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夢はみんなでオムライスを食べること

”ゆたかさ”とはなんだろう。

欲しいものをあげれば息つく暇もなく溢れ出す。かっこいい車、バイク、テントサウナ、コンクリートの車庫、倉庫、薄い備前焼の皿、炭酸メーカー・・・・。


全て欲しいしあれば嬉しい。
でもそれを手に入れたら、更に欲しいものがきっとでてくる。

それを求める僕の心境ってあまり”ゆたか”ではないように思う。


ご飯を食べれて、お家で眠れて、子どもたちがすくすく育つ。
時々だから嬉しく思える旅行や外食ができるゆたかな生活。
さらに、みんなでオムライスが食べれれば言うことは何もない。

オムライスを食べるだなんて、とてもささやかなこと。何年か前は普通に食べてた。でもこの8年間、我が家の食卓にオムライスが出たことはない。

僕の娘は卵アレルギーだ。卵を食べるとかゆくなる。卵の殻に触れることもできない。

どうして私だけ卵が食べられないの?

幼い頃から娘がよく聞いてきた。うまく答えることもできず、謝ることしか僕にはできなかった。彼女は何も悪くない。卵を食べられないのは彼女のせいじゃない。

みんながしている当たり前のことを当たり前にさせてあげたい。

卵かけご飯って美味しいってみんな言ってるけどほんとかな?

その言葉に胸をしめつけられる。
僕らができることは僕も奥さんも卵料理を食べないということだけ。

それでも最近、少しずつ環境が変わってきた。
誰だか知らない。顔も名前も声も知らない人にそっと感謝する。

マヨドレ(卵が入っていないマヨネーズ)という商品をスーパーで見た時に、それを食べた時に、僕は開発してくれた人達に、心から感謝した。それはマヨネーズそのものだった。

娘の身体も少しずつ成長し、タマゴの許容範囲が増えてきて、最近ではプリンを食べられるようになった。それを聞いた時に涙が出そうなほど嬉しかった。

それまで娘は食べたことないプリンを嫌いと言い、タマゴを食べれないことを自らの意志で食べてないかのように振舞っていた。

そんな幼い娘の言動はいたたまれなかった。

初めてプリンを食べて美味しいと笑顔で笑った娘の表情は今でも忘れられない。

だけどタマゴそのものはまだ食べられない。

でも娘の成長とともに少しずつ許容量が増えてきて、いつかオムライスを食べられる日がくることを願っている。

ケチャップでオムライスの上に書いた絵を、これなんだよって家族4人で笑いながら食卓につく時間を。

僕にとって”ゆたかさ”はそんなとても些細な時間。

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