2012年ドラマ『ダブルフェイス』感想
※ネタバレを含みます。
2012年ドラマ、『ダブルフェイス』前編、潜入捜査編、後編、偽装警察編、(脚本/羽原大介)観賞。
西島さんを知らなかった頃は警察官とヤクザの抗争と言うのは最も苦手なジャンルでした。このドラマは前後編に分かれ、「潜入捜査編」森屋純役を西島さん、「偽装警察編」高山役を香川照之さんがそれぞれ主役で演じている。
潜入捜査と言う任務を辞め、本来の警察官の立場に戻りたい森屋と偽装した立場を守りたい高山。互いの立場はそれぞれの上司の手に委ねられている。やがて、大手の麻薬取引がきっかけでヤクザ側にも警察側にも内通者がいるのが発覚。切迫した中で森屋は精神科医(和久井映見さん)とのやりとりに安らぎを見出し、弟分である不器用なヒロシ(伊藤淳史さん)の心配もする中、愛憎を交えた闘いに発展する。
主演二人が強い目力で演技をする中、感情豊かで良くも悪くもハラハラしてしまう憎めないヒロシ役の伊藤淳史さんが印象に残る。実は森屋が警察官だということに勘付いていながら黙っていた。しかし本来、森屋を警察官へ戻す伝手となるはずの上司(角野卓三さん)の殺害に加担してしまい、結局、ヤクザにも堅気にもなり切れなかったヒロシの最期。哀しい。心から慕う上司もヒロシも失った森屋は警察のスパイである生粋のヤクザ気質の高山との対決に臨む。けれど憎悪や悪癖は誰も幸せにしない。自分が重ねた行いは巡り巡って報いのように将来の自分に投影される。
高層ビルとくたびれた薄暗い横町。見栄っ張りなヤクザの薄っぺらな豪邸。暑苦しい狭い部屋と涼し気な風。簡素な薄明かりの中に浮かび上がる精神科。限りなく遠いようで近い存在だった森屋と高山。光と影の対比をこれでもかと映す。
そして、輪郭も体もすべて引き締まったハードボイルドな西島さん、非常に魅力的でした。本来、情に厚く後輩も気にかける。叶えたい夢もあった。そのすべてが高山の手によって崩れた。あまりにも感情移入し過ぎて後編(偽装警察編)のストーリーのラストはしばらく受け入れられなかったけれど後編のラスト、すべてを成し遂げ、エレベーターは上がって行くのに身も心も落ちて行く高山の慟哭でもう充分だろう、と湧き上がる感情にピリオドを打った。