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Coffee story エピソード1【アメリカン】

【ゴルゴ13】④

本当なら嫁の隣には、長男がいて、小さな孫を嫁が抱き、わたしも目を細めてその孫を関根勤のごとく溺愛していたであろう。自分の子ども達には、忙しさにかまけて構ってあげられなかった罪ほろぼしにその孫をきっと溺愛するようになるだろう。世の中ジジイは、大体そんな感じと思う。

長男が死んで、まだまだ女盛りの子どものいない嫁を、今さら昔の日本じゃあるまいし、いつまでも家に縛りつけておくわけにもいかない。

とうとうこの日がやってきたか。他人になれば、嫁と会うこともないだろう。
妻の若かりし頃に似ている嫁に会うこともないだろう。

いや、長男の法事には来るのか?会えるのか?まぁ、新しい男の手前それも無いかもしれないな。

「…父さん、お父さん。すみません。僕たちをいっしょにならせて下さい。お願いします。」

「お義父さん。ごめんなさい。お願いします。」

え!ええ〜⁈

「いま、今なんて言った?いっしょに…って……はぁ?…え!お前たち。」

ええ〜!

ハードボイルド感は、一気に崩れた。ハードボイルドなんて日常には存在しないんだ。いろんな感情が入り乱れて振り回されて毎日生きているんだ。ハードボイルドなんてのは、やはり漫画の中だけなんだ。ゴルゴ感は、ゴルゴでしかないんだ。

で、わたしは、吉本新喜劇の芸人が椅子からずり落ちそうになるくらいの驚きをぐっと我慢して二人をまじまじと交互に見て言った。

「お前たち、何がどうなってそうなったんだ。」

「実は、俺たちは、兄貴が死んでニ年経ったくらいから………。」

んん?何が何だかわからなかったが、とにかく嫁は、またこれからもうちの嫁のままなんだ。
おお、なんということだ。複雑だが、喜んでいいのだ。

「お父さん。それから。…あの…咲のお腹の中には僕たちの子どもが……」

ええええ〜!な、なんだってぇぇ!

わたしは、目を閉じて上を見あげて、次男たちの話と今の状況を自分に染み込ませるように納得させて言った。

「そうか。俺もジイさんになるのか。おめでとう。咲さん。これからもよろしく頼むな。」
嫁の眼は、涙でキラキラしていた。

しかし、このわたしが、ジイさんか…。ジイさんか…。Gさんか…。

G! G!

ゴルゴじゃないか!

よし、これからは、関根勤のようなG(ジイさん)になろう。

しかし、これでわかった。わたしの息子は、二人ともマザコンだったのだ。
いや、3人ともマザコンだったのだ。
妻を、死んだ妻を本能的に求めていたのだ。

夕日は、すっかり傾いてマジックアワーの光が『カフェRe-Q』に溢れていた。
他のテーブルの片づけにやって来た店員がわたしの顔を見てニッコリ微笑んだ。

次に来た時は、彼女と話してみるか。きっと彼女も聞きたいだろうから。

なにしろ、わたしは、ゴルゴだからな。


【アメリカン】WEDGWOOD サムライ

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