Coffee story エピソード1 【アメリカン】
【ゴルゴ13】
家の近くにある商業施設の中に行きつけの喫茶店がある。カフェとか洒落た名前がついてるが所詮は、喫茶店。ガラス張りの店内は、眩しいすぎて年寄りの目にはちとキツく私は、入り口近くの一人用のテーブルに座るようにしている。毎週月曜日と、10日、25日には必ずここに来て、漫画を読むようにしている。
最近、やたら店員が私のことを気にしているような気がするが、こっちはちゃんと金を払ってアメリカンとやらを注文しているのだから文句を言われる筋合いはない。
店の中の若い奴らに違和感を与えないように、すぐに立ち去れるよう入り口近くに座るという配慮もちゃんとしているのだから。
今日は、10日の月曜日なのでいつものように、一階の本屋でビックコミックを買って、ここ『カフェRe-Q』に来てしまった。
ある程度の時間を潰すためにここに来るようになってもうすぐ三年になろうとしている。
初めは好きで来ていたわけではないが、こうも続けるとそれはもう習慣になり行かないと、という使命感さえ生じてきたこの頃だ。
「常連さん」多分、店員は、常連さんと私を位置づけしてそれなりの対応をしてくれるようになってきた。
さっき、いつもの、世間で言うアラサーらしき古株の店員からそんな対応で、アメリカンを渡されたが不覚にも雑誌を落としてしまいひと言、ふた言話をすることになった。やはり彼女は、私のこの訪れを不可思議に思っていたようで、矢継ぎ早に聞いてきて、思わず口にしてしまった。
嫁のことを。
「嫁がね。」と言って、あ、しまったと思いこれ以上聞かれるのはまずいからそそくさと席に来たのである。
今日は月曜日、毎回月曜日には、何人かの主婦たちがペチャクチャ飽きもせず井戸端会議をしている場面に出くわす。ん⁈喫茶店だから井戸端会議とは言わないのか?ま、彼女らも何らかの理由でここで過ごしているのだろう。いつも見るメンバーだから、彼女らも常連さんなのだろう。
私は、コクや渋みなどは、わからないがコーヒーの香りが好きでここで過ごしているが、1、2時間を過ごすには、ここのアメリカンは、量が多くてちょうど良いのだ。普通のコーヒーをお湯で薄めているコーヒー。最近知ったがアメリカン用の豆がちゃんとあるらしいが、量が多いのと300円という安さで納得して飲んでいる。一度、普通のを頼んだがもう薄いのに慣れていたからか苦味が強くやはり薄いアメリカンでいいと思った。
毎週月曜日発売のビックコミックスピリッツと、毎月10日と25日発売のビックコミック。確かに決まって発売日当日に喫茶店で漫画を読んでる年寄りなんて私しかいないだろうし、それもこんなに長く続けているから、店員もいろいろ聞きたいだろう。
今度、少し話してみるか。あの店員と。
漫画を読むと、これまた続きが気になり途中でやめようかと思ったがやはり習慣になった。今頃の漫画は、時の大臣も愛読するくらいだからなかなか馬鹿にしたものでもなく風刺の効いたものもありテレビの評論家より鋭い感覚で時事ネタを漫画に織り込んで書いているのでなかなか面白い。
中には相変わらずの男漫画特有なヤツもある。一杯のアメリカンで一冊をゆっくり読んでいるとだいたい1時間くらいは経っているので読み終わってこの建物の端から端まで見て帰ると丁度いい頃合いで家に着くのだ。
月曜日に必ずやって来る時間をやり過ごすために。あの人がやって来ることをやり過ごすために。
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