俺ガイル論破 ep2日常編(前)

「俺ガイル」と「ダンガンロンパ」の二次創作です。
原作のロンパみたいに各章は「日常編→非日常編→学級裁判編→裁判後エピローグ」という感じで進みます。基本的に長くなる編は前後編に分けています。
今回は第二章の日常編の前編です。
ちょっと投稿に間が空くのは良くないかなぁ…と思ったので書き溜めを消化しときますね。

なんとなくで読んで楽しんでください。

↓閲覧時の注意点↓
1)キャラ崩壊、作品崩壊
2)文章がおかしかったり気持ち悪かったりする
3)誤字脱字は当たり前
4)作者は素人
5)誹謗中傷は傷ついちゃうのでNG
6)原作や個人をdisるのもNG
7)その他人が悲しむことはだいたいNG
8)時系列は原作12巻より前(アニメ2期)だと思ってください。

---ここから本編---
『第二章:陰に差す光と輝き・日常編(前)』

キーンコーンカーンコーン
 チャイムが鳴る。朝8時、いつもの時間だった。嫌でも昨日のことを思い出す。
 平塚先生が死に、小町が死に、…正直言うと衰弱しきっていた。だがいつまでもそうしてるわけにはいかない。常に現実から逃げてきた俺だが、もう逃げるわけには行かない。
 ずっと思っていた。皆目の前の動機と現実しか見えてなかった。今度は俺が動く番だ。先生が見つけたように、きっとこの学園にはもっと外の情報があるかもしれない。今この状況で何もしないということは、危険だと気付かされた。なら頑張るしかない。
八幡「行くか」
 俺は食堂へと向かった。

結衣「あ、ヒッキー…」
一色「先輩…大丈夫ですか?」
八幡「……全員いるんだな」
 以外にも、食堂には全員集まっていた。ルールを決めた人はもういないけど、そのルールは継続されているんだな。
陽乃「比企谷君、とりあえず座りなよ」
 陽乃さんは昨日のことなどなかったようにふるまう。俺は昨日最後に陽乃さんが言ったことがずっと耳に残っていた。
ーーーー雪乃ちゃんに情報を見せないで。
 その言葉が意味する内容を俺はまだ知らない。
雪乃「おはよう比企谷君。調子はどうかしら?」
 考え事の張本人に話しかけられた。
八幡「お、おお…。おはようさん」
 少しキョドってしまった。でも仕方ないじゃない。
葉山「全員揃ったし、僕からいいかな?」
一色「葉山先輩、どうかしたんですか?」
葉山「昨日モノクマが言ってただろう?新しい施設が開放されたって。それの確認を皆でしようと思うんだ」
葉山「あと、そろそろ当番のメンバーも変更したいと思う」
戸部「べー、当番は一週間に1度の交代じゃなかったん?」
葉山「…人が減ってしまったから改めて変更した方がいいと思ったんだ」
葉山「それに二度と事件を起こさないために細かいルールも決めた方がいいんじゃないかな?」
海老名「私は隼人君に賛成かな」
八幡「俺も構わんが…ルールの見直しと施設の探索…どっちを先にするんだ?」
相模「そりゃ施設でしょ。気になるもん」
葉山「じゃあ施設から始めよう。4人のチームと3人のチームを2つずつ作ればちょうど14人だ」
 14人。その数字が嫌でも胸に刺さる。だがこんなことで一々心を痛めていてはこれからやっていけないだろう。そう簡単に割り切れるものでもないが…。
 そうこう考えるうちにメンバー決めが行われた。「葉山、雪ノ下さん、城廻先輩、三浦」のチーム、「戸部、相模、由比ヶ浜」のチーム、「雪ノ下、川崎、海老名さん」のチーム、そして「俺、戸塚、材木座、一色」のチームと別れた。
葉山「パッと見食堂に変化は見られない。だから寄宿舎体育館方面、PC棟方面、教室特別棟方面、売店図書館方面に別れて探索しよう」
葉山「僕たちのチームは教室特別棟方面に行こうと思う。結衣のチームは売店図書館方面、雪ノ下さんはPC棟方面をお願いしていいかな」
結衣「了解!」
雪乃「わかったわ」
葉山「ヒキタニ君のチームは寄宿舎体育館方面をお願いするよ」
八幡「りょーかい」
 こうして俺たちの探索が始まった。

