【失敗から学ぶ】経理BPOで見た明暗!事例から得られる教訓とは?
はじめに
経理業務の効率化を目指し、BPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)の導入を検討される企業が増加しております。
BPOは適切に運用すれば大きな効果を発揮する一方で、失敗に終わるケースも少なくありません。
本記事では、経理業務においてBPOを導入した結果、残念ながら期待通りの成果が得られなかった企業の事例をご紹介いたします。
なぜ失敗に至ったのか、どのような問題が発生したのか、それらの原因を分析し、これから経理BPOの導入を検討している皆さまに成功のためのヒントや注意点をお伝えいたします。
具体的な失敗事例から得られる教訓を活用し、持続的にBPOを運用するために、本記事をご参考にしていただければ幸いです。
経理BPOにおける失敗事例
BPOを導入しようとして失敗してしまった事例を2つご紹介します。
【大手企業事例】リスクを軽視した結果BPOの品質が上がらなかった事例
【中小企業事例】6カ月のサービス期間中に途中解約となった事例
【大手企業事例】リスクを軽視した結果BPOの品質が上がらなかった事例
こちらは国内事業会社の事例です。
システム導入のプロジェクトと平行して、業務改革の一環でBPO導入を決定し、低コストで運用が可能な海外BPOを選択しました。
BPO対象業務
●業務領域
債権/債務/伝票取扱/立替経費精算
●具体的な業務
・伝票承認
・伝票、帳票入力
・各種データの集計作業
BPO化に失敗した2つの要因
BPOが失敗に終わった要因として下記2点が挙げられます。
業務担当者の工数不足による不十分な引継ぎ
アウトソーシングする際のリスクの軽視(海外での運用)
それぞれご紹介していきます。
1.業務担当者の工数不足による不十分な引継ぎ
平常業務に加えて元々進めていたシステム導入とBPO導入が重なり、業務を引継ぐ側の担当者が工数不足に陥りました。
結果、マニュアル作成やトレーニングのための時間を十分に取れず、業務内容やノウハウをBPO委託先に伝達できなかったことで、BPOスタッフのトレーニングの質が低くなりました。
また、BPOの業務対応開始が決算期と被ったことも余計に業務担当者の工数を圧迫することにつながりました。
BPOスタッフからの業務に関する問い合わせに対しても「(自身が)忙しすぎて対応できない」といった状況だったため業務遂行に遅延が生じてしまったのです。
■失敗しないために
この場合、どうすれば失敗を回避できたでしょうか。
導入体制の整備と適切なリソース配分
BPOの対応スケジュールについては”あるべき状態”以上に、足元のリソースと体制を考慮して設定する
といった観点を踏まえて社内で検討の場を設けつつ、慎重かつ確実に進めることが重要です。
2.アウトソーシングする際のリスクの軽視(海外での運用)
アウトソーシングする際の手法の一つとして、海外にBPOセンターを設けてそこで業務を実施することもしばしばあります(これを”オフショアリング”といいます)。
海外BPOのメリットは、その国の基準で費用を決められるため、一般的に日本国内でBPOを実施するよりも費用を抑えることができる点です。
しかし、海外ならではのデメリットもあります。この事例ではそのデメリットが出てしまったと言えます。
BPO開始当初は、無事海外にBPOの拠点を設置したのですが、その後言葉の壁や商習慣・文化の違いなどの課題が発生しました。
さらに、リソース不足により上記の課題に対して十分な対策を打たなかった結果、担当者レベルでの協力関係が築けないままプロジェクトが進んだため、適切なトレーニングが行えず、業務品質が低下してしまいました。
■失敗しないために
このような事態に陥らないためには
海外移管には固有のリスクがあること(費用面とのトレードオフ)を十分に理解して、言語力に長けた方を配置するなど担当者を検討する。
個人情報流出やカントリーリスクなど、プロジェクトの頓挫や会社の信用に関わるリスクも発生しうるため、リスクがある業務は移管しないようにしたり、もしもの場合の対応策をあらかじめ検討しておく。
もしくは、リスク対策への知見を持った方にレビューをしてもらう。
といった対策が有効と言えるでしょう。
【中小企業事例】6カ月のサービス期間中に途中解約となった事例
