キャリアコンサルティング技能検定2級対策「キャリア理論」
参考図書:
特性・因子理論(パースンズ)
1.賢い職業選択のステップ
① 自分自身、自己の適正、能力、興味、希望、資質、限界、その他の諸特性を明確に理解する
② 様々な職業や仕事に関して、その仕事に求められる資質、成功の条件、有利な点と不利な点、報酬、就職の機会、将来性などについての知識を得る
③ 上記の2つの関係について合理的な推論を行いマッチングする
2. 3ステップを達成するための方法
① 個人資料の記述
② 自己分析
③ 選択と意思決定
④ カウンセラーによる分析
⑤ 職業についての外観と展望
⑥ 推論とアドバイス
⑦ 選択した職業への適合のための援助
3. マッチングの理論
人間には個人差があり、職業には職業差がある。両者をうまく合致することが可能であり、そのことが良い職業選択や職業適応である
4.批判
① オスねじとメスねじがぴったりと合う適合関係をあまりにも重視する(ペグの理論
② 人と職業との関係を、ある時点で固定的、静的にとらえ過ぎている
③ 現実の職業選択は、必ずしも合理的な推論」によって行われるとは限らず、情緒的、無意識的というような「合理的」とはいいがたい要素によって左右されていることに対する配慮が足りない
への影響
2.意思決定・期待理論
(1)意思決定の要因を重視する
① 期待理論(ヴルーム)
行為を起こす力(F)=期待(E)× ∑ (誘意性(V)×道具性(I))
・モチベーションは、起こりうる可能性(期待)と、それが起こった際の一時的な意義(誘意性)と二次的な意義(道具性)の積の総和によって決まる
(2)意思決定のプロセスを重視する
① ジェラット
・選択可能な行為、行為の結果、結果の確率を資料に基づいて予測
・結果の望ましさを評価
・評価基準に従って選択
② 認知的不協和理論の応用(ヒルトン)
前提、環境からの入力→不協和の確認
不協和弱い→試みのプランをそのまま受け入れ前提との調整を行う
OR
不協和強い→前提を検討
変えられる→前提を変えるか、新しい前提を作る付け加える→「不協和の確認」へ
OR
変えられない→ほかの職業について調べる⇔可能とみられる役割の蓄え
↓ ↑(好まない場合)
試みのプランを選ぶ
(好ましいプラン)→「不協和の確認」へ
意思決定や期待理論は自己効力やキャリアの不決断、意思決定メカニズムの精緻化などの研究へと発展した
(3)社会的学習理論
① クランボルツ
職業選択行動は、学習の結果であって、過去に起こった出来事と将来起こるかもしれない出来事を結び付けて解釈した結果
・職業選択行動のプロセスに影響を及ぼす要因
1) 生得的に持っている資質や能力(人種、性、身体条件、性格、知能など)
2) 環境条件や出来事(求人数、雇用・訓練機会、企業の採用、労働条件、労働市場など)
3) 学習経験(個人がやってみて得られた経験(道具的経験)、観察により得られた経験(連合的経験))
4) 課題解決スキル(問題解決能力、労働習慣、精神的構えなど)
・「解決できる方法があるのにそれを学習しない」(未学習)、「誤った方法を学習している」(誤学習)、「能力がないと思い込んで苦痛や不安を感じている」(体験の回避)に対処することで職業選択の効果を高めようとするのが社会的学習理論
2.構造理論
(1)心理学的構造理論
① 精神力動論
a. フロイト
・人間を基本的に動かしているのは自我ではなく、無意識である
・無意識の力は性的エネルギーである
・人間の行動は無意識(イド)、自我、超自我の葛藤の結果
・行動パターンは幼少期の親との関係により規定される
b. ブリルの精神力動論
・職業選択は「快楽主義」と「現実原則」を結び付け、妥協を図る行動領域
・「昇華」により職業選択を説明
c. ボーディンの精神力動論
・複雑な成人の職業選択活動は、単純な幼児期の活動と全く同じ本能的な源泉を含んでいる
・乳幼児期における欲求に向かうタイプが、青年期の職業選択行動と対応している
d. 新フロイト学派
無意識的な力よりも自我の働きを重視し、人間を本能的な存在よりも社会的な存在と考える
(2)ローの理論
・精神力動論をベースにしながら、パーソナリティ特性と職業分類とを関連付けた
・パーソナリティの個人差は、親の養育態度によってもたらされる
・パーソナリティの個人差は、個人が遭遇する人的、動的環境との相互作用に依存している
・親の養育態度とパーソナリティの個人差の関係