材木座「時に八幡よ。開放された施設には何があると思う?」
八幡「モノクマは確か俺たちの生活を快適にするための施設だと言っていたな。ならそういう施設になるんじゃないか?」
一色「あ、それなら私ブティックとか欲しいです」
八幡「ブティック…?」
一色「ブティックというのは俗にいう服屋のことですよ?」
八幡「ちげぇよ、こんな生活なのに服なんか欲しいのかと思ってな」
一色「女の子はどんな時でもオシャレに気を使うんです!」
戸塚「う~ん、僕もパジャマぐらいは欲しいかなぁ」
 俺たちには7着の服がデフォルトで支給されているが、どれも全く同じものだ。
八幡「確かに寝巻用のジャージぐらいは欲しいな。制服で寝るのはなんかアレだし」
一色「そういえば戸塚先輩はジャージ着てますよね?」
戸塚「あはは、逆に僕は制服持ってないんだ。このジャージなら7着あるんだけど」
一色「人によって支給された服が違うんですねぇ~。現に私や先輩は制服ですし」
八幡「俺たちが会う時に一番着てる服がチョイスされたんじゃないか?材木座はコート着てるし、雪ノ下さんに関しては私服だからな」
戸塚「確かに僕も八幡と会う時は大体ジャージだもんね」
 後ろから謎の視線を感じる。会話に入ってこれない材木座のものだ。戸塚もそれに気づいたようでフォローの言葉を入れる。
戸塚「話戻るけど、僕はテニスコートが欲しいかな。体育館でできるスポーツは限られてるからね」
八幡「まぁスポーツ系の施設は俺達の担当方面にあるだろ。期待してもいいんじゃないか?」
戸塚「うん!そうだね!」
 戸塚のフォローもむなしく、材木座は会話に入ってこれなかった。
一色「…………」

 そうこう話してるうちに体育館に着く。しかし何か増えた印象はなかった。
一色「ここはハズレですねー」
材木座「うむ、では次の場所へ行こうではないか!」

 次に見たのは武道館。残念ながら武道館にも変化はなかった。
材木座「む…?八幡よ、部室棟の方に何かみえないか?」
一色「あれって…プールじゃないですか!?先輩!行ってみましょうよ!」
八幡「確かにそれっぽいな、行ってみるか」
 二人の言う通り部室棟の隣に見覚えのない施設が見えた。
 今更だが、一色さん材木座のこと避けてない?気のせい?

 そして部室棟。部室棟そのものに変化はないが、その隣にはプールが新しくできていた。
戸塚「ほんとだぁ!プールだぁ!」
一色「温水プールですね!ちゃんと更衣室にシャワー室もついてますし…」
一色「あ!先輩見てください!ウォータースライダーもありますよ!」
八幡「お~マジだ。小さいやつだがあるだけ違うなぁ」
一色「先輩今度一緒に行きましょうよ!」
八幡「えー…」
一色「なんでそこで微妙な反応何ですかね…」
戸塚「八幡!僕も行きたいな!」
八幡「よし、行くか」
一色「えー…」
 一色が微妙な顔をしていたが、仕方ないだろ。女の子の水着ってドキドキするもん。戸塚の水着もドキドキする。あれ?ダメじゃね?
材木座「ふむ、プールで遊ぶのはいいが、水着はどこにあるのだ?売店に売っていた記憶は我にはないぞ」
 …。
 俺にも水着があった記憶がない。
一色「他の皆さんの報告に期待するしかないですね」
 これで売ってなかったら欠陥施設だぞ。

 最後は寄宿舎…。と言ってもつい数時間前まではここに居たのだから変化なんて…。
戸塚「あれ?地下への階段が開いてない?」
 今までの寄宿舎には地下へ続く階段があったにも関わらず入ることができなかった。実際、今朝も開いてなかったはずだ。それが今は開いていた。
八幡「マジだな…行ってみるか」
 階段を降りるとその先には小さなスペースがあった。まるで銭湯のロビーのような…。
一色「先輩!これって銭湯じゃないですか?」
 木造の床と壁、そこに並ぶベンチや椅子…自動販売機にはミルクが売っている。その奥には「♨」と書かれた暖簾もある。
一色「やっぱり間違いないですって!これでシャワーだけの生活から解放されますね!やっぱり湯船につからないと!」
 一色の風呂に対する認識は俺と同じようだった。しかし、俺はこの銭湯にある違和感を抱いていた。
戸塚「ねぇ、八幡。ちょっとおかしくない?」
材木座「ふむ、どこがおかしいというのだ?」
 戸塚は違和感に気づいたみたいだった。そう、この銭湯…。
八幡「暖簾が1つしかない…」
一色「え”!?……マジですね」
一色「ということはここって……混浴ってことですか?」
 そういうことになる。
一色「これは早急にルール決めを行わないといけませんね~」
 一色の笑顔が急に怖くなった。戸塚も顔を赤くしている。モノクマのやつ、こういうところの配慮はしてくれないのな…。
八幡「とりあえず、暖簾の先の確認だけしておこうぜ」
 そういって中に進んでみる。暖簾の先は小さな更衣室。そこにもまた扉があり、その先にはやはり銭湯が広がっていた。
八幡「意外と立派な銭湯だな…」
一色「あ、サウナもあるみたいですよ!」
 俺たちの探索で見つかった施設は以上の通りだった。しかしプールに銭湯…生活は間違いなく快適になるだろう。
戸塚「八幡、そろそろ戻ろっか。たぶん皆もそろそろ集まってくると思うし」
八幡「だな、行くか」
 俺たちは集合場所である食堂へと戻っていった。

