「鈍感力」がARを創る―Nintendo Switchを手がけたUI/UXデザイナーのトレンドを生み出す挑戦【Pretia's Stories】
こんにちは!Pretia TechnologiesにてHR Managerをしています、田中です。
Pretia Technologiesには、ひとりでUI/UXを担ってくれているメンバーがいます。任天堂でNintendo SwitchのUI/UXを手掛け、”Flipbookアーティスト”としても活躍するUI/UXデザイナーの杉野さんに、Pretiaでのお仕事や、Pretiaの求めるUI/UXデザイナー像についてお伺いしました!
Pretia Technologies Inc. UI/UX Designer 杉野公亮(Masaaki Sugino)
新卒で任天堂株式会社に就職しUI/UXデザイナー・ディレクターを11年務める。2021年UI/UXデザイナーとしてプレティア・テクノロジーズ株式会社に入社。Flipbookアーティスト「もうひとつの研究所」としても活動中。
デザイナーひとりで変えられることは少ないからこそ、ユーザー体験全体を考えられるチーム作りをしてきた
ーまずはご経歴についてお伺いできますか?
今は存在しないのですが、当時は唯一デザイン・アート系の高専だった札幌市立高専に通っていました。その後慶應義塾大学の大学院に進学し、デジタルエンターテイメントの研究室にいたんです。卒業後に任天堂に入社し、UIデザインのグループに配属されました。そこから11年くらい任天堂にいて、その後数年間Flipbookの作家活動に専念し、Pretiaに入社しました。
↑杉野さん制作のFlipbook
実は大学院の研究室でARっぽいようなことをやっていたんですよね。当時はスマホがない時代だったのですが、手持ちサイズのデバイスにウェブカメラをつけて、そのカメラでものをみたのちのギミックを作っていたりしました。たとえばカメラでライトを写したときに白く光りますよね。その真っ白な向こう側に世界が広がっていて、そのなかでキャラクターが動いて、タップするとそのキャラクターが目の前に落ちてきて…みたいなものを作っていたんです。技術的には簡単なことだったのですが、グラフィックも作りながら、プログラムを組んで、ひとりで作っていました。
ーそうだったのですね!任天堂ではどんなお仕事をされていたのでしょうか?
任天堂のUI/UXデザイナーとしてデザインするものは幅広く、ゲーム内のデザインをすることもあれば、ハードウェア自体をデザインすることもあります。私はハードウェア内蔵の本体機能のUI/UXデザインを行っていました。11年勤めたなかで、デザイナーをしつつも、ローカライズの橋渡し担当だったり、デバック指示担当だったりと、いろいろなロールを渡り歩きましたね。
最終的にはデザイナーを指揮する側のリーダーを務めたりもしていたのですが、それは自分の課題感から引き受けたロールでした。いちデザイナーとしてデザインをしていたときは、「ここを使いやすくデザインしたいと思うと、仕様から変えないとどうしようもない」と思うようなことがあったのですが、デザイナーひとりだけの力では仕様からは変えられないんです。だからこそ上流からデザインを考える必要があると感じて、ディレクターにさせてもらったという経緯があります。上流を考え、ワイヤーフレームから書くということからしないと、本当に良いものは作れないなと思うようになりましたね。
ーなるほど…!
ディレクターを務めるようになってから、当たり前ですが、多くのUI/UXデザイナーは自分の担当しているところ「だけ」を見て仕事をしているなと強く感じました。例えばSwitchの電源ボタンを押して初期起動する場面のことだけを考えるのは、”初期起動の流れ”を考える観点からは不適切なんです。お客様がワクワクしてSwitchを買って、家で箱を開け、ジョイコンをセットして、そうやって電源ボタンを押すーそれらがすべて、初期起動の流れですよね。
全体を作っているという認識がないと、実際のサービスを使ってもらったときにお客様の体験に違和感が生じてしまうんですね。全員が全体を作っている認識を持たないとダメだなと思いました。任天堂内で、全員が全体を作っているという気持ちをもつように仕事ができたらいいなと思い、その思想を周りの人に伝えていました。
この思想に変えていくためには、デザイナーチームだけを見ていてはもちろんダメなんです。パッケージを作る人、CMづくりを担う広告担当、エンジニアなど、自分がディレクターになる前には関わらなかったような人たちと話をして道筋を作り、仕事をすすめるようにしました。そうやって、Nintendo Switchはユーザー体験を俯瞰して考えるようにしましたね。多くの方に使っていただけているようで、自分の努力が少しでも意味あるものになったかなと思います。
自分に舞い込んでくる良い話は「運命だ」と思う
ーそこから任天堂を退職されますね。
もともとずっと任天堂にいるつもりはなく、作家活動をしたいなと思っていたんです。節目として10年くらいかなぁとなんとなく思っていて、自分がやりたかったことをやるという流れで退職しました。
作家活動をしていたものの、コロナ禍で出版業界が不況になってしまって…。ちょうどコロナが猛威をふるい始めた年に、ワークショップで活動を広めようとしていたんです。その計画が頓挫してしまって、もともとフリーランスとしてUIデザインを業務委託で請け負っていたPretiaに「もう少し仕事量を増やせないか」と相談しているうちに、だったら入社しませんかという形で正社員になりました。
私は北海道に家族と住んでいるのでフルリモートワーク前提だったのですが、それもOKとしてくれて。フルリモートで上手く仕事ができるのかと少し不安はありましたが、働いてみて、意外とやっていけるんだなと思いますね。
ーPretia以外に迷う選択肢はありませんでしたか?
