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「MaaSとは」でたどり着いて欲しい記事 (2/3 中編)

本noteをご覧いただきありがとうございます!
前回の記事では、MaaSとは何か、その目的、日本版MaaSの特徴などをお伝えしました。第1回をまだ読んでいない!MaaSって何?という方はぜひこちらをご覧ください!

改めまして、こんにちは!
パーソルP&T・システムソリューション(SSOL)事業部所属の吉田です。
会社、事業部の詳細はSSOL採用チームのnoteをぜひご覧ください!

今回はMaaS発信第2回目として、日本版MaaSの課題と、日本全国でのMaaS事例を紹介します。

1. 日本版MaaSにおける課題

●ニーズの違い
日本は現在、都市に人口が集中しており交通の便にも差が生じています。東京や大阪などの大都市では鉄道網・バス・タクシーは充実しており、移動に困ることはほとんどありません。経路検索は容易で、交通系ICカードによる決済手段も整備されているためスムーズな決済が可能です。

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一方大都市や中堅都市、政令指定都市などを除く地方では、そもそものモビリティ(交通手段)自体が不足していることが多く、この背景には、「マイカーに依存することによる公共交通の衰退、公共交通が衰退することによってさらにマイカーに依存せざるを得ない」という状況や、ドライバーなどの交通手段の担い手が不足(=働き手が減少)していることが考えられています。後者の人手不足による課題は、地方に限らず少子高齢化に伴って大都市においても顕著になっていきます。

このようなそもそもの交通手段の整備状態の差があること、マイカーの利用状況の違いがあることから、ニーズにも違いが生まれます。
交通手段・決済手段が充実した大都市では、利用者に対して「いかに便利で楽に移動できるか」を伝えることが重要となりますが、モビリティ自体が不足している地方ではまず移動インフラの再編・整備を進めて交通格差を埋めることが求められます。
さらに、地方では人口減少も生じているため単純に交通手段を整備するだけでは効果がありません。マイカー依存であることから、マイカーよりも便利・快適などで利用したくなるような、かつ地域ごとの課題を踏まえたサービスを提供することが大切です。

●データ連携について
第1回noteでお伝えしたとおり、日本では海外に比べて交通事業者が多いという特徴があります。このことはMaaSを進めるうえで一つの課題となります。MaaSには統合の段階によってレベル分けする考えがあります(図1参照)。

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図1 引用:「MaaS経済圏」の誕生。都市のコントローラーは誰の手に?【後編】(『MaaS モビリティ革命の先にある全産業のゲームチェンジ』(日経BP社))

まずこのレベル1「情報の統合」を達成するには各交通事業者や他事業者とのモビリティに関する情報を統合する必要があります。しかし第1回noteでお伝えした通り、日本では多種多様な交通事業者がそれぞれ独自に発展したため、事業者によってデータ形式などが異なっています。この異なる形式を、関係者が使いやすいようにまとめなおし提供することが必要ですが、その際に活用できるものとして、第1回noteでもご紹介した国交省制定のガイドライン「MaaS関連データの連携に関するガイドラインVer.1.0」があります。このガイドラインではMaaSに必要なデータが円滑に、安全に連携されることが重要だと定義されています。
このガイドラインについてわかりやすく解説しているニュースメディアがありますので、ぜひご覧ください!

●セキュリティ
「MaaSが進めば、スマホ一つで家から行きたいところまで簡単に予約、乗車、決済までできて移動が簡単になります。」
このような伝え方をすると、逆に「スマホが無ければ何もできなくなるのではないか?」といった疑問が生じたり、決済サービスなど個人情報の取り扱いについて不安が生じたりすると思います。

セコム株式会社が2020年7月16日に実施した「日本人の不安に関する意識調査」によると、「最近1年間であなたの生活に不安を感じた事件・事故」という設問に関して、「情報流出やサイバーテロによる被害」に対して不安を感じる人が、「空き巣などの住宅侵入」に対して不安を感じる人より多いという結果になったとのことです(参照:日本人の不安調査:空き巣より情報流出やサイバーテロが不安上位(セコム))。
このアンケート結果から私は、上記サイトに記載の通り、個人情報の漏洩に対してや、勝手に情報を利用されたり、気が付かないうちに情報を収集されたりするのではないか、という、いわば「見えない」「わからない」といったことによる不安が、これまでの不安より強く生じているのだと感じました。

そこで、MaaSを進めるうえでまずこういった「見えない」「わからない」ことに対する疑問・不安を解消することが重要になります。MaaS推進に向けて、個人情報やプライバシー保護対策として、個人情報保護法で求められる処置を行うことに加え、前述の国交省が策定したガイドラインでは以下のように記載されています。

