どんな状態で生きていたいか【本業の話】
栄養を摂るということ
食べてほしいスタッフと食べたくない患者さん
わたしの担当している患者さんで、飲み込む機能に障害はないものの、お食事が少ししか食べられず、点滴だけでは1日を乗り切るエネルギーが足りないので、栄養を取り入れる方法について、ご家族のご意向を伺う予定の方がいます。
嚥下調整食2と分類されたミキサー状の食事であれば、誤嚥せずに食べれるよ!と飲み込みの専門スタッフが評価して、ミキサー状の食事を提供されているんだけど、これがまあ食べない食べない。
なんで食べられなくなったんだろう
食べられなくなってしまう理由は本当に人それぞれで。
食べる体力や気力がなくなってしまった方、認知症の進行により口に運ばれたものを異物と捉えてしまう方、これまた認知症により食事=食べるものと認識できなくなっている方、口の中の環境が悪い方(荒れていたり、舌に汚れがついたままになっていて不味く感じる)、そもそも飲み込む機能が低下してしまっている方など。
おうちではどうしていたの?
ご家族の方によると、家で食べていたのはやわらかめの食事ということなんだけど、普通みんながやわらかめと聞いて想像するのはかぼちゃの煮物とか豆腐とかおかゆとかでしょ?
多分おうちではそういう感じの「やわらかめ」だったと思うの。
でも病院や介護施設で提供している「やわらかめ」は、もう全然違うよ。
それでは嚥下調整食を脳内で作っていきましょう!
ご飯を用意します 例えばカレーライスね
ルーとご飯をそれぞれミキサーへ入れます
お皿に移し替えます
ミキサーにかけたカレールーをミキサーにかけたご飯にかけて、さあ召し上がれ〜
で、こんな感じになります。ペースト状ね。
ピューレと言った方がオシャレに聞こえるかな?
これを、自分では食べてくれないので、職員がねじ込むようにお手伝いして食べてもらいます。
病院側の意向としては、お口からお食事(栄養)を摂らないと、栄養の代替摂取手段の検討が必要になる。
口から食べる以外のどの選択をしても身体への侵襲があったり、管に繋がれてしまうので、口から食べることで、一番人間らしい姿でいてほしいというの願いもこもっていると言ったところでしょうか。
この患者さんは、食事は毎食2割ほどでごちそうさま。
あとは、1缶200kcalほどの栄養ドリンクみたいなのを提供されてて、1日かけて飲めるときに飲んでもらって〜という指示なので、リハビリで関わるわたしもドリンクが残っていたら「飲んで〜」と口に運びます。
コップから飲んでもらおうとすると、口に入れずにジャーッと服にこぼしちゃうし、ストローでは吸ってくれないので、「楽のみ」とか「吸い飲み」という、飲み物用のジョウロみたいなのを使ってお手伝いします。(飲んでもらうというよりは流し込んでいるという感じにどうしてもなっちゃう。倫理的にどうなのと思うことはしょっちゅうあるよ。)
なぜかこの患者さんはバナナ味を提供されていて、バナナアレルギー(嘘)のわたしにはバナナの匂いのするものが近くにあるだけでも苦行なのに、そして、別にほしいと思っていない飲み物を口に運ばれている患者さんはどんな気持ちなのか、考えてみたの。
もういらないよが伝えられない(以下、患者さん目線で考えてみた)
ま、病院だし、栄養摂らせないわけにはいかないじゃん。
でもさ、何でバナナ味を選んでわたしに飲ませるの?
まじ苦痛。飲みたいわけなくね?
バナナじゃないにしても、こんな甘ったるい飲み物飲めるかいな。
カロリーupのために糖分入れるのはわかるけどさ、味もうちょっと考えてくれてもよくない?
職員のタイミングで飲ませてくるから、わたしがお腹いっぱいでもガンガン飲ませてくるやん。
もうちょっと時間おいてくれたら飲めるかもしれんのに。
ほんまそっちの都合ばっかりやな。
と、まあこんな感じでしょうか?
今日お話ししている患者さんは、自発的なお話ができなくなってしまっているので、想像でしかありませんが、自分だったらどう感じるかな?ということで。
このあと、この患者さんが直面する代替栄養方法についても書こうと思ったんだけど、なんとここまででかなりのボリュームになってしまったので、またの機会に書いてみようと思います。
わたしは「生かされている」状態では生きていたくないなと思っていて、食べたいものを食べたいときに食べれるということがどんだけありがたいことか、会いたい人に会いたいときに会えるということがどんだけありがたいことか、日々患者さんを目の前にして感じているので、今日も好きなアイスを食べてから、チルドレンの寝顔に圧強めのチュウをして寝ようと思います。