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「“映像演劇”が生み出したイリュージョンを体験して」チェルフィッチュ『ニュー・イリュージョン』レポート

2022年7月から8月にかけて、precogではインターンシップ生として跡見学園女子大学から大西綾乃さんをお迎えし、チェルフィッチュの映像演劇『ニュー・イリュージョン』の運営に携わっていただきました。大西さんから見た本公演がどのようなものであったのか、大西さんがインタビューしたお客様は何を感じたのか、レポートとしてまとめていただきました。


 はじめまして!跡見学園女子大学の大西です。今回は8/21(日)~8/28(日)に王子小劇場にて上演されたチェルフィッチュ映像演劇『ニュー・イリュージョン』の制作インターンシップに参加し、作品をご覧になった団体のお客様を対象にインタビューを実施させていただきました。そのインタビューの様子と今回私が“映像演劇”を初めて見て感じたことをご紹介したいと思います。

映像演劇『ニュー・イリュージョン』とは?

 まずは今回上演された映像演劇についてご説明します。岡田利規さん主宰の演劇カンパニー「チェルフィッチュ」が2016年に初めて“映像演劇”と名付け発表したもので「映像のプロジェクションを用いた作品を、演劇の上演として行う試みのこと」です。2018年には「〈映像演劇〉宣言」が発表されており今では数多くの作品が発表されています。そんな映像演劇の最新作『ニュー・イリュージョン』はこれまでの美術館や展示スペースで上演、展示してきた同シリーズとは異なる舞台と客席という通常の演劇の形式を踏襲して上演されました。

映像演劇『ニュー・イリュージョン』東京公演より 撮影:冨田了平

 私は、今回制作インターンシップに参加するまで映像演劇を観たことも聞いたこともありませんでした。そのため観劇する前には「生の舞台と比べて臨場感が薄れたものになるのではないか?」「映画と似た感じのものなのかな?」とマイナスなイメージばかり抱いていました。しかし、実際に『ニュー・イリュージョン』を観劇して感じたのは、不思議な面白さがあるということです。目の前に演者は絶対にいないのに聴覚や視覚が「彼らは今ここにいる!」と訴えてくるような感覚、今私を見ているはずがない演者と目が合うといったこの演劇のタイトルにあるような“イリュージョン”を感じました。また今回この演劇をいろいろな角度で観たのですが、座る席によって2つあるスクリーンにいる演者の立体感が変わって見えるなど見え方が全く変わってきてこれも映像という平面ならではの感覚で面白かったです。

みんなで見るともっと面白い!「団体割引」

 今回の公演は「団体割引」という5名以上の予約での先行割引チケットの販売を行いました。その結果11団体60名の方にご予約をいただきました。大学生、会社員、演出家など様々な方がいらっしゃいました。またTwitter等SNSで募集をかけてご来場くださった方もいらっしゃいました。インタビューを通して今回の団体割引をご利用された多くの方が「もともとチェルフィッチュ作品を見たことがあって、そのうえで誘われたから」という方や「見たことはないけど名前は何となく知っていてちょうど団体割引があったから」という方が多いということがわかりました。中にはおひとりの方がとても熱心なチェルフィッチュのファンで、その方がチェルフィッチュ作品を観劇したことのない会社の同僚の方々を誘って来たという団体もあり、前からチェルフィッチュを知っている方々に来ていただけるのはもちろん、かつての私のように映像演劇、チェルフィッチュを知らない方が今回の団体割引を通じて興味をもってくれたことがとてもうれしく思いました。

映像演劇『ニュー・イリュージョン』東京公演より 撮影:冨田了平

団体の方々に聞いた!映像演劇『ニュー・イリュージョン』

 今回、団体でご来場されたお客様を対象に映像演劇の感想をお聞きしました。一部にはなってしまいますがご紹介させていただきます。
 前述した、会社の同僚を誘ってくれた方はチェルフィッチュ作品のファンの方が前回観劇された『消しゴム山』と比べて今回の『ニュー・イリュージョン』は「“物”が主体ではなく“空間”を感じる舞台だった」とおっしゃっていたのが印象的でした。「今回の舞台のセットが2枚のスクリーンと音響機材、字幕用のモニターのみと劇場内に物がほとんどなかったことと、2枚のスクリーンの間にあいている空間を演者が通過している際にもまるでそこにいるかのように舞台が続いている状態に違和感と奇妙な空気感を感じた」とおっしゃっていて「私が演者の存在を感じた理由はこれだったのか!」と気づかされました。グループの他の方はチェルフィッチュ作品をご覧になったことがないそうで、「スクリーンがパーテーションのようでコロナ禍に上演する演劇として面白い」といったお話や「演者の方は観客が見えない状態でお芝居をしているがどのような気持ちなのか」など面白い視点からのお話が聴けて、このインタビュー後に観劇した際には全く違った見方で『ニュー・イリュージョン』を楽しむことができました。チェルフィッチュ作品、映像演劇に慣れている方と初めてご覧になった方の着眼点の違いが面白いなと感じました。

 そのほかにも映像演劇を以前ご覧になられた複数の方から「客席に座って劇場で見ていることで映像演劇の”演劇”の部分を感じた」「観客側が見えない部分を想像してみるのが面白かった」というお話をうかがい、私が何となく不思議に思っていた部分を今回のインタビューを通してより明確にすることができ新しい視点からこの作品を見ることができました。

映像演劇『ニュー・イリュージョン』東京公演より 撮影:冨田了平

 今回のインターンシップで映像演劇『ニュー・イリュージョン』の公演制作に参加し、“映像演劇”という新しいジャンルの演劇を知れたことをうれしく思います。また終演後に行ったインタビューや会場のお客様との交流の中で演劇の新たな一面や疑問を発見しより作品について知ることができました。今回インタビューにご協力いただいた皆様ありがとうございました!

~プロフィール~
大西綾乃

跡見学園女子大学マネジメント学部マネジメント学科 2年生 横堀ゼミ

中学生のころに初めて観た「ウエストサイド物語」がきっかけで舞台鑑賞が好きになりました。最近のマイブームは日常の中に小さな幸せを見つけることです。最近、信号待ちで前にいた赤ちゃんが笑いかけてくれました。


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