a. 情緒的:過保護と過剰要求の両極端があり、もし条件がかなえば報酬の良い職業(例えば、芸術関係など)を志向する
b. 拒否型:拒否噛む関心の連続により、人間関係を志向せずモノ志向となる。他人との関係は金銭的満足が基本。科学的、機械的職業を志向する。
c. 受容型:家族の台頭の一員として、愛情をもって受容される。人間及び人間以外の両方についてバランスのとれた職業を志向する
・欲求の満足の有り様と職業選択の関係についても考察し、幼児期における欲求の強さ、欲求と満足とのズレ、満足の価値などがその後の職業に影響することを指摘した。
(3)ホランドの理論
・職業選択やキャリア発達の要因として個人の行動のスタイルや人格類型に着目する
・理論の格子
① 現代の文化圏では、多くの人々のパーソナリティは6つの類型に分けられる(現実的、研究的、芸術的、社会的、企業的、習慣的)
② 生活する環境も上記の6つに分けられる
③ 個人は、自分の役割や能力を発揮し、価値観や態度を表現し、かつ自分にあった役割や課題を引き受けさせてくれる環境を探し求めている
④ 個人の行動は、その人のパーソナリティと環境の特徴との相互作用によって決定される
2.社会学的構造理論
(1)環境の次元
・ブロンフェンブレナーの4分類
① ミクロシステム:家族に代表されるようにその構成員の活動、役割、直接的な関係による社会的、対人的影響(例:親の職業を子が継承する)
② メゾシステム:家庭、学校、職場などの複数のミクロシステムからの影響が相互に関係しながら個人に及ぼす影響。(例:学生がアルバイトをすることによって家庭や学校のみならず職場の影響を受ける)
③ エクソシステム:所属する環境とは別のミクロシステムで起こっていることが、間接的に他の構成員に及ぼす影響。(例:親の職業が、間接的に子供の価値観などに影響を及ぼす)
④ マクロシステム:文化、国家、社会の規範、イデオロギー、性役割、求められる人間像などが個人に及ぼす影響。(例:世代間の行動様式や職業意識の違いなど)
(2)家族の影響
(3)機会遭遇理論
個人があることを選択できるかどうかを規定する主な要因は、機会に出会うかどうかであるとする
① バンデュラ
偶然は予測されずに起こるが、一旦起こると予定されていたことと同じように、通常の連鎖の中に組み込まれて、人間の選択行動に影響を与える
② ロバーツ
若者は選択の自由を持っているとか、自分の好みに基づいて職業を選択できると言う考えは、単なる思い込みに過ぎない。多くの若者が入職する際の方法を支配するのは、選択ではなく、機会である
3.職業発達理論
(1)ギンバーグの理論
① 職業選択は、一般に10年以上もかかる発達的プロセス
② 非可逆的
③ 個人の欲求と現実の妥協(最適化)をもって終わる
・職業発達のプロセス
① 空想期 (11歳以下)
② 試行期 (11~17歳):興味、能力、価値、移行の各段階
③ 現実期(17~20歳代初期):探索、結晶、特殊化
・職業選択は、生涯にわたる意思決定のプロセスである。それゆえ、個人は、変化するキャリア目標と職業の世界の現実との適合をどのようにする
か、繰り返し再評価することになる
(2)スーパーの理論
・ビューラーの生活段階、ハビガーストの発達段階、ミラーとフォームの仕事経歴から見た人生段階、ギンズバーグの発達理論などを整理した
・職業発達の12の命題
① 常に前進する継続的な、一般に後もどりのできない過程
② 順次性があり、類型化でき、予測することができる1つの過程
③ ダイナミックな過程
④ 自己概念は、青年期以前に形成され始め、青年期にさらに明確となり、青年期に職業的用語に置き換えられる
⑤ 現実的要因(個人特性や社会)は、青年期前期から成人へと年齢が増すにつれて職業選択上ますます重要な役割を果たすようになる
⑥ 親、またはそれに代わる人との同一視は、適切な役割の発達、相互に一貫性と調和のある役割取得に影響を与え、職業計画やその結果という点から行う個人の役割の意味付けの仕方とも関連性がある
⑦ 個人の、1つの職業水準から他の水準への垂直移動の方向と率は、知能、親の社会経済的水準、地位欲求、価値、興味、対人関係の技術、経済界における需要と供給の状態と関係がある
⑧ 個人が入る職業の分野は、興味、価値、要求、親またはそれに代わる人の役割モデルとの同一視、利用する地域社会の資源、教育的背景の水準と質、地域社会の職業構造、職業動向、職業に対する態度と関係がある
