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Girlfriend
Girlfriend 〜chapter1
時計の針が 夜中12を過ぎた時、携帯が鳴った 。
電話は、 あの子からだった。
俺はくわえたばかりのタバコに火もつけずに 電話にでた 。
「なに?」
「…別に なんでもない。声 …聞きたかったから。」
その声は、いつもの透き通った心地好い響きとは違い 、ザラザラとかすれて とてもか細く聞き取れないくらいだった。
「どうした? 泣いてるのか?」
「………………。」
電話のむこうからは、明らかに泣いてるあの子の 息遣いが聞こえてきた。
「今 どこ?すぐ行くから。」
「…あいつの…部屋。」
振り絞るように出てきた言葉を聞いた 俺は、くわえたままのタバコに 火をつけて 深く息を吸い込んだ。
「あいつは?」
「いない…。どこにいるか…わかんない。」
「とにかく 行くから待ってろ。」
俺は、そう言うと、 彼女の返事も聞かずに車の鍵を握り、シンシンと冷えだした外に飛び出して行った。
あの子は俺の親友の彼女だった 。
半年前から 俺の時間にふらっと入り込んできた 。
ガラスのように透き通った目をした女だった 。
あいつの彼女だったが、なぜかほっとけなくて、 こうして電話があると決まって車を走らせていた。
「あいつの彼女なのに。」
俺は、自分に言い聞かせるように 心で叫んでみた。
星が、いつもより青白く弱々しく光る夜だった。
車に乗り込むと、少し落ち着きを取り戻すように タバコに火をつけた 。
Radioからは、誰かがリクエストしたんだろうか 、時期ハズレの曲が 流れてきた。
プリテンダーズの『2000Miles』だった 。
クリッシーの声は、熱くなった俺の心を包み込むように入ってきて少しずつ 冷静になってきた。
「何やってんだろう…。」
吐き捨てるようにつぶやくと、車をあの子の待つ場所へ向かわせて行った。
闇が広がりその先に、何があるのかわからなかった。
何かを求めて突き進むのか 、あきらめるために進むのか 。
こんなこと繰り返して何になるんだろう 。
頭のなかを何度もこの言葉が浮かんできていた 。
ガラスのように透き通った目を、曇らせたくなかった。
ただ、それだけだった。
親友の家に着くと、彼女は すでに外にいて、小さく座りこんでいた。捨てられた子猫のように、小さく膝を抱えて座っていた 。
「来てくれたんだね。」
俺の車を見つけると、すーっと立ち上がって、 慣れた手つきで、助手席のドアを開け、まっすぐに俺を見つめてささやいた。
その瞳は、 クリスタルのようにキラキラと輝いているように見えた 。
そう思いたかった 。
俺を見つめているからと、そう思いたかった。
闇は、その色を、深く深く塗り重ねていった。
二人を迎えいれることを歓迎してくれるように。