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Silver Story #68
アリサちゃんが目覚めるまで3人でこの場所にいることが不思議と心地よく懐かしさまで感じるなんて思いもよらなかった。
「キミがユキか?
お母さんから聞いているのか? 日本語はわかるのか?」
「ハイ。スコシワカリマス。アナタガ「パパ」ナノデスネ。」
「パパと呼んでくれるのか?
こんな私を キミの生まれたことも知らなかった私を…」
「ママカラキイタトキハ オドロキマシタ。デモワタシハ ハンブンニホンジントハ チイサナコロカラ イワレテイタノデ ダイジョウブデシタ。デモ ホントウニ 「パパ」ニ アエルトワカッテオドロキマシタ。」
「私も本当に驚いたよ。まさか沙耶が君たちと一緒にいて一緒に戻ってくるなんて……う、う、う、本当に……う、う、う……う、う、う」
「パパ、ナカナイデ ホントウニ
ウレシイコトダカラ。」
初めて交わす親子の会話。
静かにあったかい時間が流れている。
私は、感無量で自然と涙が浮かんでいた。
お母様、そうお母様がいたら、お母様こそ光一さんに会いたかっただろうに。
あ、そうか!さっきアリサちゃんを通して、もう光一さんに会ったのか。
でもユキさんと光一さんが話すところは見れてないのだからやっぱりここに居たかっただろう。今度は必ず四人で会えるようになることを強く願う。
二人は三十数年もの間を瞬く間に埋めているようで、スポットライトのせいか、そこだけ薄いドームの中にいるように見える。
私は少し離れて、とても丁寧に写真の設定をしてその瞬間を残した。
カシャ、カシャ、カシャ。
シャッター音が仄暗いギャラリーに響く。
写っていて欲しい。そこにお母様の残像でもいいから写っていて欲しい。
オカルトちっくになるがバリの魔力とも言えるなんらかの力が働いているのだから。
写っているかも。
「マ…マ」
アリサちゃんが目覚めた。
「アリサ、アパカ バイバイ サジャ?アク ハウァ ティア」
「ティダ、アパ、アパ。」
「アリサちゃん大丈夫?よかった〜。」
「サヤ、ダイジョウブ。ネネッ イッタ。ダイジョウブ」
それからアリサちゃんはユキさんに一生懸命話してお母様つまりアリサちゃんのおばあちゃんから言われたことを説明していた。
ユキさんは驚いた顔をしたり頷いたりしながらアリサちゃんの頭を撫でていた。
そしてこちらに向き直してこう話してくれた。
#バリの話 #あるカメラマンの話 #小説