⑨ 各職業は、能力、興味、性格特性について特徴的な方を要求するが、1つの職業に様々なタイプの人が従事できるし、1人の人が異なる職業に従事することができるなど、許容性がある
⑩ 職業満足や生活上の満足は、個人がその能力、興味、価値、性格特性に対するはけ口を、仕事の中で見出すことができる程度に依存する
⑪ 個人が仕事から得る満足度は、その自己概念を実現できた程度に比例する
⑫ 仕事と職業は、たいていの男女にとっての人格構成上の1つの焦点となる。一部の人にとっては、子の焦点が一時的、偶然的、またはまったく存在しなかったりする。また、社会的活動や家庭が焦点となることもある
・スーパーの基本的な考え方
① 個人は多様な可能性を持っており、さまざ職業に向かうことができる
② 職業発達は、個人の全人的な発達の1つの側面であり、他の知的発達、情緒的発達、社会的発達などと同様、発達の一般原則に従うものである
③ 職業発達の中核となるのは、自己概念である。職業的発達過程は、自己概念を発達させ、それを職業を実現していくことを目指した漸進的、継続的、非可逆的なプロセスだり、妥協と統合の過程である
・職業的発達段階
① 成長段階(児童期~青年前期)
② 探索段階(青年期前期~):試みの段階、移行の時期、実践試行の時期
③ 確立段階(成人前期~):実践試行の時期、昇進の時期
④ 維持段階(40歳中期から)
⑤ 下降段階(65歳以降)
・キャリアレインボー
① 9つの役割:子供、学生、余暇人、市民、労働者、配偶者、家庭人、親、年金生活者
② 舞台:家庭、地域、学校、職場
(3)職業発達理論の発展
・スーパーの理論の修正
a. 職業発達は、外から内というより、内から外への現象
b. 探索期から確立期、確立期から維持期と突然段階を変えるのではなく、次のっ段階に移行するための比較的長期の段階がある
・成人期以降のキャリア発達
① 成人期以降のキャリア行動は、その個人の暦年齢ではなく社会的年齢によって規定される。社会的年齢は社会規範によって影響される
② 成人期以降のキャリア行動は、その人がどのライフステージにいるかによってきまる
③ 成人期以降のキャリア発達は、年齢差、発達段階さよりも性によるものが大きい
④ 成人期は常に、新たな環境への適応と自己の差評価に直面している。そこにストレスと再適応のための努力を必然的に求められる
⑤ 青年期に獲得された自我同一性が、成人期を通して次第に個性化、自己か、自己実現化して確立していく
4.新しいキャリア発達理論
(1)プランドハプンスタンス理論(クランボルツ)
人のキャリアは偶然の出来事によって左右される。当人も予想しなかったことによって興味が喚起され、学ぶ機会が得られ、成長する。偶然に出会う機会を増やし、それを自分のキャリア形成に取り込み、その準備をすることがキャリア支援である
・古くは偶発理論と言われていたが、意思決定理論、社会的学習理論などについても、個人から機械、社会などの偶発性への転換を迫る視点の理論
(2)ナラティブ・アプローチ
ポストモダンアプローチは、物語的、文脈的、構築的な要素が含まれる
① シュプセン
キャリアはノンフィクションの仕事経験小説であり、小説や物語と共通するいくつかの要素で構成される
・小説や物語と共通する要素
・キャリアには著者がいる
・キャリアは、時の経過とともに進展する
・キャリアは、ある場所を舞台として展開する
・キャリアには、主役とわき役が登場する
・キャリアには、筋書きがある。筋書きには、問題の発生、解決方策、主役の行動という3つの要素が必要
・キャリアには、障壁、重大な事故が伴う
② キャリア・コンストラクション理論(サビカス)
個人が自分のキャリアを考える中で、他者との相互作用を重視する。選択から構築へ、マッチングから雇用へ、積極的な関与へという概念と実践
(3)社会正義の重視(文脈理論)
貧困、社会的弱者、不平等を是正する。これらの問題をイデオロギーを含む社会的文脈(コンテキスト)で捉えることを重視し、OECD、ILOなどの国際機関が提案する、雇用施策としてのキャリア・ガイダンスの在り方に関する理論
① ガイダンスの内容から実施体制へ:提供方法、手段、コスト、対象者の区分、予算・費用、提供者の役割や資質、効果・評価、連携などを重視する
② ガイダンスの役割や機能の拡大:ガイダンスの領域を、キャリア情報、キャリア教育、キャリア・カウンセリング、職業相談、職業紹介とする。あるいは、IAG(Information, Advice, Guidane)
