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Coffee story エピソード1【アメリカン】

【ゴルゴ13】③

慌てて雑誌を拾い、気づかないふりをしようとコーヒーを飲んでいると、二人は店に入って来た。

もう向き合うしかないなとなぜか腹を据え、身構えをして二人を迎えた。

ゴルゴよ、わたしにお前の冷静さを与えてくれ。ハードボイルドにいかせてくれ。

二人は並んで立ち、真面目な顔でわたしを見下ろした。

「なんだ?どうした?二人して今日は?」

わたしは、ゴルゴが標的と対峙する場面を思い出してそのように落ち着いたトーンで言ってみた。内心は、なに?なに?なにがどうなってお前らがいるんだ?とドキドキしていた。

二人は、一度お互い顔を見合わせて口を開いた。

「お父さん。話があるんだ。許して欲しいことがあるんだ。」

次男が初めに口を開き言った言葉が、漫画の吹き出しのように見えてきた。

わたしは、一瞬考えて席を立ち、カウンターに行ってコーヒーを3杯頼んで奥のガラス張りの席に二人を導いた。さすがに店の入り口で、家庭の一大事をさらすわけにはいかないだろうと思い、いつもは、行かない窓側の奥の席に移動した。

カウンターのアラサーは、わたしたちの行く手をワイドショーのレポターなみに興味津々の顔つきで見送っていた。

幸いにもゴシップ好きの主婦たちのグループは、家路に着いたようでいなかったので、ひとまずは、ゆっくりとこの二人に向き合う心構えが出来た。ただならぬ二人の様子から、周りに聞かれちゃ困るだろうとこの席に来たのだ。

西に傾きかけた日差しを背に向けてわたしは座ると、「さあ、どういう事か話してみなさい。」と今度は、ゴルゴが依頼者と向き合う時のように落ち着いた雰囲気を装った。

さあ、どんな依頼だ?何をやらせるんだ?どんなプランを立てさせるんだ?

「お父さん。許して欲しいんだ。兄貴が死んでもう三年近くなるだろう。」

「ああ。もうそんなになるのか。咲さんも寂しいだろう。そろそろ息子のことは、忘れて新しく幸せを見つけてくれないだろうか。」

ああ!とうとうこのコトバをいう羽目になってしまった。

分かっていたが、切り出すタイミングと自分の気持ちがよくつかめず避けていたコトバを遂に言ってしまった。

きっと嫁は、好きな男が出来て言い出しにくく、次男に相談して今日ここに来たに違いない。
喜んで送り出してやろう。
嫁の幸せを心から願いながら。

ガラス張りの窓辺には、夕焼けのオレンジ色の光が溢れていて嫁を照らしていた。まぶしい嫁が、一層美しく輝いて見えた。

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