砂マンダラ
むかし北インド・ヒマチャル州にあるダラムサラという町を訪れたことがある。ヒマラヤの山岳地帯にある町で、チベットの亡命政府があることで知られている。国を追われたチベット人達が多く住んでいる。
そこで私は「砂マンダラ」と呼ばれるものを目にしたことがある。マンダラはサンスクリット語で、語源的には「丸、円」というような意味だが、仏教では、その世界観を画像として表わしたものということになるだろう。
私が見たのは、その砂マンダラを製作している現場で、チベット人僧侶達が、色の付いた砂をトントンと振りかけて、鮮やかで精緻な絵を何日もかけて描いていくのである。苦労して出来上がったマンダラだが、儀式に供されるとたちどころに掃き除かれてしまう。まさに無常、形あるものはすべて分離してなくなってしまうということを教えているのだろう。
不肖わたくしの書く拙い文章も、ブログのように残るでもなく、砂マンダラのように時間軸の中に消滅してゆくところが面白いと思う。
大勢の人に見てもらって「いいね」を押してもらいたい訳でもなく、勝手なことを書き綴って自己満足している、といった程度のものである。ただ書いてみることで、自分でも気がつかなかったことが浮かび上がってくることもあり、自己発見といったくらいの意味はあるのかなと思っている。
(ALOL Archives 2012)