2004年『銀のエンゼル』感想
※ラストに触れています。
2004年『銀のエンゼル』(監督/鈴井貴之)視聴。
北海道の片田舎、町にたった一軒しかないコンビニを営む北島(小日向文世さん)だがオーナーではありつつ実際にはほとんどを妻に任せ切りで娘からも反発されている。そんな中、妻が事故に遭い、遂に北島自身がコンビニを回さなくてはならなくなる。西島さんは東京からやって来てこのコンビニに勤めて長い店員、佐藤の役。
登場人物は、北島が行為を抱いているスナックの美人ママ、明美(山口もえさん)。彼女はひたすらこのコンビニで森永のチョコボールを買い続け「銀のエンゼル」を引き当てたいと願う。北島の娘、由希(佐藤めぐみさん)は田舎に嫌気が差し、東京生まれである佐藤に憧れている。そんな由希に馴れ馴れしく接しては拒否されているのがトラック運転手の晴男(大泉洋さん)。
コンビニに来る連中はクセのある客ばかりで北島も苦戦するが、佐藤ともう一人の女性店員に助けてもらいながら何とかこなす。すべてが「銀のエンゼル」を当てるように幸せになれたらいいな、と言う漠然とした思いが蔓延する中、娘、由希は東京に行くと言って家を出てしまう。更に、凍てつく夜、コンビニの看板の電球が切れる。看板は唯一の町の目印。北島は決心し、看板をよじ登り、雪の中、電球交換に挑戦する。
出演する皆さんの演技は素晴らしい。
しかし観終わると中途半端に散らばった印象でした。軸となるのは、今まで何もかも妻任せにしていた北島(父親)の奮闘と、由希(娘)がしっかり向き合うことだろう。自然の怖さや田舎の人間模様はもちろん大事だ。それらの苦難がなければなぜ由希が強く反発してこの町から出たいか伝わらないだろう。だが周囲に個性が集まり過ぎてしまうのは少しだけ遠慮して描いて欲しかった。
そして西島さんの役、佐藤に最大の疑問。彼はただのコンビニ店員ではいけなかったのか? 最後、彼を突然何らかの事件に絡め、町から出してしまわなければならなかったのはなぜなんだろう。そこにどこかよそ者排除の気配を感じる。よそ者は悪者か? もちろん、世の中には銀のエンゼルで決めるものがあってもいい。けれどそれはこの物語にはエピソードという程度であり、結局、主軸とは関係がなく、タイトルとしてはきれいだけれど主人公とも関連がない。
ラスト、由希は戻って来る。
そして改めて夢に前向きになり、更にその夢を叶える。北島とも笑顔で接し、死ぬ気で看板を直した後の彼はどこか誇らしげで、人間が一回り大きくなっているようだった。色々言いたいことを書きましたが鑑賞できて良かった。実際、大雪の降る田舎に住む者として看板を直すシーンはハラハラしながら見守りました。