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半年に一度だけの短い言葉

いつも決まったタイミングで連絡をくれる人がいる。
そしてそれは決まって半年に一度。

それは何かの記念日ではないし、その人に関係する日でもない。しかも、送られてくる文章はいつもかなり短い。

その人と初めて会ったのは、前職の会議室だった。その人は遅れてきたのに、椅子に座るなり、がっしりした胸板のまえで腕を組むと、早くも退屈そうにうっすらと目を閉じた。近寄りがたい独特の雰囲気があった。自分に自信がある人。僕にはそう見えた。

実際、仕事をテキパキとこなし、若くして出世していた。一緒に仕事をしてみるとクールというよりも、感情が豊かな人で、失敗した時にはめっちゃ怒られ、何度か頭をガツンと叩かれたことだってある。

一方で、人に気を遣う優しい人だった。職場のBBQに部下の家族を呼び、その子ども全員におもちゃ(結構なお値段のやつ。しかも結構な人数)を準備して。なんなら子守まで一手に引き受けて。
お酒に弱い僕に「俺の酒が飲めんのか」と迫ってくる目上の人の対して、会話をふって、逃がしてくれた。

僕は異動もなく同じ部署にずっといたのだが、直属の上司は何度か変わった。そして仕事を辞めた時の上司がその人だった。僕は仕事が気にいっていたし、その人もそう感じていたらしく、辞めますと言ってもなかなか納得してくれなかった。

どうして辞めるのか?

僕は幾つかの個人的な理由を告げたが、その人は首を縦に振らなかった。だから仕方なく隠しておきたかった理由を伝えた。

その理由は、僕には夢があるということ。その夢はなかなか壮大で、馬鹿なドリーマーだと思われるレベルのものだ。その夢を掴んで受賞する人は、半年に一度、基本は日本全国で一人だけ。「頭おかしいんか」と笑われても不思議ではない。だけどその人は笑うことなく、神妙な表情で何度かうなずくと、応援すると言ってくれた。

今でも転職の理由を聞かれたり、まあいろいろで、ごくごくごく稀に夢のことを打ち明けるときがある。でもほとんどの場合、「すごいね」とか言われるだけで、実際は誰も本気に受け取っていない社交辞令が返ってくる。

だけどその人はいつも受賞が発表された後、連絡をくれる。「今回もなかったな」とか「いつ?」とか。それはもう五年以上続いている。その夢まで遠すぎて僕ですら受賞発表の日を忘れている時もあるのに。

現実を知り、心折れそうになっていた僕のもとに、その人からいつもの連絡がきた。

「今回も名前がなかったな。令和のうちに頼む」と。

遠く離れた場所で今も忘れずに応援してくれる人がいる。その言葉はいつも短くて励ましの言葉ではないけど、僕がいつか受賞して夢を掴むのを信じてくれている言葉のように思う。

天皇陛下とその人にはぜひ長生きしてほしい。

そして、その人からではなく、僕からその人に連絡できる日がくることを願いながら、僕は今日も夢に向き合う。

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