 食堂に戻ると、既に雪ノ下のチームが戻ってきていた。
雪ノ下「あら、比企谷君じゃない。探索は終わったのかしら?」
八幡「まぁな。お前らも早いな」
川崎「私たちはPC棟に行ったんだけど、特に何もなかったというか」
海老名「別に新しいフロアもなかったしね~」
雪ノ下「だから残念だけど、私たちの成果はゼロよ」
雪ノ下「比企谷君の方はどうかしら?」
一色「私たちの方はそこそこ見つかりましたよ~」
八幡「どうせ皆集まった後にも言うから、その時でもいいか?」
雪ノ下「ええ構わないわ」
 することもないので、コーヒーでも飲みながら待つ。残念ながら食堂にマックスコーヒーはおいてなかった。売店には売ってるのにな…。
結衣「ゆきのん!ヒッキー!」
 次に食堂に現れたのは由比ヶ浜のチームだった。
雪乃「由比ヶ浜さん、おかえりなさい」
戸部「べー皆戻るの早いっしょ!」
陽乃「お、皆戻ってきてるじゃん!」
 続け様に陽乃さん含む葉山チームが戻ってきた。
三浦「あーしらが最後っぽいね」
葉山「よし、じゃあ早速情報共有をしよう」

雪ノ下「最初は私達からでいいかしら…と言っても、何もなかったのだけれど」
海老名「うん、残念ながらPC棟には何も変化がなかったよ」
雪ノ下「不甲斐ないわ…ごめんなさい」
城廻「ううん、何もなかったなら仕方ないよ」
相模「じゃあ次はうちらからの報告ね」
戸部「べー新しい施設が開放されてたわー」
一色「新しい施設…ですか?」
結衣「うん!具体的には売店の二階にブティックが、図書館の二階にレンタルショップがあったんだよ」
一色「ブティックですか!やったー!」
相模「うん、ポイントで買えるみたいだったよ。服に関しては売店なんか比べ物にならないくらいの品数だし」
戸部「べー水着とかもあったしよー、これでプールがあったら最高だわー」
戸塚「あ、プールなら新しくできてたよ」
戸部「マジ!?べーテンション上がるわー!」
雪乃「戸塚君の話はその報告の時に聞きましょう。それよりもう一つのレンタルショップとは何かしら?」
結衣「うん、なんかTU〇AYAみたいな感じで、CDとかDVDがレンタルできるみたいだよ」
相模「でも図書館と違って有料なんだよね」
葉山「まぁ娯楽が増えるのはいいことじゃないかな」
相模「だよねー」
結衣「私たちからは以上だよ」
雪乃「それじゃあ次は戸塚君のグループでいいかしら?」
戸塚「うんわかったよ」
戸塚「さっきも言ったけど、プールが新しくできてたんだ。温水プールで、小さいけどウォータースライダーもあったよ」
戸部「べーこれは行くしかないっしょ!」
葉山「そのプールって学内のどのあたりにあったのかな?」
八幡「体育館の奥に部室棟があっただろ。そこの隣だ」
陽乃「へぇ~モノクマも粋な事するねぇ~」
雪乃「姉さんは黙ってて。比企谷君、他に発見は?」
八幡「寄宿舎の地下に行けるようになってたぞ」
結衣「あれ?そこって今朝の時点では行けなかったよね?」
一色「私達が探索したときには開いてたんですよ~」
海老名「それで、その地下には何があったの?」
八幡「銭湯があったぞ。大きさもそこそこある」
結衣「銭湯!わぁ~嬉しいなぁ~」
一色「でも実は一つ問題がありまして~」
雪乃「問題?」
一色「その銭湯、男湯女湯ってわかれてないんですよ~」
結衣「それって…」
陽乃「へぇ~混浴なんだ。よかったね比企谷君」
八幡「何で俺に振るんですか!?」
結衣「ヒッキーさいてー」
雪乃「エロヶ谷くん、それ以上こっちを見ないでくれるかしら?」
一色「先輩…幻滅ですよ?」
八幡「冤罪だ…」
葉山「まぁ、銭湯を利用できる時間を男女で分ければ問題ないと思うよ」
相模「さっすが隼人くん!」
三浦「それでいい感じじゃない?」
戸塚「僕たちからはこれぐらいかな!」
葉山「じゃあ最後は僕たちからだね」
陽乃「教室棟には何もなかったよ!教室棟にはね!」
雪乃「特別棟には何かあったのかしら?」
城廻「うん、特別棟は2階が開放されてたよ」
城廻「で、その2階にあったのは…被服室、調理室、そして美術室だね」
葉山「全部皆がイメージする通りの場所だったよ。調理室もここの厨房と似たような感じだね」
陽乃「でも残念、決定的な情報はなーんにもなかったよね~」
雪乃「不服だけど、それもそうね」
葉山「それじゃあさっきの銭湯の件もあるし、次は細かいルールを決めようか」

