Coffee story エピソード3 【ホットミルク】 【グリーンちゃん】④
店員の彼女は、ゆっくりと歌うように滑らかにその言い伝えを話してくれた。
それは、こんな内容だった。
「晴れた日の夜
星が夜空じゅうにちりばめられていて、天の川がその池の水面に映しだされた後、澄んだ空気のままで夜から明け方にかけてすごく冷えこんで その池が朝靄に包まれた時、その中に真実が現れるらしい。
そこにいる人の知りたい真実 。
その人にかかわる真実。
だから人によって 見えるものが違うらしい。」
私が一言一句聞き逃さないように、書き取る私に合わせてもう一度ゆっくり話してくれた。
書いた後もう一度それを見たら
パッと目の前にその風景が広がって見えたのでビックリした。
そしてどうしてもそこに行かなきゃという衝動に駆られて、今すぐにでも行きたくなってしまい、思わず目の前のファイヤーキングのカップを両手で握りしめて程よい温度のミルクをぐっと飲み干してしまった。その瞬間、からだの中がほわーっと熱くなり衝動が少しずつ収まっていってくれた。
「あらあら、一気に飲み干してしまったのね。行きたいんでしょう?そこに。
そのスケッチの緑色のページの意味が、あなたのよく見るという夢の真実が、もしかしたらわかるかも知れないもんね。
だって今年は、ちょうどその奇跡が起こる年だから。74年に一度の奇跡の時だから。
あなたにこの話をするのも、なんだか必然だったのかも知れないわね。だってさ、こんなにお客が来ない日なんて滅多にないんだもの。」
そう言って彼女は、飲み干した、グリーンのカップを持っていつものポジションに戻って行った。
カウンターの中から、「後で行き先教えるね」と口を動かしてメモを取るフリをしてにっこり微笑んでくれた。
私は、みどり色のページを開いて見つめながらこれがヒントになっているんだと改めて思い、これから私に何が起こるんだろう、何が待ってるんだろうと少し身震いしてしまった。
かなりの時間 二人っきりだったんだ。
ガラス張りの店内は、マジックアワーのオレンジ色に包まれていた。
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