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勉強会vol.12 1年を振り返り、来年を考える会

明けましておめでとうございます。年を越してしまいましたが、昨年末に開催した12回目の勉強会の様子をご紹介します。この日は課題図書は設けず、1年を振り返る日としました。


vol.1 『稼ぐまちが地方を変える 誰も言わなかった10の鉄則』|木下斉著

税の再配分でなく、限られた資源で「まち全体の利益」を生み再投資する「経営視点(まちを一つの会社に見立てて経営する)」を学びました。

補助金をあてにした事業では、地域の本質的な力が育たない。活性化とは事業を通じて経済を動かしまちに新たに利益を生み出すことです。

また大変だから創意工夫・知恵が出る、身の丈にあった事業を徹底すべき!という指摘もその通りです。

縮小する社会で、官民で共に「公共」を守っていく構想が必要です。

vol.2 『まちづくり幻想』|木下斉著

地方のまちづくりがうまくいかない理由、それは、「行動する前の思考(戦術)が間違っているから」と木下さんは指摘します。自治体職員側の教育も特に重要で、外注よりも職員育成という言葉は響きました。

その後5月に週刊東洋経済のテーマが「喰われる自治体」で、まさにこのことかと思いました。館山市もほとんどの計画でコンサルに外注しており、多少質が落ちたとしても、自前でつくることが重要だと思います。

既存組織で無理ならば、新たな組織を作るべしという指摘も印象的でしたし、住民による主体的なアクションこそ、地域が変わる原動力になります。

話題は市の「総合計画」に転じ、どうしたら総合的な計画になるのか盛んに議論を交わしました。

vol.3 「館山市内での『モデルコミュニティ協働運営事業』企画書」|三田啓一著

第3回は、館山市内在住の行政学の専門家、三田啓一さんをお呼びして、三田さんがお書きになった企画書をテーマに議論しました。

市民参加の段階を3段階で見ると、館山市では市民の関与度は最も低い行政主導の市民参加の段階にあるようです。市民参加を高めるためには、小学校区を基準としたコミュニティ活動にヒントがあるというお話は、その後、「地域運営組織」の議題に発展していきます。

自治体はコミュニティ運営組織のサポートを行う戦略本部として、市民活動をどう仕掛けていくかという点で、コミュニティカルテという手法を活用して、それを総合計画へリンクしている自治体もあるというのは目から鱗でした。

vol.4 『社会の変え方』|泉房穂著

前半は、泉さんの半生がつづられた本。涙がポロポロと落ちたことを思い出します。

民主主義の原則は多数決であっても、ある日突然、自分自身が「少数派」になる可能性が常にある。マイノリティの方々の支援、福祉施策こそ行政がリードする領域だという強い意志を感じました。

泉さんは、「財政難」は言い訳に過ぎないともいいます。レポーターのOさんは、職員は守りの姿勢に入り、何も考えず、何もしなくなる(負のスパイラル)のではないか、「官も民も学も、ダイナミズムを失っていないか?」と一言。物事をバイアス無くフラットに考え、無理だと思っても声を上げる勇気が必要ではないか?政治が変われば、暮らしも変わるのではないかと訴えました。

「子育て」「教育」「観光」「福祉」など施策に大きな柱があったとして、どれも実際にはつながっていて、どこに力を入れるかで回り始めるのではないかという意見もありました。

vol.5 『未来の年表』|河合雅司著

2042年団塊ジュニア世代が高齢者になり高齢者人口が約4000万人とピークになるといった年表が綴られた本。

河合さんは、非居住エリアを明確化にし、地域内に多数の拠点をもうける多極ネットワーク型の地域運営を提案されています。。

また、セカンド市民制度(交流人口にターゲットを絞り第2の故郷)が出てきましたが、まさに年末に地方創生会議の中で提案された「ふるさと住民登録制度」が近しい考えではないかと思いました。

その後、市内に話題が転じ、神余地区は特有のコミュニティが形成されているという話題にもなりました。

明るい未来、暗い未来、超現実的な未来など、シナリオプランニングしてみたいという意見も。

vol.6『集まる場所が必要だ』|エリック・クリネンバーグ著

現役のドクターが担当した回。社会的インフラは、孤立を防ぎ、暮らしを守る「開かれた場」になり、あらゆる人が集まれる場所をつくることは、バラバラに砕けた社会を修復する最善の方法であるということでした。

当事者たちが、自分が楽しいと思う活動などのために継続的かつ反復的に交流し、自然に人間関係が育つ場所です。

社会的インフラが、人々の継続的な交流を促し、犯罪を減らし、学びを促し、健康を促進します。

「健康の社会的決定要因(social determinants of health)」というワードも印象的でした。健康問題は個人の健康行動による努力以上に社会的要因の影響を受けているというのです。

コミュニティが機能していた地域では日常でも人が集まり交流する文化があり、その地域を分析してみるのは面白いのではないかということにも。

vol.7 『地元経済を創りなおす』|枝廣 淳子著

「地域の悪循環」(人口減少→消費力低下→地域経済の縮小→雇用減少→人口減少)を断ち切り、好循環にもっていくには、土台となる地域経済がキーです。

「漏れバケツ」モデルという考えの紹介もありました。効率化+物流発展からの分業促進により地域から資本が流出しているといいます。

再生可能エネルギーを地域主導で開発し、地域に利益を還元したり、クラウドファンディングや地元の金融機関などを活用し、地元で資金を集め、地域のための投資を行ったりする手法が出てきました。

