【福岡カタリバ】3月15-17日 合宿型カタリ場実施レポート かたもも(後編)
2022年3月15日から17日にかけて、合宿型のカタリ場が開催されました。合計25人のキャストが参加し、約490名の高校生にカタリ場を届けてくれました。
今回はPMのかたもものレポートの『後編』です。『前編』を読んでない方は是非読んでから戻ってくださると嬉しいです
9.2現場目:一人で自分と戦っている
――――― 2日目は、仲間になるということ ―――――
2日目は午前中に2現場の実施でした。前日にも準備をしてはいましたが、やはり元々のタイトスケジュールもあり、この日もバタバタと研修を終えました。上手くいかないことへの焦りと、それを表に出さずにいることに苦しさが増していました。
本当は、キャストの状態を見て…もっとコミュニケーションをとって…と、やりたい事は沢山ありましたが、それらをするには自分一人の力ではとても難しいと思い知りました。
現場に入り座談会では、沢山のキャストのみんなが参加してくれていることへの感謝を強く感じている一方で、2回目の司会ということもあって変に慣れていたからか、自分を保つことに意識が向いていたからか、1人で自分の気持ちと戦っているような状態で司会をしていました。
そんな2現場目での司会の最後の話では、自分の話をするというよりは、事前に高校生にとっていたアンケートの結果から伝えるべきだと感じた”人生の可能性”に関する話をしました。
前日の話よりは、気持ちが入っていない内容になってしまったなと感じています。
10.3現場目:情報だけで対話がうまくいくわけじゃはない
3現場目のカタリ場では、急遽キャストをすることになりました。
企画者として、授業を届ける生徒の状況は沢山知っていて、存在している悩みに対してどうするか熟考しているつもりでした。
でも、いざ話してみると思っていた以上に上手く対話することが出来ませんでした。
最後の宣言というゴールや、制限時間を意識する余り、話題が進路に偏りがちになっていました。本当に目の前の高校生に届けたかったことは、居場所だったり、不安だったりを聞いて受け止めて…対話をすることだったはずなのに…。
届けたかったものには程遠く、事前に頭で考えていたり、情報があるだけでは上手く行かないのだと痛感しました。
ただ、自分の出来なさを感じた一方で、今回参加してくれて対話を重ねているキャストのみんなの凄さを改めて実感しました。そして、自分はPMやポンプとして、キャストのみんなが対話に専念できるように場を作るという大切な役目があるのだと気付く事ができました。
気付きがありながらも、力不足を感じ、後悔が残る高校生との対話でした。
11.2日目宿泊:1日目を踏まえた提案
2日目の授業を終えてヘトヘトになって宿泊先への帰途についたものの、この日も宿泊先での研修の内容は決まっていない状態でした。
企画チームで話して出た結論が『みんなと”仲間”になりたい!』ということでした。
コアのしのちゃんも、「1日目の宿泊などを過ごしてみて、企画者は授業の反省会や準備に追われて、みんなとコミュニケーションをとったり、仲良くする機会がなく、企画者2人も仲間外れになっているように感じる…」と話してくれました。
どうすれば”仲間”になれるのか?そのプランとして立てたのは「遊ぶ」という事でした。
帰りの車のなかで、近くの大きい公園に遊びに行きたいという声も上がっていて、それらも含めて計画できれば、テーマである”冒険”に沿った内容になるのではないかと考えました。また、遊びの中で感じた人との関わりについて哲学カフェの形式で考えを深めていけば、仲間になることがどんなものなのか、みんなで考えながら仲を深めていけるのではないかと思いました。
12.2日目宿泊:切り出し方すら難しい
これらの提案を実行するためには、サブディレクターのちー坊さんに説明してチェックを貰う必要がありましたが、そんな時間もなかったため、みんなに今したい事を質問しながら、今後やっていきたい事を固めていくことでプランを実行して行けないかと考えました。
