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2001年『サヨナライツカ』観賞

2010年映画『サヨナライツカ』(イ・ジェハン監督)鑑賞。中山美穂さん主演。原作は辻仁成さん。舞台は1975年。エリートサラリーマンの豊(西島さん)は婚約者、光子(石田ゆり子さん)を日本に残し出張先のバンコクで謎めいた美しい女性、沓子(中山さん)と出会い、互いに婚約者と恋人がいる身でありながら恋に落ちる。
彼女が住むホテルにて逢瀬を重ねるが沓子の恋人であり豊の同僚にバレ、豊のこれまでの印象「真面目で好青年」という面は崩れる。
しかし、はるばるバンコクにやって来た光子と最終的に結婚を決め、沓子とも別れると名誉挽回となる。しかしどんなに日が経とうと光子との間に子供ができようと豊は沓子を忘れられない。数年ぶりに、かつて逢瀬を重ねたホテルを訪ねると沓子は既に住人ではなくフロント受付になっており、病に侵されており、薬を服用していた。彼女の命は儚かった。

豊と付き合っていた頃から光子が書いていた詩「サヨナライツカ」がこの物語の中枢を担うが、実際に描かれるのは豊と沓子の年月を越えた愛の物語である。一つ一つのシーンはとても美しく楽しく、豊かだ。けれどそれが一本の映画となるとどこかぶつ切りのようでなかなか馴染めなかった。沓子の格好やヘアスタイルが1975年という設定からかなり外れて現代に見えてしまうので頭が混乱したせいもある。西島さんの役、豊はかなり酷い男だ。光子と沓子、二人の女を傷つけているので、運命的な出会いと言われてもどこか現実に戻り、冷めて見る自分がいた。

話題になった西島さんと中山さんのラブシーンは迫力のあるものだった。あの場面から二人は始まってしまう。始まるしかないと言う有無を言わせない説得力のある強いラブシーンだった。けれど、心の前に体から始まる恋愛は危うい。その危うさをまず感じ、根は真面目で亭主関白である豊と奔放な沓子の性質は合わず、やがて崩壊する。光子とも長く婚姻生活を続けていたけれど心は沓子を追っていたので私はあまり共感できなかったけれど、バンコクでのシーンと出演者たちがとにかく美しかった。光子の書いた「サヨナライツカ」の詩は沓子にも豊にも問いかけるものだ。

 「人間は死ぬとき、愛されたことを思い出すヒトと、
  愛したことを思い出すヒトにわかれる。
  私はきっと愛したことを思い出す」

ラスト、沓子を思いながら車を爆走させて涙を堪え切れない豊はとても良かった。彼もまた、愛したことを思い出すヒトなのだろうか。

『サヨナライツカ』ポスター
豊(西島さん)と光子(石田ゆり子さん)
沓子(中山美穂さん)と豊

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