だけど身綺麗にはしてる」という全体的にダメな中に僅かに救いのある絶妙な蔑称で、そのセンスを大変気に入ってたけれど「密」を避ける新時代においてはもうホステスでもないだろう
冷静に考えればひとつも褒められた呼び名ではないのに何故かしっくりくる「木偶の嬢」という新たな女の称号には、どこにも属せないゆらぎ世代の自分達が一息つけるちょっとした居場所を見つけたような安堵感を覚えたのだった
紫陽花を 眺めて笑う 木偶の嬢
(先日あり得ない色に焼きあがったスコーンを添えて)
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