silver story#71
思い残すことなく写真を撮ったので私は、三人のところへ向かった。薄いシャンパンゴールドの膜の中に入っていくような感覚だった。
「ユキサン、これからどうしますか?一度ホテルに戻りますか?ホテルに泊まりますか?それともこのまま光一さんと過ごしますか?
ホテルには私が連絡しますよ。」
「アッ!エー、アリサ、ドウシマスカ?ホテルイキマスカ?」
「ユキ、アリサちゃんは疲れてるだろうからこのままここに居ないか?私もキミらともっと話したい。どうだろうか?
沙耶、ホテルに連絡してくれないか?」
アリサちゃんはニコニコ笑いながら光一さんの手を握ってゆらゆら揺らしていた。まるで久しぶりにおじいちゃんに会いに来たように
親しげに笑っていた。それに合わせて光一さんも素敵な笑顔で応えていた。
「サヤ、オネガイシマス。パパト、ヨル イッショニイタイデス。」
「分かりました。じゃあ、私、荷物取りに行って来ますね。今日はゆっくり光一さんと過ごしてください。また、戻って来ますからね。」
「沙耶ありがとう。よろしく頼む。」
「サヤ、テリマカシィ。」
「サマ サマ。」
アリサちゃんが両手を合わせてお辞儀したので私もバリ風の挨拶で返した。そしてにっこり笑い合った。
「じゃあ行って来ます。」
私は急ぎホテルへ荷物を取りに向かった。
Soleilをでると外はもうすっかり陽が落ちて夜になりかけていた。
美しかったのだろう夕焼けの残りと空の残りがだんだんと濃い色になってグラデーションをなしていた。バリの空とは違ってすごく低く感じた。
都会の建物が空の面積を奪っているからだ。
バリの空とお母様を思い出しながら私は、ホテルへ急いだ。
今頃三人で何を話してるんだろう。
ユキさんにとって忘れられない夜になるだろう。私がバリのあの家で過ごした夜と同じくらい、忘れられない夜になるだろう。
「ね、お母様。」
思わず声に出した。
#小説 #バリの話
#あるカメラマンの話
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