繊細って面倒だ
新聞に掲載される広告の見出し。書店の入口に並ぶ本。
「ポジティブに考えろ」と飛び込んでくる題名とポップについ目をそらす。入口にあるんだから売れるんだろうな。
よくポジティブだと言われる。
楽しそうに仕事をすると言われる。
……そんなことないから。
根がネガティブ。ダジャレのつもりではなかったけど、改めて書き直すことはやめた。
やばい……怖い。うまくいかないんじゃないの。
仕事をしている時だったり、ふと将来を想像した時だったり、自分の年齢に改めて気づいた時だったり。不安がなんの前触れもなくコンニチハと顔を出してくる。
対人関係も同じ。しょせん僕なんて……。僕に興味を持ってくれる人なんているわけないし。そう思っちゃって、誰かと話をすることが恐ろしくなる。
それを感じた時、胸のあたりが揺れた時、僕は僕にメッキを張りつける。何枚も何枚も。気持ちが落ち着くまで。大丈夫だからって言い聞かすように。時々、錯覚できるようにキラキラ光るやつを張りつけたりもする。
顔と雰囲気を見てたら影で叩かれている言葉がなんとなくわかるんだけど気づかないフリをして、失敗することにビビりまくりながら前へ前へとすすめて、そして会いたくない人から会いに行って。
でもメッキはメッキ。消費期限のある偽物で本質ではない補強材。
崩れ落ちるときは脆くて、一枚一枚じゃなくて一気に全てが落ちていく。そして自分についていた嘘が支えられる重さを超えてのしかかってくる。
それは途方に暮れる時間。すべてが怖い。
その時間にもがいて、しがみついた後、再びメッキを張れる時がくる。その時は散歩に行って帰ってきましたよとばかりにふらっと僕のとこに帰ってくる。
その積み重ねで強度をあげる。少しずつ強くなれてきたように思う。
繊細って面倒だ。
僕のポジティブはまやかし。
でも、それも含めたすべてが僕なんだとあなたは言いそう。
仕事は楽しんでるし、僕はポジティブで嘘つきだ。
今となってはそれも正解。