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【Investors’ Interview vol.3】小学館が構想する「未来のメディアとARの関係性」とは


株式会社小学館 嶋野様
小学館 ユニバーサルメディア事業局チーフプロデューサー(兼)XR事業推進室室長
早稲田大学卒業。小学館入社後、「CanCam」や「AneCan」等の女性ファッション誌の編集長を歴任。女性メディア局チーフプロデューサーとして「雑誌のブランド化」を進めた。プレティアとは「まちがもっと好きになる」をコンセプトに「ARタウン」というAR事業で協働中。ほかにも現在は小学館発のメタバース「S-PACE」を立ち上げる等、XR領域における出版社の可能性を拡大させるミッションに取り組む。


ーなぜ今回プレティアに出資していただけたのか、その経緯を教えていただけますか?

嶋野 私たち小学館は前々から「場のメディア化」ということにチャレンジしていたのですが、コロナ禍でその取り組みが止まってしまいました。そんなとき、牛尾さんはじめプレティアの方々にARの可能性を教えていただき、ARを活用すれば「街そのものをメディア化する」という新しい挑戦ができるのではないかと考え、共同でプロジェクトを推進していくために出資に至りました。

「場のメディア化」構想を具現化したのは、CanCamという女性ファッション雑誌がプロデュース事業として行ったナイトプールというものが始まりでした。読者の方々から「夏といえば海やプールに行きたい、でも日焼けはしたくない」「水着は着てみたいけど、知らない人に見られるのは恥ずかしい」といったインサイトが集まり、それらの要望を満たす場としてナイトプールという事業を始めたのです。
CanCamがプロデュースするわけですから、装飾や浮き輪などロマンチックなものをそろえたのですが、それが可愛いということで、ナイトプールで自撮りして自分のSNSにアップする若い女性が続出しました。それが話題となり、「行ってみたい」という声が増えて一気にブームになりました。こちらが意図したことではないのですが、これが結果的には2017年の新語・流行語大賞を「インスタ映え」という言葉で受賞するに至りました。

そういった取り組みを通して、本やWEBサイトではなくても、例えばプールだってメディアになるのだ、ということに気づきました。そこから様々な場所をメディアにしていこうということで、スキー場や大学のキャンパス等でプロジェクトを実施していきました。

コロナ禍で事業がやりにくくなった今であっても、ARであれば出来る事があるのではないか、という発想の流れから、一緒に事業を進めることになったわけです。

牛尾 最初から明確に「場のメディア化」という発想があったというよりは、その時におもしろい、求められている、というものを追い求める中で生まれた形なんですね。

嶋野 そうですね。これからも紙にプリントした出版物については大切に進めていくわけですが、それだけで満足することなく、常に新しいことにチャレンジしていきたいと思っています。

牛尾 丁度タイミングが合ったというか、ずっとお考えだった所の最後のピースとしてうまくハマった感じだったんですね。

嶋野 ARというツールが流行っているから始めたわけではなく、やりたいことを達成するための1つの手段としてARに関心を持ったということです。
私も小学館でずっとデジタル関連の仕事をしていたわけではなく、「場のメディア化」に取り組んできた延長としてXRの担当をするようになったのです。

ー最初に会った時の牛尾やプレティアの印象はどうでしたか?

嶋野 いい意味でまっすぐで、目指している所が高いし、それを隠さない所がすごく良いと思いました。

それまでもスポットでお仕事をご一緒させていただくスタートアップはありましたが、長期にわたって1社と取り組んでいくという経験はプレティアが初めてでした。なので、私の中でも最初は緊張感がありましたし、色々お話しさせていただく中で新しい発見も多くありました。

基本的に牛尾さんは頭が良く、開発しているプロダクトの素晴らしさはもちろん、質問への切り返しからも、賢いなというのを感じていました。その中で、他のスタートアップと比べたときに何が良いんだろう、と考えた時に、高い目標を掲げていて、それを隠さず伝えてくれる所だなと思いました。

プレティアは、上手に隠すこともできるはずなのに、こういうことをやりたいので出資してください、とリスクも含めてしっかり話す。でもこんなにすごいことができます、と主張するスタイルで、それが良いと思いました。世界を目指すということも決して簡単ではないと思いますが、目指さないと達成できませんし、牛尾さんがそれを明らかにして旗を立てているからこそ良いメンバーが集まってくるんだろうなと感じました。

