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これは名著だ。

マット・リドレー(大田 直子訳)「人類とイノベーション:世界は「自由」と「失敗」で進化する」、NewsPicksパブリッシング(2021)

過去にイノベーションの本は、シュンペーターの本を始め、数十冊は読んでいると思うが、間違いなく、ベスト3に入る本だ。これだけ、イノベーションをさまざまな視点からみた本は少ないし、また、内容もしっかりとしている。

イノベーションを分析するスタンスで素晴らしいと思うのは、「失敗は成功の一部である」というもの。そして、イノベーションはある日、突然生まれるわけではなく、失敗の積み重ねであるということだ。

イノベーションにおいては、試行錯誤の重要性を説く本は多いが、ここまで明確なスタンスを示して、かつ、すべての分析をこのスタンスで行っている本はあまり見かけない。

本書ではまず、イノベーションの事例を
・エネルギー
・公衆衛生
・輸送
・食料
・ローテク
・通信
のカテゴリーに分けて、年代を追って多数、紹介している。また、このあとで、先史時代のイノベーションについても紹介している。どのカテゴリーも歴史が分かり、興味深いのだが、特にこの先史時代のイノベーションは、イノベーションの本質を考えるに当たって参考になる。

その上で、イノベーションの本質は何かについて考えている。この視点もなかなか、興味深いものが多い。さらに、イノベーションの経済的な側面についても議論している。

次に、偽物のイノベーションについて紹介し、教訓をまとめている。そして、その流れで、イノベーションに対する抵抗についても議論している。

最後に、現在のイノベーション欠乏を突き抜ける方法を提案している。

議論の内容に画期的な新しさがあるわけではないが、イノベーションというのは生物と同じ仕組みの進化であることは非常にインパクトがある。

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