しかし、実際は「今やりたい事は何ですか?」「今の私たちの関係ってどんなものだと思いますか?」という直球の質問しか出て来ませんでした。
「直球だねぇ」と言われながらも、みんなにどう伝えたり、切り出したりすればいいのか分からず悔しい気持ちをぐっとこらえながら、みんなに質問していきました。
しかし、関係について質問したことで、
「え?もうすでに仲間じゃないの?そう思ってなかったの??」
という気持ちになったメンバーもいたように思います。また、研修の時間以外で公園に行こうとしていたため、一緒に活動できないメンバーもいて、提案は受け入れて貰えるものにはなりませんでした。
13.2日目宿泊:一人で突っ走って、頑固に突っ走って、、
その場は、急遽参加してくださった、みゃーんさんとあつしさんを知る時間を過ごし、その後は自由時間となりました。
この自由時間には、しのちゃんと私もみんなと一緒に外に出ることが出来ました。みんなと一緒に企画を作りながらも、中々対等なメンバーとしてコミュニケーションが取れていなかった分、やっとみんなと話す事が出来て、楽しさも感じる事ができました。
それでも、やはり、この後の研修で何をすべきか?その問いが重しのようにのしかかってきていました。夕ごはんを食べて、お風呂に入っている間もずーっと考え続けて、自分が今できることや、今まで考えてきたこと、そして今課題として上がっている”仲間になる”という部分をテーマにプランを立てようと考えました。
お風呂から上がって、プランを説明するために手書きではありましたが、タイムテーブルを作りました。研修開始まで残り30分。それらのプランのチェックを貰うためにちー坊さんに説明していきました。
しかし、やはりデメリットを指摘されたり、今のメンバーに本当に届けるべきものかを問われると、正直自分も正解のないものの答えをずっと探し続けている状態で、決定打はなく苦しい状況でした。
正直、もう大人に任せてしまえばどれだけ楽だろう…という気持ちもありました。
それでも、どうしても他人に任せて後悔する事が嫌で、まかせてみたらどうか?というちー坊さんの提案に対して
「わたしがやります。」
と言葉を発していました。言いながら、この発言で自分が研修をする事になる事が怖くて、不安で仕方ありませんでした。
そうして、後半の時間は私のプランを採用してもらえる事になりました。
自分の案ができること、でもそのプランに自信がないことで、怖さと不安でいっぱいの気持ちでした。
14.2日目宿泊:弱くて出来ない自分の周りに
そうして始まった研修の最初の問いは、、
「今のあなたの気持ちを教えてください。」でした。
5分間、自分の今の気持ちを付箋に書き出してみると、苦しい思いがいっぱいで、でも、それが今の自分の全てで、他の思いが全く出てきませんでした。最後に自分が発言する番になって私の口から出たのは、普段は人には言わないどうしようもない弱音でした。
「苦しい。自分の企画にも発言にも自信がない。もう正直逃げてしまいたい。自分の言い方が直球すぎる…とか、仲間って何なのか企画者自信が分からないのに求められても…といわれても、私には仲間というものが難しくて難しくて、正直、それを言われてしまったら、だって自分いままで全然人間関係上手くいってないんだから、私なんだから、そりゃそうだよなって…」
そう言って、そこで詰まって、気が付いたら泣いている自分がいました。
人前で弱音を言うことや助けを求める事が苦手な私にとって、そう言える空気を作ってくれていたみんなの存在もありますが、自分にとってその発言は大きなものでした。
人前ではほとんど泣かない自分の涙に驚愕するのと一緒に、どこか自分一人で抱えていた不安や恐怖を吐き出して、少し心が楽になっている自分がいました。
15.2日目宿泊:メンバーとの対話
言ってしまった、出してしまったことで、これからどうなるのか?
