声明文から学ぶカッコイイ文章表現
声明文をご存じですが?
主張や訴えを公に告げる文書です。
社会に公表するわけですから的確なビジネス表現で記述する必要があります。裏を返せば声明文から学べる内容は多いということです(俗にいう良文)。また公的機関が作成する文章ですから信頼性も十分あります。
そこで本記事では良文を一部抜粋し、ビジネスシーンへ展開しながら解説して参ります。
一緒にワンランク上の文章表現を目指しましょう。(本記事は中級者向けです。徐々に難易度が上がります。)
例1 奈良県の選挙に関する声明
「近く第26回参議院議員選挙が行われます」
➤「近く~」今後の予定を述べる場面で使われます。
「買収、供応、その他選挙に関する一切の違法な行為」
➤「A、B、その他~に関する一切の~」並列表現です。具体例を複数挙げつつ最後に一言でまとめます。
「明るく正しい選挙の実現を期する」
➤「期(キ)する」には様々な意味があります。次の3番が該当します。
① 事前に期限や時刻を定める。
② 期待する。
③ 心に誓う。約束する。
「皆様には~、公正な選挙運動を展開されるよう強く要望します」
➤「強く要望します」はお願いや依頼の場面で使います。また「展開する」は周知事項があるときによく使います。
「有権者の皆様には、きれいな一票を行使されるよう切望いたします」
➤ 「切望いたします」もお願いや依頼の場面で使います。
「公職選挙法をはじめ関係法規を遵守し」
➤「遵守」は規律関係の文書でよく登場します。
「選挙違反を排除するという毅然とした態度で」
➤「毅然と」とは意志・態度が強く、柔弱な様子を見せないさまです。
例2 板橋区のウクライナ侵略に対する声明
「断じて許すことはできません」
➤「絶対に」よりも「断じて」の方が強い意志が感じられます。
「強い憤りをもって非難するとともに」
➤「強い憤りを持って」クレームで使えそうです。
「事態の平和的な解決を図るよう強く求めます」
➤「~を図る」目的を伝える場面で使います。
「日本政府においては~国際社会との緊密な連携を行う」
➤「緊密」とは関係が密接なことです。部署間や企業間など協力する場面で使います。
例3 首相官邸のコロナに関する声明
「予断を許さない経済状況」
➤ 予断とは前もって結果を判断すること。つまり経済状況が予測できないということです。注意喚起の場面で使われます。
「新型コロナで傷ついた皆さんへ経済対策を届ける」
➤「対策を届ける」あまり見かけない表現ですが独特で面白いため取り上げてみました。
「全ての国民が等しく成長の果実を享受できる新しい資本主義を創る」
➤「成長の果実を享受」これも独特です。ちなみに「創る」ですが「創」は新しいものをつくること。一方「造」は大型で有形のものに対して使い、「作」は有形無形問わず使うそうです。
「総選挙により、信任をいただいた上で~力強く前進させていく」
➤「信任をいただいた上で~力強く信任とは、信用して物事を任せること。目上の方や顧客とのやり取りで使えそうです。
「この度の総選挙が、新型コロナ対策に遺漏なきよう万全を期しつつ」
➤「遺漏(イロウ)なきよう」とは抜かりなく、怠り無くという意味です。「期す」は例1でも出てきました。
例4 研究の不正行為に関する国立大学協会の声明
「次代の科学研究者を養成している」
➤ 次世代ではなく「次代」。短くて厳かな雰囲気が伝わります。養成とは、教育や訓練で成長させること。新人教育の場面で使えそうです。
「不正使用が続いたことは痛恨の極みであり」
➤ 謝罪文で見かけます。
「求められている責務を十分認識し」
➤ 責任と義務のこと。義務という言葉には、道徳的・法的に果たさなくてはいけないことも含まれるようです。
「昨今の情勢を踏まえ、深い反省の上に立ち」
➤ 昨今は、近頃・最近の言い換え、
情勢は、様子・状態・状況の言い換えです。
「反省の上に立つ」の後ろには、目標などの前向きな文章が想定されます。
例5 文部科学省、厚生労働省、経済産業省による生命科学・医学系研究に関する倫理指針
「生命科学・医学系研究が~適正かつ円滑に行われるために」
➤ 円滑は便利です。
「上手く~、きちんと~、しっかりと~」の言い換えは難しいですよね。
「諸外国の制度も勘案し」
➤ 諸とは、多くの・沢山のという意味。
諸外国とは、海外の中でも比較的頻繁に登場する国。
勘案とは、様々なことを総合的に考え合わせること。
「研究計画の適否について審査を行い」
➤ 適否とは状況や条件に適しているかどうか。
ちなみに可否は賛成か反対か。
当否は物事が妥当かどうか、よいか悪いか。
このワードで冗長な表現を避けることができます。
「不利益を比較衡量する」
➤ お互いの利益を比較して決めることです。
評価するときに使えます。
「賛意を表する」
➤ 物事をよいと認めることです。
賛成や肯定の意思表示として有用です。
「文書又は電磁的方法により意見を述べなければならない」
➤ 電子メールやホームページ、磁気ディスク、CD 等のこと。表現が面白かったため抜粋しました。
引用元:
https://www.pref.nara.jp/61160.htm
https://www.city.itabashi.tokyo.jp/kusei/seisakukeiei/sengen/1038410.html
https://www.kantei.go.jp/jp/kakugikettei/2021/1014seifuseimei.html
https://www.kobe-u.ac.jp/documents/research/system/academic-norms/index_koudouseimei.pdf
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/hokabunya/kenkyujigyou/i-kenkyu/index.html#m-naAncTarget01