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「シ・ン」シリーズ3作を観終えて

2023.04.06_記

2016年『シン・ゴジラ』
2022年『シン・ウルトラマン』
2023年『シン・仮面ライダー』

「シンって何?」

 きっかけはこの程度のもの。評判も中々良さそう。じゃ、とりあえず行くか、と観に行ったのが、以前、絶賛した『シン・ゴジラ』。「庵野秀明」という名前を記憶に留めたのもこの時。
 そして『シン・ウルトラマン』。こちらも『シン・ゴジラ』同様、あっという間の112分間。ただ、観終わって気になったことが…。それが理由で感想が書けなかった。

 この「シン」シリーズは過去作品に対する「庵野秀明」さんのノスタルジーを動機として制作が始まった映画(多分)で、随所に過去作品へのオマージュ的要素が散りばめられている。単純なオマージュもあるけれど、『シン・ウルトラマン』では、ラストシーンが新解釈的な要素を加えたオマージュとして描かれた。

「ゼットン」だ

 「ゼットン」は初代ウルトラマンの最終話では「宇宙恐竜ゼットン」として登場する。この「宇宙恐竜ゼットン」に、ウルトラマンは完膚なきまでに叩きのめされ死んでしまう。その当時小学生だった私は、このウルトラマンの負け方にどうにもこうにも納得がいかず、その後も釈然としないまま、気がつけば50年以上の月日が流れていた。(笑)

 何が釈然としなかったのかというと、それまでに登場していた「○○星人」や「○○怪獣」とは比較にならないほどの圧倒的な強者として登場したにもかかわらず、「宇宙恐竜ゼットン」は「○○星人」や「○○怪獣」と比較して、視覚的にもサイズ的にも大差がなく、ラスボス的な説得力がまったくなかったからだ。

「そこまで実力差はないやろう」
「そんなやられ方する?」
「いやいや、もうちょっと何とかなるやろう」

などと子ども心に思ったことを未だに覚えている。

 『シン・ウルトラマン』に登場した「ゼットン」は、「○○星人」や「○○怪獣」という生物としてではなく、一つの惑星上に存在する全生物を絶滅させる圧倒的な兵器(システム)として、CGをふんだんに使いすべてを凌駕するスケール感で描かれていた。

 『シン・ウルトラマン』で庵野秀明さんが見せてくれた「ゼットン」は、私の50年以上に及ぶ思いを跡形もなく消し去り、清々しささえ感じるほどの説得力を持っていた。

 随分と前置きが長くなったけれど、『シン・ウルトラマン』を観終わって気になったこととは、初代ウルトラマンの最終話に登場した「宇宙恐竜ゼットン」を知らない人が、この「ゼットン」を観て感じるものと、私が感じるものとは別次元なものになるのは間違いない。つまり『シン・ウルトラマン』という映画の評価は、初代ウルトラマンシリーズを見ていた人とそうじゃない人とでは、

違うものになってしまうのではないか?
それって映画としてどうなん?

と思ってしまったことだ。

 そして、この疑問に対する考えがまとまらず『シン・ウルトラマン』の感想が書けなくなっていたのでした。

そんな思いを引きずりながら見た『シン・仮面ライダー』

 実は私は仮面ライダー世代なのだが、まったく見ていない。理由は単純で、等身大ヒーローに全然ワクワクしなかったから。また、バイク走行シーンも現実的で夢がなく、な~んかイマイチだったような…。だから、旧作品を知っている人にしか分からない楽しみ方はできなかった事になる。つまり、私にとって『シン・仮面ライダー』は単体の映画としてどうだったのかがすべてになる。ん?待てよ、これって本来の映画の楽しみ方じゃないの?

 そうか、この「シン」シリーズは、旧作品を知っている人には、別の楽しみ方がプラスされるけれど、それはその作品の根幹を揺るがすようなものではなく、あくまで+αと言うことか…。ん~、ま、今はこれで納得しておこう。でないと話が前に進められない。(^_ ^;)
 やっぱり、ちょっとシックリこないところはあるけれど…。

 

で、2022年年5月16日(火)に観た『シン・ウルトラマン』の感想

 今更ですが。(笑)
 『シン・ゴジラ』がとてつもなく素晴らしかっただけに、2作目は難しいよーって心配していたことが恥ずかしくなるほどの出来の良さ。『シン・ゴジラ』の時と同様、今の現実社会の中に、大きな違和感を感じさせずに「ウルトラマン」や「○○星人」「○○怪獣」を登場させていた。

 例えば、旧作品では、非現実的な乗り物と武器を使って怪獣と戦っていた「科学特捜隊」、通称「科特隊(カトクタイ)」を「防災庁・禍威獣(カイジュウ)特設対策室専従班、通称「威特対(カトクタイ)」と置き換えてリアリティを持たせてみたり、メフィラス星人に名刺交換をさせてみたり。
 ただ一つ残念だったことがある。それは、登場する星人と怪獣が多過ぎるため、その描き方が散漫になってしまったことだ。特にメフィラス星人はもっと深掘りしてほしかった。

 ちょっと話は逸れるが、
もう「山本耕史」さん演じるメフィラス星人は珠玉の出来で、彼はこの役を演じるために生まれてきたのではないだろうか? いや、彼は本当はメフィラス星人で、今は役者として地球人になりすまし、何かを調査しているのではないだろうか?
…などと思ったほどだった。(笑)

 話を戻すと、とにかく内容が盛り沢山すぎて、2時間ではなく3時間、もしくは2部作にするべき内容だったのではないだろうか?
 いずれにしても、時間をおいてもう一度観てみたいと思った映画でした。

で、『シン・仮面ライダー』

これはNGでした。
理由は、この映画は最初から最後まで仮面ライダーと敵とのアクションシーンの連続で、現実社会との連動性を描いた部分は皆無だったから。私にとっての映画には、リアリティとエンターテイメント性は欠かせなモノなのだけれど、『シン・仮面ライダー』は、乱暴な言い方をすれば、アクション映画だーーーーー!
 まっ、単に私好みではなかったと言うことです。<(_ _)>

 と、ここまで書いてから、録画していたNHKの『シン・仮面ライダー』制作現場のドキュメントを見ていたら、庵野秀明さんが言ってました。
「これはアクション映画だ」って。(笑)

《補足》
庵野秀明さんが定義した“SHOCKER(ショッカー)”とは
Sustainable
Happiness
Organization with
Computational
Knowledge
Embedded
Remodeling


DeepLで翻訳してみたら
「計算知識埋め込み型リフォームによる持続可能な幸福の組織化」
でした。

庵野秀明さんにとって“SHOCKER”は、
単に敵役、悪者じゃないんですね。


高槻アレックスシネマ
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