全く想像が出来ず、取り合えず、このまま皆に身を任せるしかないという気持ちでした。
そこから、皆で別れて対話する時間を取ることを提案して貰い、対話の時間に移りました。始めに、参加してくれたキャストのゴエさんがトークテーマとして「かたもも」というワードを上げて、私と話したいと言ってくれました。
▸みんなに聞いてみたらいい
ゴエさんから対話のなかで貰ったのは「みんなに聞いてみたらいいんだよ」ということでした。
仲間になれていないのは、私自身がみんなを信頼していなかったからで、この企画中かたももがキャストを信頼しているという思いは発言からあまり伝わってきていなかったと教えてくれました。そのうえで、どうすればいいのかという私に対して、「みんなが、何をしたいか?何を考えているか知ってる?」という問いを投げかけてくれました。「知らない」という私に、「今自分が何を考えているか分かる?一つだけ質問していいからあててみて」といわれました。そういわれて、ああ、そうかと自分本位な自分に改めて気付かされました。私がすべきだったことは、「今何を考えているの?」と聞く事だったのかなと思います。分からないことを勝手に自分で考えて、自分だけで答えを出している自分があったように思います。
そして、ゴエさんの対話の仕方は、何もかも自分とは違っていて、昨日の自分の発言の愚かさを改めて恥ずかしく思ったし、きちんと参加者のメンバーを尊敬して、信頼していない自分がいたんだと分かりました。
▸自分のありかた
その後、鳥取のユタラボ(豊かな暮らしラボラトリー)から来てくれていた、のんちゃんとも対話をしました。
始めは、「カタリ場で大学生が得られる事は?」とうい問から入りましたが、途中から「どうすれば人間関係が上手くいくのか?」という私のお悩み相談のようになっていきました。
その中では、自分の出し方を変えるなど、ひとと上手く付き合うためにできる事を沢山アドバイスしてくれました。私自身、プライドが邪魔してあまり出来ていなかった部分もあって、そういうバカバカしい自分でも出して行くことも大切なんだなと知ることが出来ました。
親身になって、一生懸命一緒に考えてくれるのんちゃんの姿勢にとても勇気づけられました。
16.2日目宿泊:研修のあとに
そんな対話が終わると、自然と私と話してくれるメンバーが集まってきていました。
そして、「少し重い話になってしまうのですが…」という言葉から、
自分の過去のつらかった経験を話してくれました。すると、一人一人自分の過去の苦しかった事を話してくれました。私も、自分の人間関係で苦しんできたこと、家庭のことなどを話していきました。するとそれを聞いて、また話してくれる仲間がいて…
自分から話してくれるみんなの温かさに触れて、話せば話すほど、心の距離が近づいて行くのを感じました。そして、自分と同じように苦しんでいるひとがこんなにも近くにいるのだということが、心強くて、嬉しくて、心が熱くなる自分がいました。
きっと、”仲間”になりきれなかったのは、自分がずっと抱えてきた心の壁の影響もあって、
「きっと、私は嫌われてしまうだろうから」「誰も自分の苦しみなんてわかるはずがない」という思いからどこか、壁を作って一人で生きるようになっていたように思います。
そんなことない、みんなそれぞれ苦しんで、それでも強く生きて、今この場に集っている。それが、私には嬉しくて嬉しくて、まったくプラン通りではないし、研修時間でもないのに、でも、どんなプランよりも”仲間”を感じられる時間であると思いました。
助けを求めて、弱音をはいて、それでも支えてくれて、同じように悩む仲間がいることが、何よりもかけがえのないことだと感じました。
そうして、明日の授業を控えながらも、夜遅くまで語り合いました。
そのときの私の言葉は、いつものように論理的で、ハキハキなんて全くしていなくて、つっかえつっかえの、言いかえてばかりの言葉でしたが、それでも聞いてくれる事に不思議と、自分の本音をさらけだして、取り繕わない自分がそこにいるような気がしました。