業務斡旋事業を展開している企業の事例です。
事業展開とともに社内リソースに余裕がなくなり、コアメンバーが雑務や採用業務を担っていました。
こちらの企業は社員の入れ替わりが激しく、社員が辞めるとコアメンバーの雑務が増加し、さらに採用のための工数も増加するという悪循環に陥っていました。コアメンバーが残業することで対処している状況を解消するためにBPOの導入を決定しました。
BPO対象業務
① 預金における売掛金の入金消込、仕訳計上
仕訳行数 月あたり約5,000行、所要:計10時間
② 当月売上高の取引先・金額チェック、仕訳計上
仕訳行数 月あたり約2,000件、所要:計20時間
BPO化に失敗した2つの要因
BPOが失敗に終わった要因として下記2点が挙げられます。
不完全なマニュアルによるコミュニケーション工数の増加
担当者のリソースが足りておらず連携不足
それぞれご紹介していきます。
1.不完全なマニュアルによるコミュニケーション工数の増加
不完全なマニュアルとは、今回の例でいうと 、「マニュアルに業務の手順が完全に記載されていない」ということです。
具体的には、送金する際の手数料を自社持ちor顧客持ちにするなどの事項は、マニュアルに書かれておらず、問い合わせが多く発生しました。
そのため「BPOスタッフからの業務に関する質問が多い」との苦言をいただきました。
BPOを導入した企業は「BPOスタッフ(作業担当者)は専門知識を持っているので不明点の内容くらいわかるだろう」と考えていたためです。
さらに、BPOサービスの仕組み上、問い合わせなどによりコミュニケーション工数が増えると、当然それに比例して稼働時間・委託費用が増加するため、さらなる苦言をいただく結果となりました。
■失敗しないために
イレギュラーな業務についてはできるだけ事前にルール化する
BPO導入当初に起きる想定外のイレギュラー対応については導入企業が巻き取ることを明文化して双方で認識を合わせておく
といった対策で失敗のリスクを回避することができます。
2.担当者のリソースが足りておらず連携不足
BPO化を進めるなかで、委託前まで実務担当者だった方が他の業務にアサインされてしまいました。
そのため実務担当者とのマニュアル作成のための連絡が1日1通程度になり、実質委託先企業のメンバーのみでプロジェクトを回している状態となりました。
この実例では、売上の金額確認を目視で行っていたのですが金額間違いが多発するようになり、すり合わせのためのMTGの回数が増加しました。
その結果、プロジェクト終盤には有益なコミュニケーションや課題発見・改善のサイクルが全く回せない状況に陥ってしまったのです。
■失敗しないために
BPOの立ち上がり時期には社内業務担当者のリソースをあらかじめ確保する
社員各自が把握している明文化されていない業務プロセスを明文化したマニュアルを作成する
※マニュアルの整備のために1~2カ月程度スケジュールを確保することをお勧めします。
最後に
BPO化に向けたプロジェクトには、企業の規模や委託する業務内容、委託するBPO事業者、組織体制など様々な注意点があります。
その中でも共通して言えることは、「BPOを成功させるためには、発注側と受注側がどれだけ密にコミュニケーションを取れるかが重要」ということです。
コミュニケーションが不足しているプロジェクトでは「単に業務を外に出して暇になりました」という結果を導いてしまう場合があります。
しかし、これではコストが増えただけで、プロジェクトが成功したとは言えません。
双方のコミュニケーションの充実が結果的にメンバーのプロジェクトへのモチベーションにもつながり、円滑なBPO導入に繋がります。
「BPOのことについてもっと知りたい」「基本的なところを押さえておきたい」と思われた方はこちらの記事をご参考にしてみてください。
また、今回のような失敗事例だけではなく、成功事例についてもこちらの記事でご紹介しております。
以下の記事では、BPO導入のメリットやデメリットを事例とともにご紹介しています。
これらの記事をご覧いただくことで、よりBPOへの理解を深めていただけるかと思います。
ぜひご一読ください。
本記事が貴社の取り組みのご参考になりましたら幸いです。
最後までご覧いただきありがとうございました。
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