私の変な不妊治療 8「タピオカじゃねえか」
ご覧くださりありがとうございます。不妊治療のクスッとした体験をつづっています。
その日、私は手術室の分娩台に乗っていました。初めて受精卵をお腹に戻す日がやってきたのです。通常パンツを下ろすのは超音波検査の時で、診察室の隣の検査室で行いますが、これはそうではない。いわゆる手術です。そんなカジュアルなものではないのです。美人看護師さんたちに囲まれて、そこそこリラックスしているわたしを尻目にタマゴの検査が進みます。それは思った以上に厳正なものでした。
「はい、じゃあ器具を子宮にいれていきますね」
牛のようにやさしい目をした院長先生が機器をあやつり、私はいわれるがままになっています。痛みはほとんどありません。ああっ、とかううっ、と心でつぶやくだけです。
その時看護師さんが私に言いました。カジュアルコーデ似合うちゃんのチャーミングスマイルさんです。
「じゃあ、超音波の映像がここに出ますので、見ていてくださいね」
え??
ベッド横のテレビ画面に、白黒の超音波画像が現れます。私は卵をもどす管と超音波のカメラ両方を挿入されていましたが、それはあくまで先生の確認用だと思っていました。まさか私も見れるとは!
この辺が子宮です、とさされた辺りを見ると、カーブを描いていてひょうたんの底みたい。中に、明らかに無機質なストロー状の影が見えます。
「これが管ですね。この先、ここから出ますから見ていてくださいね」
ええー!急にめっちゃワクワクさせてくれるやん!テンションの準備できてないYO!
「はい」
「出た!!」(心の声)
笑顔の私の目の前でモニターの中、ストローの先から1センチくらいの白い丸いものがピョイッと出ました。かわいいわたしのタマゴちゃん。こんな瞬間見れるなんてことある??赤ちゃんの前段階のタマゴの、さらに着床シーン見ちゃうってすごい。もしうまくいって子供が二十歳とかになったら、見上げる私の感慨深さ、絶対人と違う。不思議すぎる!
色んな感動が駆け巡るとともに、相反して「タピオカみてえだな!!!」と思いました。サイズ感、丸さ…まるでそのもの。しかもストローから出た。
タマゴちゃんは無事子宮の底にお座りになられたようで、最後に着床の瞬間の写真が手渡されました。
手術室を出る際、チャーミングスマイル看護師さんが数々のお薬を手提げ袋に入れて渡してくれます。最後にお腹をそっと撫でてくれました。今までいろんな友人のお腹をなでてきたけどこれは私の初体験だ、とハッとして、とてもキュンとしました。
しかしあまりにもタピオカだったな…。そう思いながら医院を後にしたのでした。