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ゴジラ-1.0

2023.11.25_記

※少しのネタバレは御容赦。
 でないと感想が書けません。


時代設定はすべてを失った終戦直後。
そこに「ゴジラ」という天災級の災害を重ねることで
失望の「0(ゼロ)」から絶望の「-(マイナス)」へ。
どん底の状況において、人々がどのように希望を見いだしていくのか!?
そんな視点を神木隆之介演じる敷島浩一を通して描かれた「ゴジラ-1.0」


山崎貴が三丁目の夕陽で実証済みのVFX技術による映像。
脇を固める個性豊かな俳優陣は、安藤サクラ・吉岡秀隆・佐々木蔵之介などに加えて、NHK朝ドラ「らんまん」で神木隆之介と夫婦役を演じた浜辺美波。
昨日、期待値MAXで観てきました。


一般的には合格点が与えられる「ゴジラ」映画。
でも、個人的には不満だらけの「ゴジラ」映画。
理由は観ているときから明確で、シナリオの雑さの一言に尽きる。


・古代生物(ゴジラ)が真のゴジラになるまでの展開に説得力がない。
 ➡ だから、ゴジラに魅力がない。
・ゴジラ駆除に至るまでのロジックが稚拙。
 ➡ だから、リアリティがない。
・登場人物の背景と繋がりが希薄。
 ➡ だから、感情移入ができない。


そして、決定的なのは、
シナリオに創意工夫(驚き)がなく、ゴジラ駆除のクライマックスシーンの映像が容易に想像できたこと。それに加えて、そのクライマックスシーン後に展開されるラストシーンが予想通りだったこと。
そして、致命的なのは、これがかなり早い段階でわかってしまったことだ。
※これは私だけじゃなく、観ている人ほとんどに共通していたのでは?


少し具体的に書くと、
戦時中、敷島浩一(神木隆之介)は、特攻隊としての責務を放棄し戦線離脱。
放棄した先でも自分の不甲斐なさから多くの仲間を死に追いやってしまう。
彼は、そんな心の傷をゴジラ駆除の場面を通して払拭するのだが、その彼の視点を通して、終戦直後の悲惨な状況から日本人が希望を見いだすまでを描きたかったのだろう。もし、そこが描き切れていれば壮大なドラマになっていたのでは?


映像はどこを取っても素晴らしく、俳優陣の演技にも遜色はなかった。
シナリオって大事だね。


:ちょっと横道にそれてシナリオの話。
:NHK朝ドラ「らんまん」のシナリオの見事さにはちょっと驚いた。
:久しぶりに脚本家が気になり調べてみたら、長田育恵(OSADA IKUE)という人だった。
:2009年に「てがみ座」という劇団を旗揚げし、その後も順調に活動を続けているようだ。
:「てがみ座」か…、機会があれば観に行ってみよう。


さて、文句ばかり言っているが、じゃ、どこをどうすれば良かったのか?
それを具体的に説明するには、私自身がこのシナリオを書かなければならない。
しかし、そんな事をしている時間はない。…時間はあるか(笑)
でも書けない。自分で言いたくはないが、力量不足でしょ。(^_ ^;)


でも、このシナリオの致命的な問題点なら言える。
それは、このシナリオの「キモ」とも言える時代設定だ。
冒頭でも書いたように、「終戦直後」に「ゴジラ」を加えた絶望感からの脱却、という着眼点は素晴らしい。
でも、この着眼点がシナリオから壮大なスケール感と自由度を奪ってしまったのでは?


「シン・ゴジラ」での時代設定は現代。
ゴジラに立ち向かうのは核兵器も視野に入れた現代兵器のオンパレード。
登場するゴジラの無敵さは、最先端の科学によって遺伝子レベルまで解析され説明されている。
そして、世界各国の思惑を絡めた政治的な綱引きの展開。

※個人的には、平泉成さんが演じた「内閣総理大臣臨時代理・里見祐介」が、フランス大使に時間稼ぎのために頭を下げているシーンは秀逸でしたね。


対して「ゴジラ-1.0」の「時代設定は1945年から1948年(多分)
大した武器も持っていないのにも拘わらず、登場するゴジラは「シン・ゴジラ」に出てきたゴジラと遜色がない。
当然、まったく太刀打ちできない。
口や背中から出す、破壊光線?ビーム?はなしで、巨大な古代生物くらいに留めておいたらまだやりかたはあったかも?


だから論理的説明も希薄な、分かったような分からないようなゴジラ駆除方法に辿り着いたのかも?
実行方法にもリアリティがなく、実際、そのシーンも「リアリティに欠けると言わざるを得なかった。


つまり、
・終戦直後 ➡ 人が使う武器に制限がかかる
・でも、ゴジラはシン・ゴジラのような超強力版
この2点がシナリオから「壮大なスケール感」と「自由度」を奪ってしまったのでは!
と、私は思っている。


結局、すべては時代設定に起因しているのでは?


また、これは大きな要因ではないけれど、神木隆之介と浜辺美波というキャスティングは、NHK朝ドラ「らんまん」での夫婦としての共演が記憶に新しく、その時の出来映えを「ゴジラ-1.0」で越えられなかったこともあるだろう。

※ちなみに、「らんまん」よりも「ゴジラ-1.0」でのキャスティングの方が時系列的には先だったようです。


最後に一言、念のため。
私の感想です。

<(_ _)>



高槻アレックスシネマ
(2023年11月24日)

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