――――― 3日目、仲間がいるということ ―――――
17.朝の想い
朝、眠気は勿論ありましたが、心に昨日の夜の熱が残っていて、
最終日の授業を最高のメンバーと届けるのだという思いが沸き上がっていました。
鳥取から来ていた2人と同じ車に乗って学校に向かいました。
今まで中々話しが出来なかった分、色んな質問をして話しをしました。
18.4現場目:ステージから見るキャストの姿に
毎回の事ながら、バタバタする研修でしたが、私は取り繕うことなく落ち着けている気がしました。それは、仲間への信頼があって、どんな時でもみんなならきっと大丈夫だという気がしていたからです。
カタリ場がはじまって、その思いはもっと大きくなりました。
ステージ上から見るみんな一人一人が魅力的で、きっと良い対話をしてくれているんだろうという思いで満たされていました。信頼する事がどうすることなのかなんて定義は未だにさっぱり分かりませんが、それでも、なんとなく、みんななら大丈夫だと想えること、みんなとカタリ場を届けられることを誇らしく思える今の自分は、みんなを信頼していると言っていいのではないかと思えました。
そして、自分はそんな仲間が、より対話しやすくなるように、全体の場作りをするために、司会の役割を全力で全うしようと強く思いました。
19.4現場目:司会の言葉
「宿泊でのことを喋ってみたら?」という言葉をあつしさんから頂いて、今自分が感じていることが何なのか、言葉にしてみようと思いました。飾らずに、伝わるように言葉にするのは難しかったのですが、それでも、過去の自分の挫折、苦しみから、人間関係に自信がなく、それでも、自分の弱さを出して、苦しいと伝えたら、みなが集まってきてくれて、自分の話をしてくれて、一緒にいてくれて、仲間になってくれて、だから、自分の弱さを勇気を持って伝えてみて欲しい。と喋っていました。
正直、弱音をはいて、そんな自分に寄り添ってくれる、そんなみんなに、このカタリ場で出会えたことが本当に心からありがたくて、本当に本当に嬉しく思っています。
21.現場を終えて
今回の企画を終えて感想を述べる際、私の頭には、いつものように論理的な言葉が全く浮かばず、モヤモヤとした何かが頭や体に大量に漂っているような気分でした。
「簡単には言葉に出来ないというのが、全てなのではないか」
という言葉を貰って、確かにそうだと気付かされました。頭で考えるだけではない、感情やそれ以上の何か、それらが理解できないし、処理できなくて、それでもそれはとても大切なもののように感じました。
最後の挨拶で、そんな私の口から出たのは、
「みなさん、この後もっとお話ししませんか?」という言葉でした。
「分からないなら聞けばいい」「みんなに訪ねてみよう」「みんなを頼ってみよう」
そんな事をずっとずっと求められ、投げかけられた3日間の最後の一言として、私に取ってはとても重い一言でした。
ある日学校にいったら誰も喋ってくれなくなった、中1の春から9年。
私のなかで、人を信頼して、仲良くなろうと、本気で向き合おうとできた、一言だったと思います。
22.さあ、一緒に、冒険に出よう!!!!
この機会を頂けたことで、自分自身言葉には出来ない成長をさせてらって、自分一人では作れない授業を届ける事ができて、ずっと自分が課題と感じていた、人との関わりについても、一人では決してたどり着くことが出来なかった大切な関係をもつことに繋がりました。
かたもも自身、まだまだ成長途中で、迷って、後悔して、周りに迷惑をかけてしまうことも沢山ある思いますが、是非、一緒にカタリ場を届けたり、何でもないことでも一緒に話したり、笑ったり、そんなみんなとこれからも一緒に居られたらと思っています。
本当にカタリ場を通して、出会えたことが、心の底から嬉しいです。
これからも、私とカタリ場のみんなと一緒に、カタリ場や色んな”冒険”に出てみませんか?
さあ、一緒に、冒険に出よう!!!!!!!!
【完】