Coffee story エピソード2 【ローズヒップ】
WEDGWOOD ワイルドストロベリー
通りに面したそこは、上から下まで大きなガラスで作られているので午前中は、キラキラとしている。わたしが働いている場所。
『カフェRe-Q』
勤めてもうかれこれ8年になるが、お店で人気のカレーを家で作ったことがない。店でのカレー作りは、率先してやるので、レシピもだいぶ覚えてきたから、そろそろ家でも作ろうと思うが、なかなか実行に至らない。いつか絶対作ってみよう。
私は、夕方からバイトの学生が来るまでの勤務で、朝から店の開店を一人でこなしている。いつものルーティンをテキパキとやりながら余裕で開店を迎えているが、たまに調子が狂う時がある。
いつもビートルズを流しているが、たまに今時のジャパニーズポップスの選局になっていてその時に朝のルーティンが変わり少しだけイラっとする時がある。
すぐにまた、いつものビートルズにしてコーヒーのアロマを店内に漂わすのだ。多分、日曜のアルバイトの学生が、チャンネルを変えているみたいだ。やはり若い子には、ビートルズは、古臭いのかな?
今日もコーヒーの香りと、ビートルズの心地よい音楽で『カフェRe-Q』の1日が始まる。
8年も働いていると何人かの顔見知りができてくる。
いつもビックコミックを読みにくるゴルゴさん。月曜日にランチしにくるママさんの集い。そして来る時は、決まって同じ場所に座るストロベリーさん。
ストロベリーさんは、年は私よりも上っぽいが、まだ確認していない。来た時はいつもローズヒップを注文する。
あまり数が出ないが、夏場は、冷やしてアイスローズヒップにすると、爽やかでけっこう美味しい。鮮やかな濃いピンク色のお茶でガラスのティーポットにティーバックとお湯を注いで渡す。茶葉がゆっくり開いてピンクに染まる様を見ながら時を楽しむ感じのお茶だ。だから時間つぶしには最高のメニューなのだ。
そして、またまたオーナーの心意気なのか高かめのカップで、
WEDGWOOD 『ワイルドストロベリー』なのだ。
だから私は、彼女をストロベリーさんとあだ名をつけている。
しかも彼女は、嘘みたいだがビートルズの「ストロベリー・フィールズ・フォーエバー」が好きと聞いたことがあるのだ。
とある月曜に開店前に来ていて私が中で待つように勧めて開店準備の有線放送を付けると「ストロベリー・フィールズ・フォーエバー」が流れ出した。
その時に彼女から、この曲が好きなんですと話しかけられ、それきっかけに少し身の上話を聞くことになったのだ。
その日は、たまたま客がいなくて二人だけだったので、けっこう長く話をしたのだった。
ストロベリーさんは、昔付き合っていた人がいて仕事でイギリスに行ったらしい。学生時代からの友人でその当時サークルでビートルズの楽曲に触れていたらしく、彼に色々教えてもらっていたらしい。その時の二人の思い出の曲が「ストロベリー・フィールズ・フォーエバー」だそうだ。
今日あたりまた、ストロベリーさんが来店しそうだが、その彼とはどうなっているのかまだ聞いていないから尋ねてみよう。
カフェにいると常連さんの中でも気の合う人とは、お互いの私生活も語り合えるようになるから面白い。人間観察大好きな私には、人の人生をリアルに聞けるという趣味と実益を兼ねている職場なのだ。ここ『カフェRe-Q』は。
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