20241106
今年も11月がやってきた。クリスが2021年8月に強姦罪で逮捕されてから4回めの誕生日を迎える。この日だけはクリスのことをちょっとだけ考えて、楽しかったときのことを思い出したり、懐かしんだり、カッコよかったなあなんて思ったりしてもいい。せめて健康でいてほしいなんて祈ったりもしていい、今ではそんな風にちょっとした折り合いをつけているつもりだ。
クリス事件は去年の誕生日の少し後、2023年11月24日に第二審が棄却されたことで呆気なく終わりを迎えた。分かってたけどweiboで報道を見てたときの自分のバクバクした心臓とは裏腹に結果はあまりにもあっさりしていて、終わりってこういうもんなんだなって思ったのを覚えている。むしろ最初から分かっていたことなのに、今でもまだ不安を覚えたりドキドキしたりする自分のほうが本当におめでたい頭してるんだな、とすら思った。誰を恨むでもなく、何に怒るわけでもなく、ただただ悲しい終わりだった。
ついこの間、NCTのテイルが性犯罪に関与したとして突然グループからの脱退が発表され、後にSMとの契約は解除となった。朝鮮日報による記事では友人と共に酒に酔った女性へ性暴行を行ったとして、特殊準強姦の疑いで捜査されているとのことだった。こんな状況に当然のことながらテイルをボロクソに叩くポストが散見され、朝鮮日報の記事が出る前の段階でどこまで真実か分からない情報がいくつも拡散されたのを見た。そのいくつかは被害者が未成年だったり相手に障害を負わせたという内容だったり明らかにデマが織り交ぜられていて、どうしてもクリスのときの混乱を思い出さずにいられずについつい私も口を出してしまったりしていた。いわゆる「推し」が性犯罪者になったかもしれない、そんな状況に陥ったとき、一人でも多くの人が必要以上に傷ついたり苦しまないように、せっかくなので今だから冷静に言えるお節介を少しだけここに書いておこうと思う。
まずこういう時どこからか湧いて出てくるソース不明の情報には、誰もが惑わされてしまいがちだ。それが推しに関する衝撃的なニュースなら尚更だろう。今のTwitter、Xでは検索せずともおすすめ欄に関連ポストがどんどん表示されてしまうし、当時と違って課金制SNSであるXにはインプレッション稼ぎを目的とした過激なポストがあるのも事実だ。受け手側がやるべきなのは、加害者とされる対象へ特別な感情があるほど一旦落ち着いて情報一つ一つを確認していくか、それができない精神状態なら何も見ないこと。私はそれが出来なくて全然落ち着かないまま毎日パブサしまくってたけど、その弊害と言ってもいいのか今でも他人がSNSなどでボロクソに叩かれているのを見ると、推しでもなんでもなくても自分が叩かれているような気持ちになってひどく落ち込んでしまったりする。全然後悔はしていないけど、シンプルに精神衛生上は全くよろしくない状態が続くので絶対におすすめはしない。
だったらこれらの情報を錯綜させるデマそのものの根源を断てばいいじゃん、と思うかもしれない。でも、きっとそんなデマはこれからも炎上騒ぎが起こるたびに無責任に流れ続けるのではないかと思う。広大なインターネットの中でデマというのはどこから自然発生するのかは分からない。全くの作り話かもしれないし、もしかしたら一部だけの真実を誇張しまくった話かもしれない。そもそもファンだけではなく前述のようにインプ稼ぎという層の介入を避けられない限り元を断つことは恐らく不可能で、その真偽をただのファンである私たちが全て見抜くこともまた不可能だ。だから私は自分がデマだと確信できるものだけは見かけ次第ひとつひとつ否定するし、事件とは関係ない部分で必要以上にクリスや周辺人物を嘲笑う人がいれば看過できないものに関しては釘を刺していく。誰も見ないかもしれなくても、庇っているのは犯罪者だとしても、やっていないことで反論できないクリスが一方的に叩かれるのは、いくらなんでも見ていられないからだ。
そして今回は、テイルに徹底的にNOを突きつけられない主に日本のファンに対して「人権意識が低い」という厳しい指摘(このポストは後に投稿主が謝罪の上削除していた)もあり、非常に耳が痛かった。私はテイルの人となりを詳しく知っているわけではなく、事件についても積極的に調べているわけでもない。でも正直なところ、この手の事件が起きたとき「まあまあ、まず双方の言い分を聞かないと」となること自体が我ながら甘いとは思う。日本でもあらゆる事件が話題にはなっているが、残念ながら性犯罪という犯罪の性質上被害者が疑念を向けられやすいのが現状だ。更に加害者が有名人となるとその傾向は強く現れやすいように感じる。しかし、本来だったらそんなことは絶対にあってはならない。勇気を出して声を上げた被害者を保護してあげられる社会にならなくては、泣き寝入りする被害者を減らすことはできないからだ。かといってこの時点で100%加害者を責めてしまうのもまた危険ではあるのだけど、正直なところ推しが加害者になったかもしれないという特殊かつ最悪な状況下では正常な判断ができなくなるほうが自然だし、できなくて当たり前だと思う。だからこうなったとき、今だからこそ言えるのは最低でも3点だけ頭の片隅に置いておいてほしいということだ。「①他人を傷つけない」「②ソース不明の情報を鵜呑みにしない」「③絶対に被害者を疑うような言葉を発信しない」。あとはどんなに混乱しても、悲しんでも、苦しんでも、全然おかしくないし悪いことじゃない。昨日までの最愛の人が今日突然性犯罪者かもしれないと知っても、いきなり嫌いになれない自分を責めなくてもいい。むしろこんな悲しい目に遭わされた自分もちょっと被害者くらいに思っていて欲しいと思う。
アイドルに限らず、生きている誰かを好きでいる私たちはこういう事件にぶち当たることが少なからずある。それが生身の人間を好きであるリスクでもあるし、自分の知らなかった一面をどう捉えるかを試される瞬間でもある。「そんな人だったんだね」と幻滅してその場から立ち去るのも意地でも受け止め続けるのも、誰かを傷つけたりしないという最低限のルールさえ守れば全部私たちの自由だ。私なんて今でもクリスを嫌いになりきれていなくて、誰かに軽蔑されていてもおかしくない。それでも私はクリスがしていた大規模な募金や慈善活動やファンとして見ていた王子様みたいな一面を全部が全部否定したいとは思わないし、私の「好き」は0か100かでハッキリ区別が付けられるような単純なものではない。そしてその気持ちは他人に笑われるようなものではないと信じたい。ただ被害者が救われてほしいという気持ちだけは、絶対に絶対に忘れないようにしたいと思っている。あとはどんなオタクもとにかく健康で、元気でいて。それが一番の願いだ。そして今年もこっそり祝わせてほしい。クリス、34歳のお誕生日おめでとう。每个你は各々クリスに想いを馳せながらなんとかやっています。とにかく死なないように、生きていてね。これからも、お互いに生きていようね。