「MaaS において取り扱うデータは、一般利用者の移動履歴を示すデータが含まれ、多くの個人情報が含まれる可能性がある。そのため、関係者間でデータをやり取りする場合は、個人情報の保護に関する法律等に従って所要の個人情報・プライバシー保護対策を行う必要があることに留意が必要である。」
引用:MaaS関連データの連携に関するガイドラインVer.1.0, p.9(参照2021/2/16 16時)
「MaaS に係る関係者によっては、個人情報保護・プライバシー保護に係る認識やその体制が同等ではない場合もあると考えられることから、一般利用者から同意を得るデータの範囲についてデータ提供者等と事前に協議する等、必要に応じて、データ利用者が提供するサービスを踏まえ、利用規約を含めた個人情報保護・プライバシー保護に係る対応について関係者間で共通認識を深めることが望ましい。また、個人情報保護・プライバシー保護対策については、一般利用者を含む関係者の意見等を反映する機会を設ける等、一般利用者のニーズ等に合わせて適時・適切な対応を行うことが考えられる。これは、利用者保護の観点だけでなく、個人情報を取扱う主体の信用維持等の観点においても有効である。」
引用:MaaS関連データの連携に関するガイドラインVer.1.0, p.12(参照2021/2/16 16時)

この記載を要約すると
・関係者同士で協議を行い個人情報の取り扱いについて決めること
・補償規定なども含めたガイドラインを制定し安全性を示すこと

上記が求められているとわかります。

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個人情報の取り扱いに留意することはもちろん、利用者にとって安心・安全に使えるように、サービス提供者と利用者の双方が誠実にコミュニケーションをとり、よりよいサービスの為、社会課題を解決するという目的を意識して取り組んでいくことが、MaaSを進めるにおいては重要であると私たちは考えています。
また、「スマホが無ければ何もできなくなるのではないか?」といった不安を抱かせないように、スマホ以外の代替手段も考慮することが重要です。もちろん社会課題として働き手の不足があることも考えながら、日々進化する技術と組み合わせてできることを考え続けること、試して改良していくことが大切だと考えています。

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2. 日本国内でのMaaS事例紹介

●国の取り組み
・スマートモビリティチャレンジ

「スマートモビリティチャレンジ」とは、経済産業省と国土交通省が開始したプロジェクトで、新しいモビリティサービスの社会実装を通じて移動課題の解決や地域の活性化を目指し、地域と企業の協働による挑戦を促す取り組みです。
令和2年度スマートモビリティチャレンジでは全国から52の実証地域が選定されています。
https://www.meti.go.jp/press/2020/07/20200731005/20200731005.html

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経済産業省「新しい地域MaaS創出を推進!令和2年度スマートモビリティチャレンジの実証地域を選定しました」(2020年7月31日)
https://www.meti.go.jp/press/2020/07/20200731005/20200731005.htmlより画像引用

また、令和元(2019)年度にも本取り組みは実施されており、その際は28の地域・事業が選定されました。その取り組みについて、一部を動画にまとめたものが展開されています。

また、概要がこちらに展開されており、野村総合研究所による振り返り資料も公開されていますので、ぜひご覧ください!

・令和2年度「日本版MaaS推進・支援事業」

国土交通省は、「過疎地における移動手段の確保や観光地での二次交通の確保といった地域の課題解決にも資する重要な手段として、MaaSの早急な全国普及を図ることとしています」(引用:国土交通省ホームページ 公共交通政策「令和2年度日本MaaS推進・支援事業の公募について」 より)とホームページに記載の通り、地域の課題解決のためMaaSのモデル構築を図り、この取り組みを基に日本版MaaSの推進に取り組む地域が拡大することを目指しています。

令和元年度に引き続き、MaaS推進のため事業の公募を令和2年4月17日~6月30日にかけて行い、その中から38事業が選定されています。
https://www.mlit.go.jp/report/press/sogo12_hh_000190.html
全事業の詳細資料はこちらになります。

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国土交通省「日本版MaaSの取組を加速!
~新たなMaaSの構築を牽引するモデルプロジェクト38事業を選定~」(令和2年7月31日)
https://www.mlit.go.jp/report/press/sogo12_hh_000190.htmlより画像引用

このnoteを読まれている方にとって、ゆかりのある地域はあるでしょうか?
ぜひ確認してみてください!

