大曲の花火を会場で採点しながら観てみた ep1-花火と夏の終わり
花火が終わったら、雪が降る……
秋田県在住の友人からお誘いをいただき、8年振りに大曲の花火を観に行ってきた。
8年前の思い出
私は花火がまあまあ好きな方(と自分では思っているが、友達に言わせれば「相当熱心な花火好き」)で、有名な花火大会を一生に一度はちゃんと観てみたいと思っていた。
18歳の時に書いたBucket Listにも、6番目に「大曲の花火大会に行く」と書かれている。(長岡でも土浦でもなく大曲と書いたのは、単に私が天邪鬼で、東京の人があまり行かないところの方がいいと思ったという単純な理由だ。)
それで私は夢を叶えるべく、8年前に初めて友達と一緒に大曲に行った。
当時は大学生で、こまち(秋田新幹線)に乗るお金がなかったので、夜行バスで一晩かけて東京から大曲へ行って、大学の友達と3人で花火を観て、次の日は角館と田沢湖を観光して…と目一杯秋田を楽しんだ。
初めて観る大曲の花火の、その迫力と美しさに大興奮して大はしゃぎして、東京に帰ったら自慢しなきゃ!と写真と動画も撮った。
そして視界いっぱいに広がる大会提供花火を観ながら、この世のものとは思えないくらい綺麗だな、夢を見ているみたいだな、と思ったのを覚えている。
一生に一回のつもりで大曲へ行ったのに、帰る頃にはまたいつか来るだろうなという気持ちになっていた。
大曲の花火とは
日本3大花火大会の1つ。毎年8月の最終土曜日に行われる。
正式には「全国花火競技大会」で、2024年はなんと第96回!伝統ある花火の全国大会で、夜花火だけでなく、昼花火の部もある。
昼花火はこんな感じで、夜の花火とは少し違い、光ではなくて色と煙を残す花火。
夜花火は(10号玉1つ)、自由玉(10号玉1つ)、創造花火(音楽に合わせた花火の演出)の3種目。
最初に「標準審査玉」が打ち上げられ、その場ですぐに点数が公表される。審査員はこの標準審査玉の点数を基準にそれぞれの花火に点数を付けていき、全ての種目の総合点で内閣総理大臣賞が決定される。
公式プログラムには観客が採点を書き込める「自己採点」欄があり、せっかくなので、私も昼・夜通して全部に点数をつけながら観てみることにした。
ちなみに点数をつけながら観ている人はほとんどいないが、大曲人の花火リテラシーの高さはすごい。
十号、四重芯、五重芯、昇曲付、昇曲導付……玉名の意味を理解しているのもすごいし、審査ポイントも知っているし、割物の丸い・丸くないが分かるのもすごい。
ローカルからしたらどこを見ているの?って感じなのかもしれないが、全国大会に出品されるハイレベルな割物たち…ほとんどの人には全部丸く見えるよね…?私だけ…?
他にも、ここ数年で花火の打ち上げ(点火)システムがものすごく向上しているよねとか、この花火は多分新作でこれは伝統的なやつだよとか、ローカルに教えてもらって知ることが沢山ある。
いざ、東京から大曲へ!
前日の夕方に東京駅から「こまち」に乗り、大曲へ向かった。
花火大会の当日は、大仙市の人口約74,000人の10倍にあたる75万人もの人が訪れるのだが、前日はそれほど人は多くなかった。
道路に路駐防止の三角コーンが置かれていたりして、若干お祭り前夜の雰囲気はあるものの、本当に75万人も来るのか?とまだちょっと信じられない感じ。
当日は朝6時から30分おき?(もしかして15分おき?)に鳴り響く「花火やりますよー!」の号砲に起こされては無視して寝てを繰り返し、昼頃にのそのそ起床。
その後ものんびりぼけーっとして、ギリギリの時間になって慌てて出発。
なんとか時間ぴったりに会場に到着できて、自分の席に腰を下ろした瞬間に開始号砲が鳴った。
昼花火が終わると、朝から間断続的に降っていた雨も止んで、虹が出た。
もうすっかり秋の気温で、「もう秋だねぇ」と私が言うと、友人が「ここでは花火が終わったら夏は終わり。花火が終わったら雪が降る。」と言った。
そうか…会場にいる人も、家の庭から観ている人も、テレビの生中継で観ている人も、家族や仲間と観ている人も、1人で観ている人も…みんな今日で夏は終わり。夏が終わったら稲刈りで大忙し、それも終わって一息つく頃には雪が降る…。
今日は夏の最終日。毎年、夏の最終日に打ち上げられる花火をみんなで楽しんで、夏の終わりを町のみんなで共有する。花火を通して……そうだとしたらなんて素敵な行事なんだろう。
そんなことを考えながら、会場にいる観客を見渡すと、完全に私のエモスイッチが入ってしまった。
(ちなみに、花火は観ないという人でも、人口の10倍の人が一気に押し寄せる状況で普段と同じ生活ができるわけはなく、ローカル全員がこの日は花火と無関係ではいられないと思われる。)
そしてこの瞬間、私の中で「晩夏を感じるエモい花火かどうか(主題が夏かどうかではなく、私が夏を感じるかどうか)」が夜花火の重要な審査基準として定められた。エモい花火が加点されるだけでなく、夏以外の季節をテーマにした創造花火は減点対象となる。
花火師さん及び知的に花火を鑑賞している方々から怒られそうである…。
公式プログラムに時刻が記載されていなかったドローンショーは、昼花火と夜花火の間のこのタイミング!
大曲の花火初のドローンショーということで、会場にいる人の動画撮影率がこの日1番だった。もちろん私も一眼レフで撮影。
大きな歓声が上がって会場はかなり盛り上がったが、正直、綺麗さで言えば花火の方が光も色も鮮やかで綺麗…とは言えドローンは今後あっという間に進化して花火の強敵になるのだろうな…と思う。ドローンは文字を表せるのがいいよね。
8年前も今回も、スターマイン、特に大会提供花火は本当に夢みたい。普通の花火は会場で観ても2Dだけど、これは4D!迫力が全然違う。
大会提供花火は2024年のモントリオール国際花火競技大会での受賞作品とのこと。
あーーまた観たいなーー!!!
大仙市誕生20周年記念花火もエモくて好きだった!
後半は元々イマイチだった風向きが更に悪くなり、10号玉に煙が丸被りして全然見えなくなってしまったものもあって残念だった。が、全国大会という大舞台に向けて一生懸命この玉を準備された花火師さんの気持ちを思うと、残念どころの話ではない。めちゃくちゃ悔しいだろうな…。
花火が終わった後の「エール交換」がめちゃくちゃ好き。観客はペンライトやサイリウムを振って花火師さん達に応援とありがとうの気持ちを伝え、花火師さんたちも発煙筒を焚いてそれに応える。
普通の花火大会では協賛企業の名前が花火の前後にコールされるだけで、誰が作ったのかなんて分からないし気にもしないけど、大曲の花火は全部の花火に、これを作っている花火師さん達がいるんだというのが見えるのが良い。
このエール交換がとても感動的で、発煙筒の光が見えなくなるまでずっとサイリウムを振っていた。
さて、花火会場から帰ったらシャワーを浴びてボトルワインを開けて、自分で採点した点数を記入したプログラムを見ながら、内閣総理大臣賞ならぬ「Anna賞」を決めます。
Episode2へ続く