エスカレーターとアーキテクチャ
エスカレーターの片側に人が寄ってしまう・・・という話から連想して、なぜか人を動かすときの工夫の仕方、法とアーキテクチャ、デザイン・・・・へと派生しております。
エスカレーターは片側に寄るべき?
今日、あるデパートに行ったら、「エスカレータは2列に並んでください」と各階でアナウンスされているのに、みなさまご丁寧に左一列に座っていました。
そもそもエスカレータを歩いて上ると危ない、片側に寄るとエスカレータが遅くなる、と諸説あるようですね。確かにアンバランスに重心がかかり続けると、機器の摩耗も早そうです。
エスカレーター「片側空け」と「2列乗り」どっちが効率的? 日立系が検証 | TECH+(テックプラス) (mynavi.jp)
それでも、無意識に片側に寄ってしまうのはなぜか?
後ろから急いでいる人から文句を言われるかもしれないことが嫌だ、または人に迷惑をかけたくない(多分、これが一番大きい)
それが習慣化してしまっている。
いかにお店(デパート)から2列に並んでください、とアナウンスされても、メリットがない(自分だけアナウンスに従ってみんなと違う列に行っても誰にも褒められないし、逆に、アナウンスに従わなくともペナルティはない。後ろから急いでいる人が来ると、その人に迷惑がられる可能性があるので、総合すると、アナウンスに従う)
恐らく、理想的な世界だと、①みんなが2列に並ぶことで安全性を担保する、②そもそも2列に並ばれているので、急いでいる人もエスカレータを駆け上がろうと思わない・・・・・という全体最適が形成されるのだと思うのですが、そうはならないですね。上記の通り、自分にとってのメリットを追求すると全体最適が削がれる点は、ちょっとだけ囚人のジレンマに似ていますね。
囚人のジレンマ - Wikipedia
それだけみんなを動かすのは大変ということだと思います。これはビジネスでも同じで、例えば、工場でワーカーが動いてくれない、相手方が(こちらとしては双方にメリットがあることを言っていると思っているのに)聞いてくれない、など色々な場面で、エスカレータのアナウンスメントのようにスルーされてしまうことがあろうかと思います。
それでは、どうすれば2列に並んでもらうことができるか?
その時の対応として、ぱっと思いつくのが以下です。
1) 従わない場合のペナルティを大きくする。例えば、エスカレータですと「2列に並ばない人は罰金」とかすると、一気に片付きそうです。
2) 心に訴えかける。ロジックは正しくても人の行動は変わりません(タバコの広告を規制しても喫煙する人がいるのと同じ。だけど、そういう人もコロッと何かのStoryに触れると、タバコをやめたりする。そういったStoryが効果的)。
3) デザイン(アーキテクチャ)を工夫する。つまり、今はエスカレータを乗るとどちらの側に立つことも可能ですが、これを人の動線に影響を与えるデザインにより、人が自然とそちらの方向に行くようにする。
1) と2)は分かりやすいのですが、注意したいのは3)です。ルールは存在するけど、それを効果的に実装させるのがデザイン。
ビジネスの場でも、「本当はこれをみんなにやってもらいたいんだよなー」という場合、それを言うだけにするか、マニュアルに落とし込むか、更にマニュアルも意識しないような形でワーカーの日常業務のフローに自然に組み込むようにオペレーションのフローを工夫したり、工場の導線などに落とし込むか・・・・・ということができそうです。
法学の場面でも、法律として「やってよいこと」、「やっていけないこと」などのルールを決めますが、その実行性を決めるのは社会に実装する際のデザイン(アーキテクチャ)だったりするとも言われます。そして、それがデジタルエコノミーであれば、Codeがそのデザイン(アーキテクチャ)をつかさどる、ということも言われており、それを提唱した人がクリエイティブコモンズ創設者のローレンスレシッグ氏です。
ちなみに、私はレシッグ教授のファンでして、大学院在学中も講演を聞きましたし、著作も数冊読みました。さて、普段の仕事でアーキテクチャ的に工夫することで、周りの人の巻き込み、連携も効果的になるか、というのは視点として持ってて損はないと思います。自分の改めてその視点でいろいろ見直してみようと思いました。
CODE VERSION2.0 | ローレンス レッシグ, 山形 浩生 |本 | 通販 | Amazon
こちらのNoteはレシッグ的な考え方に触発されているようで、時間を見つけて読んでみようと思いました。
行為の4つの制約原理について:法、社会規範、市場、アーキテクチャ|市ヶ谷法務店 (note.com)
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