●地方の取り組み
・東京都

MaaSの社会実装モデルとなる実証実験プロジェクトが令和2年8月3日から公募開始し、同年9月16日に3件の実証実験プロジェクトが選定されました。
東京都のお知らせはこちら
委託先の事業プロモーター(デロイトトーマツコンサルティング合同会社)による詳細はこちら
選定された実証実験プロジェクトは以下のようになっています。
「交通空白地域における施設連携型オンデマンド交通運行と乗り継ぎ情報提供を通した交通サービスネットワーク構築事業」(小田急電鉄株式会社、東日本旅客鉄道株式会社)

「東京多摩エリアにおける生活利便性向上を実現するMaaSの実効性検証プロジェクト」(京王電鉄株式会社)

「東京臨海副都心エリアにおけるWithコロナ時代の観光MaaS実証実験
〜VR/ARを活用したおでかけ需要喚起と、MaaSによる安全・安心・快適な移動の実現〜」(株式会社ナビタイムジャパン、KDDI株式会社)

・静岡県

しずおかMaaSコンソーシアム
https://s-maas.jp/
地域密着型の官民連携コンソーシアムです。
しずおかMaaSについてのインタビュー記事がこちら。前編後編構成になっています。

●民間企業の取り組み
民間企業の取り組みについては前回も少しだけお伝えしました。今回は前回ご紹介したもの以外の中でも、特に地域に根差した実証実験等を中心にお伝えします。

・東北デスティネーションキャンペーン

https://www.tohokukanko.jp/dc/
東日本大震災から10年となる今年(2021年)に、東北6県で4~9月の6か月間東北デスティネーションキャンペーン(大型観光キャンペーン)が開催されます。

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画像:東北デスティネーションキャンペーン(東北DC)特設サイト より引用

この大型観光キャンペーンに合わせて、観光型MaaS「TOHOKU MaaS」をJR東日本が展開します。
TOHOKU MaaSは「旅のプランニング機能やオンデマンド交通など、より便利な移動を実現する「MaaS」メニューを提供し、より多くの観光地を訪れ、グルメやお買い物などの体験を楽しんでいただけるようお客さまの旅を応援します。」(引用:「東北デスティネーションキャンペーン」に合わせた
観光型 MaaS「TOHOKU MaaS」の展開について
p.1)ということで、あわせてSuicaなどの交通系電子マネーによるキャッシュレス化が推進されます。
スマートフォン一つあれば、東北地方を今まで以上に便利に・安心に、楽しめる観光ができると期待されます。

・Izuko

https://www.izuko.info/
観光型MaaS「Izuko」は、東急株式会社、東日本旅客鉄道株式会社、伊豆急行株式会社が伊豆を中心に実証実験に取り組んており、Izuko(MaaS)を用いた観光需要の創出を目指しています。
Izukoは、現在(2020年11月16日から2021年3月31日まで)実証実験のPhase3を実施しています。Phase1,2は実施済で、Phase1,2を体験された方のブログがこちらにあります。
Izukoを利用すると、観光地の検索やルート検索、飲食店の予約、チケット購入などができ、またレンタカーやレンタサイクルなどの予約もできます。こちらも上記同様、スマートフォン一つあれば、伊豆地方の観光がより楽しめると期待されます。

・setowa

https://www.jr-odekake.net/navi/setowa/
https://www.setouchi-palette.jp/others/setowa
setowaは瀬戸内エリアを観光するのに最適な観光型MaaSで、観光キャンペーンと合わせて実証実験を実施しています。
setowaのことが簡単にわかる動画がありましたので、ぜひご覧ください。

setowaではせとうちエリアの魅力や楽しみ方を、写真を豊富に用いて紹介し、モデルコースも提示されます。また、旅行スケジュールを経路検索から作成することができ、移動手段やホテルの予約まで可能です。旅行の最中も、お勧めの観光地の紹介や、ナビゲーションもしてくれます。
お得な周遊パス(定額で乗り放題のチケットなど)も用意されており、setowaを使えばせとうちエリアを便利に、そしてお得に観光することができます!

3. 最後に

今回は日本版MaaSにおける課題についてお伝えしましたが、これ!といった明確な答えや解決策を提示することが難しく、なかなかすっきりしない読後となったかもしれません。
ですがこういった課題があることを認識する人が増えれば、解決策を考える人も増え、それだけアイデアも広がると思います。多くの人たちが自分ごととして課題を意識し、解決したい、と思っていけるように引き続きnote発信を続けてまいります!

次回は海外の事例紹介を中心に記載したいと思います。

最後までお読みいただきありがとうございました!



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