それが、なかったんです。任天堂に入社するときも、エントリーシートを書いた会社が3つくらいしかなくて。こうやってお誘いいただけることが「運命だ!」と思っています。これまでの人生のなかでも、いろんなお話があったなかで、思っている以上に良い方向に進みそうだ、進んだという経験の方が多くて、運命を大事にしているところがあるかもしれません。特にPretiaとの接点で言うと、自分が大学院でARっぽい研究をしていたことも相まって、なんだか”戻ってきた”という感じです(笑)。
ーPretiaのUI/UXデザイナーとして、どんな仕事を行っていますか?
まずプロダクトマネージャーから降りてきた仕様や軽いワイヤーフレームを受け取りますが、製品として考えた際に足りない部分がたくさん出てきます。足りない部分はあれど、ワイヤーフレームからは「プロダクトをどういうものにしたいのか?」という想いがにじみでているので、それを咀嚼し、解釈が及ばない部分はディスカッションをしたうえで、さらに「この製品がなにを求めてどこにいこうとしているのか」を定義します。
考えたり聞いたりしていると、「この製品のワイヤーフレームはこうあるべきかな」というのがどこかで整うんです。そうして自ら新しくワイヤーフレームを組んで、こういう想いで変更しましたとプロダクトマネージャーに戻します。そうしてデザインを作っていく、という感じですね。
ーそのワイヤーフレームを突き返されるようなことはあったりしますか?
私の仕事の仕方として、ワイヤーフレームに対して理由を答えられない部分ってないんです。ここの画面はどうして存在するのか、なぜこんな色なのか、どうしてここにボタンがあるのか…など、任天堂時代の仕事のあり方もそうですが、すべてひっくるめて考えていて、答えられない部分はなくて。ちゃんと説明ができると、プロダクトマネージャーも、その先のクライアントさんも理解してくれますね。あまり突っぱねられるようなことはないです。
プロとして、「良い塩梅で手を抜く」
ーPretiaのデザイナーとして勤めてみてどう感じていますか?
任天堂で製品をつくるときは、2-3年かけて1つのものをつくるというスタイルでしたが、Pretiaでは全く違っていて…。3ヶ月、長くても5ヶ月でデザインを完成させ、検証と修正を繰り返しています。だからこそどんどん新しいことに挑戦して、トライアンドエラーを繰り返して学びを得られるのは面白いなと感じていますね。
加えて、スタートアップに勤めてみて、「良い塩梅で手を抜く」必要がある場面に多く遭遇します。デザインは、凝れば凝るほどいくらでもできてしまうんですよね。でもそうすると時間がなくなってリリースが遠のく。「良い塩梅で手を抜く」、つまり機能や仕様の何らかを”切っていく”必要があり、適切に切るべき場所を考えるというのも楽しいなと思っています。「良い塩梅で手を抜く」というのは製品を雑に考えているというわけではなくて、プロダクトの一番見せたいところが一番きれいに見える状態をつくるということです。これを思考し続けるということが、私にとってはとても楽しいですね。
数ヶ月前に自分がデザインしたものを見ると、「ここは改良の余地あったな」と思うようなことがあるんです。ふと、そうやって思えるということは自分自身が成長しているからだなと思ったんですよね。アウトプットをし続けるとスキルが上がっていくってことだなと思って。これも最近の面白い発見です。
ー逆に大変なことは?
英語です(笑)!社内公用語が英語なので、キャッチアップするのに精一杯です。
また、UI/UXデザイナーがひとりなので、UI/UXデザイナーという肩書きでありつつも、ポスターや証書、ビデオ会議の背景画像、ロゴなんかも作っていて、普通のデザイナーとしてはやれないような範囲の仕事を任されていますね。
UI/UXデザインだけを行っていると、そっちのスキルばかり尖ってしまうように感じます。ロゴやポスターなんかもつくってみて、新しいエッセンスを感じることがあって、じゃあこのエッセンスをUI/UXに逆輸入しようみたいなこともあったりして。面白いですよ。
ARという”新しい土壌”で、”新しいUI”を作っていきたい
ーPretiaのUI/UXデザイナー像とはどんな方でしょうか?
自分もそうなのですが、日常生活において鈍感な人が良いなと思っています。気づかないことが多いけれど、その、”自分が気づかない”ということについては認知しています。逆に言うと、気づきの良い人はどんなUIでもなんとかできてしまう。私は悪いUIは使うことができないからこそ、開発者であるという目線を削って、自分がユーザーだったとしたらこれはどう感じるのか?という視点に徹していけるのだと思います。日常生活ではいろんなことに気づかなくてよく妻に怒られているのですが…(笑)。
マインド面では、多くのデザイナーが社内にはいないからこそ、UI/UXをメインにしつつも、いろんなことに興味があって手を出せるような人が向いているのではないかと思いますね。
ー杉野さんがPretiaでやってみたいこと、成し遂げたいことはありますか?
AR空間上でできる新しいUIを作ってみたいと思っています。
UIにもトレンドがあって、グラデーションや、つややかなボタンが好まれていた時期がありました。このトレンドでは、パッと見ただけで「ボタンである」ということがわかりやすいようなデザインだったのですが、少し経つと、フラットデザインにトレンドシフトしたんですね。この大きな変化で、パッと見ただけではただの文字なのかボタンとして配置されているか、ユーザーが迷うわけです。フラットデザインが出た当時は混乱を招いていたと予測しますが、だんだんとメジャーになって、だれもがわかるようになっていったんですね。
そんな感じで、世界でも新しい”AR”という土壌を使って、”新しいUI”のトレンドを作りたいなと考えています。新しい土壌だからこそUIのトレンドづくりにも挑戦しやすいとも思いますし、未来を感じますね。こんな未来に共感してくれる人と働けたら嬉しいなと思います。
ーありがとうございました!
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