牛尾 プレティアにとっても数年規模で大企業の方々と一緒に事業を進めるという経験は初めてで、すごくベテランの大人の方々と働かせていただいている感覚はずっとあります。その中で、生意気なことを言ってしまっているとは自覚していますが、皆さんしっかり意見を聞いて一緒に考えてくださるので非常に心強いなと思っています。

嶋野 その点では、私達も色々プレティアさんの意見から勉強させていただいています。プレティアさんと協働している事で、新しい取り組みが今までよりスムーズにいくようになってきました。

ーARの未来や目指す所について、どう考えられていますか?

嶋野 ARグラスやメタバースという言葉を意識しないレベルまである種コモディティ化したときが、本当に普及したと言えるポイントだと思います。時代は予想を超えて速く進みます。大きく普及するタイミングを具体的に予測することは難しいのですが、小学館としてはチャンスを逃さないようにコンテンツを創り出していきたいと考えています。牛尾さんが考える展望はありますか?

牛尾 第1段階としてAR空間を大きく広げる、第2段階として多くのユーザーがその上にコンテンツを作っていく形にする、これが実現できればARは日常に溶け込めると思います。社内のクリエイター達とも話しているのですが、ARに関連する会社だけがコンテンツを作っていくだけだと、絶対に足りなくなるんですよね。現在はAR体験を作るには時間とお金が必要なので、ユーザーさんが簡単にコンテンツを作れる仕組みと自由に遊べる仕組みがないといけません。それについて考えている人はいても実行している人はいないので、我々がやるべき領域だと思います。

そして、ARグラスなどが今以上に広がってきた時に、パートナーである小学館さんのコンテンツを作るパワーや拡散力を活用させていただきながらおもしろいものを作り、世の中に出すことで、ユーザーが最初に行き着くARコンテンツがプレティアのもになれば嬉しいですね。

ーメディアのプロフェッショナルである小学館さんの観点だと、ARを使ったメディアと人との関わり方や日常における情報の取り方についてはどう変わっていくと考えていますか?

嶋野 街や空間がメディアとして活用できるようになることで、逆にいかに情報を受けすぎないようにするか、それで困らないようにするか、という技術が重要になってくる気がします。
例えば、ARグラスを着けて生活する中で、何もしていなくても、目に入った人の体温が出る、ニュースが自然に流れてくる、話しながらARグラスの画面ではゲームしている…といったような未来が快適な人間の未来か?と言われると、そうではないと思っています。コンテンツがコモディティ化して、情報が勝手に沢山入ってくる環境になって初めて、そういう情報を受けすぎない技術が必要だ、となると思います

本当の意味でARが普及するということは、いたる所に低コストでARを実装できるということなので、情報が溢れてしまうはずです。ある程度までは良くても、一定値を超えるとノイズになってしまいます。そこのバランスを取れる技術や工夫が必要ですね。

牛尾 現状スマホのプッシュ通知でも全部目を通せるわけではないですし、本当に役に立つ情報が流れているのかは疑問ですよね。例えば、ARの広告だとテレビ番組の間に挟むというより、自然と目を奪われていたら実は広告だった、というように、現実との境目がないシームレスな体験が提供出来たらと思います。

嶋野 将来的には、今のようにテレビやスマホなど「メディアを見る」という意識は不要になり、何か特定のデバイスを意識しなくても人々が常に「メディアの中にいる」状態になると思います。仮想空間の中や現実世界など幾重にもメディア世界の階層ができて、その中で私たちは複数の自己を選択できるようなイメージです。そうなっていくと、本当に必要な情報を伝えるメディアの価値はさらに高くなっていくと思います。
そのような未来をプレティアさんと一緒に作っていけたら嬉しいです。

ー最後に、今後のプレティアに期待することを教えてください。

嶋野 良いメンバーの採用と育成でもっと大きい組織になっていってほしいです。社長が全てを詳細に把握している状況では個人の限界を超えられません。優秀な牛尾さんだからこそ、任せるところは人に任せて、世界のトップに立てる組織にしていってほしいですね。



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