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【重大事故回避】BPO導入にあたっての注意点とBPO導入の意外なデメリット


はじめに

BPOを導入する際には、会社の信頼に関わる事故の可能性を考慮しなければなりません。

今回の記事では、BPO委託企業選定時の注意点と円滑な導入に向けた準備における注意点、記事の後半では、BPO導入時だからこそ発生するデメリットを実例とともに紹介していきます。


BPO委託企業選定時の注意点と円滑な導入に向けた準備における注意点

注意点①:BPO委託企業の実績

特に経理業務においては専門スキルと経験の有無が非常に重要です。

BPO企業の業務担当者の会計・税務知識や実務経験が乏しい場合、誤った処理や報告が行われる可能性があります。

BPO企業の業務担当者の知識が不十分な場合、業務の引継ぎ・インプットの際に余分な人件費や工数を要するかもしれません。


委託企業選定時のポイント

  1. 経理領域のBPO導入実績をもっているか。

  2. これまで支援してきた企業の規模はどれくらいか。自社と同じくらいの規模感か。

  3. 自社で使用しているシステムを扱った実績があるか。

  4. BPO企業内のリソースに余裕があり、安定的な稼働が可能か。

  5. BPO対象業務の業務効率化や標準化も可能か。


経理の専門スキルの不足により発生した事例

BPO委託企業からアサインされたAさんは、簿記の知識はあったものの、経理実務における専門スキルが不足していました。

そのため、業務理解に時間を要し業務引継ぎの遅延が発生。
委託業務の開始が2週間遅れ、委託企業・クライアント双方にとって不利益を被ることになりました。


注意点②:BPO委託企業のセキュリティ対策は万全か

経理業務では企業の重要な情報を取り扱うため、機密性とデータセキュリティが要です。

BPO委託企業を選定する際に、経理データの保護やセキュリティ要件への適合性を確認せずに選定すると大きな損失につながる可能性があります。

忘れがちですが、最も重要な注意点と言えます。


セキュリティ事項に関する委託企業選定時のチェックポイント

1.ガイドラインに基づいて情報管理が行われているか

BPO企業は、自社独自のセキュリティガイドラインを有している場合が多いです。
しかしながら、ガイドラインを有しておらず、セキュリティ対策が行われていない企業もあります。

