見出し画像

Milky Way

Chapter 2 マダム猫
p10

ふと横を見ると 一匹の猫が いた。ここは自分の家だといわんばかりに くつろいでいた。

僕たちが降りたことなんかまったく気にとめる様子もなかった。その猫は まるでリゾート地にいるように初夏の太陽をからだいっぱいに浴びて伸びをしたり 耳の後ろをかいたり ほんとにくつろいでいた。

猫のくせに ベージュの体に茶色の斑点がまんべんなくあって まるで ヒョウ柄のマントを着ているようだった。
ゴージャスなマダムのような品も漂わせていいた。

その猫に目を奪われていると彼女はスーッと駅から歩きだした。二つに別れた道を戸惑いもなく片方に向かって歩きだした。

それと同時にあのマダム猫も歩きだした。

僕は急いでマダム猫を追い抜くように彼女の後をついていった。

その道は 細くやはり両側は緑の木々が壁のようにきれいに並んでいて 自然とアーチができるように 生い茂っていた。

空をところどころのぞかせていて 見上げると太陽がキラキラとミラーボールの光りのように目に眩しく見えてていた。

マダム猫はまるで道案内のように僕と彼女を追い抜いてズンズンと歩いて行った。

ピンと立てたしっぽが歩くたびにゆれて メトロノームのように軽快なリズムを作っていた。



どれくらい歩いたのか とても気持ちがよくますます僕の体は軽くなるような気がしてきた。

ゆっくりとカーブをした道を曲がったところで 僕は目をうたぐってしまった。

p11

『あっ あの垣根』
思わず 声が出た。
あの低い押し戸
夢にでてきた 庵寺だった。  

いつの間にか猫は、僕らの前にいて 垣根の下をくぐって 平然とその寺に入って行った。  

『ね 驚いたでしょ?私も初めてここ見つけた時はびっくりしたの。だって、あのスケッチブックに描いていた緑のカーテンが 今通ってきた道そっくりだったから
そして
あなたが 列車にいた時 思ったの。  

私の夢の中にでてくる あのもやもやの中の人は あなた だって。
なんだか わからないけど そう感じて
とても うれしくなったのよ』  

彼女は関を切ったように 話しつづけた。  

『あの猫は ハンさんっていって このお寺に
いつの間にか住み着いていて 私が あの駅に降りた時 .やっぱり今日みたいに 先にたって ここまで案内してくれたのよ。  

それに今日は 特別な日。
あなたが来るのは きっと なにかしら 決まっていたのかもしれないわね』  

僕は彼女の瞳をじっと見つめてしまっていた。

彼女の茶色の瞳はいたずらっぽく、くるくると色をかえて 見えた。  

彼女の目に映りこんでいる周りの緑のせいなのかもしれない。  

彼女は言い終わると
常連客のように 押し戸を開いて 僕を中に入れてくれた。  

あの梅の木も やっぱりそこにあった。  


『なんなんだ』  

今から何が始まるんだ。  

体中の血液が逆流するように ジンジンとつま先から感じてきて いちどブルッと震えてしまった。  

顔が熱くなっていくのを感じていた。

#創作大賞2024 #ファンタジー小説部門

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?