③ ガイダンスの目標や目的の拡大:生涯教育、労働市場、社会的公平・社会的包括を目的とする
5.職務満足度の理論
(1)職務満足のプロセスに関する理論(ハックマンら)
・職務の中核的次元
① スキルの多様性
② 課業の主体性
③ 課業の重要性
④ 自律性
⑤ フィードバック
仕事の有意味感:①~③、成果に対する責任:④、仕事の把握感:⑤
(2)ハーズバーグの理論
職務満足や不満足を規定する要因は2つ
① 動機づけ要因(満足感に関連):仕事の達成感、達成の承認、仕事そのもの、責任、承認、成長の可能性
② 衛生要因(不満足に関連):監督の仕方、会社の政策と経営、作業条件、対人関係、賃金
(3)ホールらの理論
職務満足をキャリアと直接結びつけた
良い職業行動は満足をもたらすことを前提にして、心理的成功と失敗間に基礎をおいた組織キャリア開発モデルを提案
① 自己概念、キャリア・コミットメント、自尊感情の増大は、適切なキャリア目標の達成をもたらす
② 初職の職務評価、成功感が、その後数年のキャリア・コミットメント、職業的行動、成功を決める
③ ある地位から他の地位への移動は、その個人の自己概念、満足、及び仕事に対する態度の顕著な変化となって完成される
2.組織内キャリアの緒次元と組織内キャリア発達
(1)バンバーネン
以下の3つの次元の諸要因の相互作用の結果、キャリアの形成や変革がもたらされる
① 個人の特性(能力、意欲、価値観、満足
② 職場や仕事の特性(職場環境、役割、生産性)
③ 家庭の特性(家族構成、家庭での役割)
(2)シャイン
バーマネンの3次元の考え方を組織内キャリアに展開した
・組織内キャリアの3次元モデル
第1の次元(機能):製造→販売→マーケティング
第2の次元(地位):見習社員→1級職→2級職→係長
第3の次元(中心性):職種や地位が同じでも重要性が上がる
・組織内キャリア
① 成長、空想、探求(0~21):学生、大志を抱く人、求職者
② 仕事の世界へのエントリー(16~25):スカウトされた新人、新入者
③ 基本訓練(16~25):被訓練者、初心者
④ キャリアの初期(17~30):新しいが正式なメンバー
⑤ キャリア中期(25~):正社員、在職権を得たメンバー、終身メンバー、監督者、管理者
⑥ キャリア中期の危機(35~45)
⑦ A. 非指導者役にあるキャリア後期(40~引退):重要メンバー、経営メンバー
⑦ B. 指導者役にあるキャリア後期(40~引退):全般管理者、幹部、上級パートナー、社内企業家、上級スタッフ
⑧ 衰え及び離脱(40~引退)
⑨ 引退
6.キャリア・アンカー(シャイン)
① 専門・職種別コンピタンス
② 全般管理コンピタンス
③ 自律・独立
④ 保障・安定性
⑤ 起業家的創造性
⑥ 奉仕・社会貢献
⑦ 純粋な挑戦
⑧ 生活様式
7. 社会的・経験的学習
学習の中心は、どのようにして経験が概念に置き換えられ絵、それが新しい経験のガイドとしての働きをするようになるかである
(1)社会的・経験的学習の4つのサイクル(コルブら)
① 具体的経験:実際にやってみる
② 反省的観察:冷静に反省、検討
③ 抽象的概念化:仮説生成
④ 積極的実験:確かめる
(2)クランボルツら
学習体験や環境に対する個人の認知的・情緒的な反応やさまざまな環境要因によって影響を受ける無数の学習経験の累積効果が、ある教育プログラムに参加しようという決定を引き起こしたり、特定の職業に就こうとさせるのである
8.キャリア・ストレス
(1)ホルムズら
社会的再適応評価尺度:43項目
職業に関するもの:失業、退職・引退、合併・組織替えなど勤め先の変化、転勤・配置転換、仕事上の地位(責任)の変化、職場の上司とのトラブル、勤務時間や労働条件の変化
(2)ファースト
専門的・管理的職業従事者のストレス
① 仕事だけの過重な没入(過労、いらいらなど)
② 人間関係の悪さ(集団作業ができない、部下との関係の悪さなど)
③ 昇進問題(責任荷過重、昇進ストップ)
④ 役割葛藤(成功やキャリアに関する葛藤)
(3)クラブスら
ストレッサーの根源としての「欠乏」
① 上司の援助からの欠乏
② 期待した昇進からの欠乏
③ 職務の安定の欠乏
④ 意思決定への参加の欠乏
(4)ホルト
① 職務そのものに関するもの(仕事荷重、仕事の難しさなど)
② 役割に関するもの(役割の曖昧さ、役割葛藤)
③ キャリアに関するもの(異同、昇進、配置転換など)
④ 人間関係
⑤ 組織風土に関するもの(暗い職場、共同関係の不在など)