ガイドラインが存在したとしても、物理的およびネットワーク上のセキュリティが適切に管理されているかを確認することが重要です。


2.データや文書が保管されたセキュリティエリアの警備は十分か

外部漏洩を防ぐ必要のあるデータや文書は、セキュリティが強化されたエリアでの利用や保管が求められます。

例えば、個人ごとに認証カードで管理された連絡先の提供、遠隔での監視体制の確立など、厳格な管理が必要です。


3.個人情報データのセキュリティ対策が実施されているか

個人情報データの受け渡し時には、厳密なセキュリティ対策が求められます。

データを暗号化し、安全な配送もしくはセキュアなファイル転送サービスを使用しているか、個人情報データのセキュリティ対策が十分であるかを確認しましょう。


注意点③:BPOの契約内容と業務範囲

BPO委託企業とクライアント間で業務に対する線引きが不明瞭な場合、業務の誤解や想定外の処理が生じる可能性があります。


BPO契約時に明確にしておくべきポイント

1.委託する業務内容の明確化

交通費精算業務や給与計算業務など、業務の範囲を明確にしましょう。

さらに詳細な業務範囲についても、業務フロー図等で業務の流れを可視化しておくと、BPO委託企業との認識齟齬を回避できます。


2.処理件数と処理工数

委託業務の月間の件数と工数(所要時間)を事前に数値化しておきましょう。

数値化することで、BPO委託側によるメンバーのアサイン決定が容易になるため、プロジェクトの立ち上がりが早められる場合があります。


3.BPO開始から終了までの業務スケジュール

BPOプロジェクトの業務開始から業務完了(納期)までのスケジュールを明文化しましょう。

リソースの効率的な配分、委託先とのスケジュール面でのトラブルの回避、プロジェクトの効果的な進捗管理、納品物の品質担保などを実現することができます。


BPO導入時に発生する意外なデメリット

ここからは、BPO導入によって発生する意外なデメリットを紹介します。


会社内部で業務遂行に関するナレッジ蓄積が困難になる

理由①:業務プロセスがBPO委託企業によって遂行されることにより、自社内での業務運営能力の保持ができなくなるため

一般的に、委託後の業務はBPO企業独自の標準化されたプロセスで運用することが多いです。
自社独自の業務プロセスから変化が生じるため、これまでの経理業務の手法やノウハウを保持しにくくなります。


理由②:自社内での経理業務に関する習熟の機会が失われるため

BPO委託対象業務は、BPO企業の業務担当者により遂行されます。
そのため、BPO委託期間中は、自社社員が経理業務スキルを習熟する機会が失われてしまいます。

自社内での経験やスキルの継続的な育成が制約されることで、自社の経理業務のナレッジの蓄積が困難になる可能性があります。


BPOのデメリット(社内ナレッジ不足)で苦しんだ事例

約9割の経理業務でBPOを導入していた企業では、委託していた業務の一部を自社内での運用に転換しようとしました。

しかし、業務に関するノウハウが蓄積されておらず、社員に対して新たに研修を実施するなど、研修コストが増加しました。


BPO委託期間中のナレッジ蓄積方法

業務のイレギュラー処理やBPO委託中に新たに発生した、または変更となった業務フローを業務マニュアル内に反映させることが重要です。

実際の支援内で行っていた取り組み

  • BPO企業と月次報告会の実施:業務フロー変更点を共有

  • BPO企業が業務内で使用している資料の納品


既存社員からの不満

事前に既存社員とのコミュニケーションを取ることは非常に重要です。

BPOを実施するにあたり、社員の中には「自分の仕事を奪われる」と思ってしまう方もいます。

事前の説明が足りなかったばかりにあらぬ誤解と反発が生まれてしまい、結果BPO導入に際してマイナスな影響が出る恐れがあります。


既存社員の不満が爆発し、BPOが大幅に遅延した事例

あるIT企業ではBPOプロジェクトにおいて、契約を締結し、いよいよ業務引継ぎを開始しようとしていました。

しかし、ベテラン社員からBPOを導入するに際し、強い反発を受けました。

反発の例

  • 解消されているセキュリティ面で苦言

  • 「私でないとイレギュラー対応ができない」と主張

  • 「私をリストラするためのプロジェクトでは?」と主張

ベテラン社員の立場からすれば、自身の職が危ぶまれると考え、強く反発をする背景も理解できます。

ただ、委託予定の業務はマニュアルもなく、ベテラン社員からヒアリングを受けないとプロジェクトが進まない状況でした。

結果、ベテラン社員の説得には約半年を要し、その間マニュアルが完成することはありませんでした。
スケジュールや要件を決めることもできませんでしたが、すでにBPOの契約は開始していたため、費用面で損失が生まれてしまいました。


まとめ

今回はBPO委託企業選定時の注意点と円滑な導入に向けた準備における注意点についてご紹介しました。

これらの注意点は、一見すると当たり前のことのように思えますが、万が一抜け漏れがあった場合に、プロジェクトの遂行に大きな影響を与えてしまいます。

事例にあるようなデメリットを生まないためにも、入念な確認や認識合わせが必要不可欠です。


「BPOのことについてもっと知りたい」「基本的なところを押さえておきたい」と思われた方はこちらの記事をご参考にしてみてください。


また、今回のようなデメリットだけでなく、BPO導入のメリットについても、以下の記事でご紹介しております。


以下の記事では、BPO導入の成功事例、失敗事例をご紹介しています。


これらの記事をご覧いただくことで、よりBPOへの理解を深めていただけるかと思います。
ぜひご一読ください。


この記事が貴社のBPOプロジェクトの成功に少しでも貢献できれば幸いです。
最後までご覧いただきありがとうございました。



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