take you to good places
風に揺られてふわふわと雪が舞う。
雨のようにじめじめとしていなくて、雲の合間からは陽の光が差し込むし、何よりも季節を感じさせる光景だから親しみと暖かみを感じる。
だから食べ過ぎで膨れたお腹を軽くしようかと、散歩に行こうなんて思ってしまうんだろう。ドアを開けた瞬間の吹きつける風の冷たさに、ああそうだった。これが冬でしたよねと思いだして後悔する。憧れは妄想、吹きつける風と雪の冷たさはリアル。
非日常なリアルが続いた今年にも年末はやってきて、我が家から大掃除がなくなることもなかった。
大きな家ではないから、一に断捨離、二に断捨離、三にスペースを空けろ! 年末まで働いてくれるゴミ収集車の人たちに頭が上がらない。
そんな中でも家族そろってわいわいと手を休めて写真撮影に勤しんでしまうのが、シューズクローゼットの掃除。
これまでに履いた靴を引っ張り出して並べて記念撮影。
良い靴はいい場所に連れて行ってくれる。おフランスの諺らしい。
素敵な人たちに出会える場所に連れていってくれたことにありがとうをして……断捨る。あぁ無常。
紅白が始まり、大晦日はみそからしくなってきた。
エアコンと炬燵で火照った体を涼めようと煙草を吸いに外に出ると、サイレンの音が響いていた。年の瀬まで働いてくれる救急隊員の皆さんにも頭が下がる。
サイレンの音も数時間すればどこからか聞こえる鐘の音に変わる。多すぎる煩悩の数は人の象徴。それを諫めるように鳴らす行為にも人らしさを感じる。いくつかの神社が近くにあるようで、うちに聞こえる鐘の音の数は108を優に超えてくる。とりあえず一つ目は明日の福袋とセールかもしれない。
大晦日が一年で一番好きな日。終わりゆく哀愁となんだかんだの達成感。「とりあえず全ては来年」を合言葉に置いてきた仕事やダイエットもチラホラ。
やっと終わったと思ったのに、あと少しすればまた始まる。終わったばかりですぐに始まり。いつもそれが残念で寂しく感じる。年が明ければ怒涛のように始まっていく。だけど始まりが当たり前のようにあるからこその、もったいない憂鬱。
詰まるところ、来年もこの記事を読んでくれた皆さんが素敵な場所に行けますように、素敵な人に出会えますように。