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花の首を落としてしまった。 活けるのに慣れていないせいだ、と言い訳をしてみるけれど何度目だろう。いつも活ける時に力を入れ過ぎてしまう。落としてしまった花の首にごめんね、と言ってからゴミ箱に捨てた。 四苦八苦しながらも、何とか私なりに何種類かの花をひとつの花瓶に納めた。そう、活ける、ではなく、納めた、という言葉の方が似合う歪な仕上がりだった。 慣れないことをしているのは、亡くなった母の仏壇に供えるためだ。 母は花が好きで活けることも上手だったけれど、私は母とは逆で
「郁ちゃん、お熱出た」 子供のような言葉で連絡をして来たのは僕の恋人の郁子だ。 軽い熱と風邪の症状があるため、かかりつけの病院に電話すると、来院はご遠慮下さい、とのことだった。現在、世界的に流行っている病のせいで少しでも似た症状を持つ患者は外来不可となっているらしい。行く場合は専門外来へ、と。 「でも症状に合わせたお薬は出せるから家族とかに取りに来てもらって下さいって」 そこで一番身近な僕の出番となった。郁子は遠い田舎の実家から上京しているからだ。 「職場にはなんて?」