Silver Story #70
「パパ、サヤ、アリサノハナシデス。ネネッ クウコウデ アリサニイッタソウデス。サヤノイエニツイタラ シロイフクニ キガエテ ネムリナサイ ト。」
「あの服ってあの祀りの時のあの衣装なのよね。」
「ソウデス。アノフクデス。ママ、アリサノカバンニ イレテイタミタイ。」
「それじゃ、さっきお母様に見えたのはやっぱりバリの神の力だったんだ!」
「沙耶、いったいなんのことなんだ?どうしてさっきアリーシャがいたんだ?バリの神の力ってなんのことなんだ?」
「光一さん。私もとても不思議で信じられないんだけど、私がユキさんの村に着いた時、怪我をして気を失ったところをユキさんたちが助けてくれたの。それからユキさんの家に連れて行ってもらってこうなったの。
私の写真を彼女たちに見せた時、光一さんの写真が残ってて、それをお母様が見て二人の繋がりがわかって今ここにいるのよ。
それもどれも偶然じゃなくバリの神様の力なんじゃないかなと本当に思うのよ。
光一さんも思うでしょう?
行方不明の私が無事でそして、光一さんの昔の大切な人や、子ども、しかも孫まで連れて帰って来るって。そんなこと普通じゃありえないじゃない?」
「確かにそんな偶然があるなんか思えない。しかも君が彼女たちに出会った理由が私がアリーシャと出会った時と同じで、怪我をして助けられたなんて。本当にありえない。」
「あの村のお祀りに行かなかったらこんな風に出会うこともなかったかもしれないと思うの。またゆっくり詳しくバリの事は話すから、光一さん。いまは、アリサちゃんとユキさんのところに行ってあげて。」
「そうだね。アリサちゃんか。私の孫なんだよね。そしてユキは私の娘。アリーシャと私の、、、、。」
光一さんはも声も出ないくらい泣いていた。
仄暗いギャラリーの一角だけシャンパンゴールドの光に包まれている。三人が抱き合って微笑んで涙していた。今まで存在さえ知らなかった長い長い時間が嘘のように見えるくらいだ。
光一さんはバリの言葉がわかるようでアリサちゃんとも話していた。光一さんのあんな嬉しそうな顔は今まで見たことがない。
私はカメラを向けて三人のその時を残そうと思いシャッターを切っていた。
この瞬間をお母様に見せたい!
そう思って何度も何度もシャッターを切っていた。
カシャッ
カシャッ
カシャッ
シャッターの音が鳴るたびに3人の絆をしっかりと繋いでいく、
そんな使命感さえ感じていた。
#あるカメラマンの話
#バリの話
#小説
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