ラジオ「つま塩」400回によせて
先日、ラジオと虚実皮膜論について書き散らした。奇遇にも愛聴するラジオ番組の節目とも重なったゆえ、今回は愛と敬意を込めて一筆したためようと思う。
私は音声よりも文字で物事を認識するほうが得意だ。ラジオや音楽を聴いてしっかりと味わうのは、どちらかというと不得手である。しかし、そんな私でも長年愛してやまないラジオ番組がこちら。
「森久保祥太郎&浪川大輔 つまみは塩だけ」
(ラジオ大阪 毎週土曜23:00-)
もともとは、隠れファンとして慕う浪川大輔さんがパーソナリティということで興味を持った番組だった。しかし聴きはじめると、これが存外に深い沼でもう抜け出せない。「沼ポイント」を3つご紹介しよう。
パーソナリティ2人の相乗効果
まず、パーソナリティの森久保祥太郎さんがプロ中のプロ。企画力もあれば喋りも立て板に水、進行も完璧ときた。長年ラジオ番組を持っていらっしゃるのもむべなるかな、これはラジオ局も手放したくなかろう。
でも、森久保さんだけではあまりにも整いすぎていて化学反応は起きない。浪川さんのすごいところは、組んだ相手の魅力を最大限に引き出すところだと私はずっと思っている。それが森久保さん相手にも遺憾なく発揮され、驚異的な爆発力を持つ番組へと大化けしたといえよう。そして気づけば、私は森久保さんのことも大好きになってしまった。浪川大輔、おそるべし。
いわば森久保さんと浪川さんは、出汁における鰹節と昆布なのだ。
↑「鰹節(イノシン酸)と昆布(グルタミン酸)との組合せで、旨味がぐんと引き出されるのと同じ」と言いたかった。比喩が絶妙に下手ですまない。
30分一本勝負の潔い構成
次に、1つのテーマだけで30分しゃべる構成。それこそ、虚構と現実のあわいをゆらりゆらりと漂うトークが魅力的なのだ。先に挙げた最強コンビのトークを30分、思う存分に楽しめる。声を武器になさっている方々だからこそ、トークを堪能したい――そんな願望を叶えてくれる番組なのだ。まさに「つまみは塩だけ」、このスタイルを放送開始からずっと守り続けてきたことに敬意を表したい。続けるのはシンプルなようで、難しい。
一粒で二度美味しい #tsumashio
最後に、放送開始当時は革命ともいえたTwitterでの投稿募集システム。投稿が可視化されることにより、聴取中にハッシュタグを辿って「この投稿もおもろいわ〜」と一粒で二度美味しい思いができる。そして視覚優位の私にとっては、耳のみならず目からも情報が入ることが非常にありがたい。たぶん、ずっと聴き続けられる理由の一つがこれ。
400回分の生と愛
そんな愛すべき「つまみは塩だけ」が、10/17の放送をもち400回を迎えた。2013年に放送が始まった頃は阿呆学生だった自分も、今は社会で必死に生きている。そもパーソナリティの浪川さんも森久保さんも独立なさり、経営者としてもご活躍中。パーソナリティにリスナー各位、それぞれの人生を歩み続けている様が窺えるのも長年続けてこその醍醐味だ。どんなに辛くても苦しくても「とりあえず来週の『つま塩』を聴くまでは生きよう」と思いながら8年弱、あなたも私もみんな生き抜いてきた。めでたい、超えらい。
最後に、初代Pの兼田健一郎氏インタビュー記事(https://www.creativevillage.ne.jp/52868)より、このことばを引いて締めくくりたい。
お互い忙しいから、どこかでスケジュールに無理がくると思っていました。それなのにあの番組が今日まで続いているのは、二人があの番組のことを本当に大切にしてくれている証拠です。優先順位の低いラジオという仕事を5年も続けるというのはそうゆうことなんです。だからこそファンの方は、これからも絶対に『つま塩』を聞いてあげてください。何故なら、ほかならぬ彼らが『つま塩』を愛しているのだから。
彼らが「つま塩」を愛する以上に、我々も愛し続けよう。
400回、心からおめでとう。これからもよろしく。