また、RESASについての学びも。館山市の地域経済循環率は91.4%と低い値とは言えないが、域外流出が大きいという分析も興味深かったです。
RESASについては、ぜひスピンオフ企画でもっと学びたい。

vol.8『PUBLIC LIFE』|青木純・馬場未織著

「館山リノベーションまちづくり」でもスクールマスターを担当してくださった青木純さんの新著。

近い将来、おひとり様社会が到来する。いつだって会いに行ける、頼れる存在(よい湯加減のパブリック)があれば、もっと幸せに暮らせるのではないかと語りかけます。

何より、「ちょうどよい湯加減」という表現は、その後よく利用させていただいています(笑)。まちにも熱い人、静かな人とさまざまな人が暮らしています。どちらに偏るのではなく、まさに中庸な場の創出により、まちがリビングに変化していくのかと思いました。

パブリックの耕し手を増やすことが重要です。「館山100人会議」をやったらどうかというアイデアも出ました。

vol.9 『神山 地域再生の教科書』|篠原 匡著

連鎖的にプロジェクトが起こる人口密度、距離の近さ。プロジェクトをいかに生み出すか & 生まれる土壌をどう作るかを考えさせられた回。

神山町では、一般社団法人「神山つなぐ公社」が設立され、官、民ともにサポートする体制ができ、グルグルとプロジェクトがつながっていきました。

館山市は城山周辺▶館山駅▶バイパス周辺と中心市街地が移動、現在も点在しているため、プロジェクトが発生しても連鎖反応が起きづらいという指摘も。

一方、神山つなぐ公社の財源も地方創生関連の交付金に頼っている。交付金もいずれ無くなるため、事業の自走を目指すことが大切も書かれてきました。

何より、地域のコミュニティマネージャーが必要です!

vol.10 『地域創生DX オンライン化がつなぐ地域発コンテンツの可能性』|松本 淳 著

DX(デジタル・トランスフォーメーション)は、単にデジタル化を進めるだけではなく、ビジネスモデルや行政サービスを根本から変革し、持続的な成長を目指すプロセスを指すことです。

日本はOECD諸国の中でデジタル競争力が低く、都市部と地方でのDX格差も深刻化しています。

オンラインツールの活用は、地域の新しい価値創造にもつながります。特に、観光業では「メタバース」や「バーチャル観光」といった新しいアプローチが模索されているようです。

ドクターからは、医療現場ではトリアージの業務や問診をデジタル化し、患者自身がタブレットで問診することで、時間や労力を削減しているという現場の話もありました。

デジタルデバイドの解消も急務。まさに映画上映で沸いた「南総里見八犬伝」など文化遺産のDXコンテンツ化の可能性も考えてみたいですね。

vol.11『地域モビリティの再構築』|家田仁・小嶋光信監修/三村聡・岡村敏之・伊藤昌毅編著

1年で読んだ中で、最も難解と感じられた本。地域公共交通は法理論(移動の自由を担保する交通権)、ICTや車両開発等の技術、都市計画(まちづくり)、医療・福祉、サービス開発、労働力問題、地域コミュニティなどなど、多岐にわたることが分かりました。

現代の地方交通事業者間に確保・強化されるべきは「競争よりも協調」で、地元の「善意」と「ボランティア精神」をベースとした支えあい交通が導入され、制度化している地域もあるそうです。

組み合わせ、柔軟な運用により、地域モビリティ全体を再構築していく必要がありました。館山市では、「富崎ぐるっとバス」などの取り組みも継続しています。

世界的にみて日本では地方部の地域モビリティが貧弱です。これまで、日本の地域公共交通は民間に任せきりだったが、「公設民営」を考える時が来ているのではという説もありました。

担当者の総括

・より多くの住民が、官と民の役割分担を理解する必要がある
・パブリックの耕し手(プレイヤー)を育成する必要がある
・国がやるべきことと市町村でやるべきことがある
・市全体に関わることとコミュニティに関わることがある
・コミュニティはテーマ型のものと、地縁型のものと大きく分かれる
・活動を持続的に回すファシリテーター、コミュニティマネージャーの存在
・「集まる場」と「研究の場」が必要ではないか

1年を振り返り、来年を考える

最終回は館山市の「YANE TATEYAMA」2Fをお借りして開催

2023年末に、「まちづくりに関する共通言語をつくろう」と始まったゆるやかな勉強会。この日、一人ずつ意見を語ると、仕組みについての評価が多かったように思います。

一人で学んでも独善的で広がりがない。多数で単にディスカッションしてもとりとめもない話になってしまうかもしれない。

そんな背景から、以下の緩やかな方式が設定されました。

・参加者一人一冊、「これは読むべし!」というまちづくりに関する本を厳選する
・選んだ本人がその本についてポイントを解説する
・解説の後にディスカッションをする
・書記がnoteにまとめる
※参加の条件は、事前に本を読んでくること

本が多少苦手な人でも、説明があると気づきがあります。また事前にプレゼンがあるので、ディスカッションも有意義で面白い。何より、時間がない中で月一で本を読む習慣になります。

計11回を経て、自然といくつかのテーマが浮き彫りになりました。そこから、何か新たな行動を移してもよし、スピンオフ企画があってもよし、そんな緩やかな勉強会を続けていくことになりました。

ディスカッション重視のため人数制限もありますが、「我こそは!」という地域の若者はぜひご参加を。

(レポーター:ひがし)

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