 細かいルール…といっても新しく決めたことは少なかった。まず当番制を1週間に1度から2日に1度変更になったこと。そして男女別の銭湯の入浴日の決定。こっちは1日ずつ別れることになった。具体的に、今日は女子が入れる日。明日は男子が入れる日…。といった具合だ。
葉山「僕から提案したいことが2つほどあるんだけど、いいかな?」
戸塚「どうしたの?」
葉山「皆の傷口を掘り返すようで申し訳ないんだけど、亡くなった人をしっかり弔いたいんだ」
 亡くなった人…。その言葉はやはり俺を傷つける。恐らく、皆俺のことを気にしてるのでは…と思っていたが、残念ながらそんなことはなかった。これもぼっちの宿命なのか…。
一色「…………」
三浦「弔うってどういう風に?」
葉山「簡単でもいいからお墓を作ろうと思うんだ。気休め程度にしかならないけど、ないよりはマシだと思う」
城廻「そうだね、私も葉山君の案に賛成だ」
 真っ当な意見に賛同が出ればあとは流れだ。あーしようこーしようと意見が交わる。
葉山「よし、じゃあお墓は寄宿舎の隣に作ろう」
陽乃「でもお墓作るのは手間もコストもかかるから、花を置く程度がちょうどいいんじゃないかな?」
城廻「そうですね。その代わりいっぱい用意してあげよう」
結衣「それなら花壇みたいな感じにしようよ!」
戸部「だべー、花置くだけだとちょっとチンケっしょ」
  というわけで、寄宿舎の隣に軽い花壇を作るという方針に決まった。
葉山「あと当番そのものについてもてこ入れしたいと思う」
相模「てこ入れ?」
 葉山が話した内容をまとめると、「ポイントがあるなら無理して食事を作る必要はないのでは?」という声があり、食事当番を廃止する。その代わり、さっき言った墓の手入れと今後利用するであろう銭湯の掃除役を増やすというものだった。
材木座「むむむ…!つまりどういうことなのだ?」
葉山「要するに今後の当番を、お墓の手入れをする当番、銭湯の掃除をする当番、食堂の掃除をする当番、そして見回り当番の合計4つにしようと思うんだ。当番を行う時間は前と変わらず21時でいいと思う」
川崎「私はそれに賛成。毎回食事作るのも大変だしね」
 俺も言葉にはしないが概ね賛成だった。他の皆も頷いている。さっきから葉山が提案し、他の皆が賛同するという展開が続いている気がする。これも葉山だからこそ成せる業なのかもしれない。
葉山「それじゃあ具体的な当番を決めていこう」
 話し合いの結果、俺の当番は食堂の掃除になった。ちなみに葉山、戸部、城廻先輩の3人がお墓を作ってくれるみたいだ。そしてその3人がそのままお墓の手入れ当番ということになった。お墓参りは明日から個人個人で行うという方針にもなった。
 大まかなルールが決まったところで、今日は解散。まだ昼過ぎだったので、おれはとりあえずレンタルショップへと向かってみた。

八幡「ほーん、思ったよりたくさんの種類があるんだな」
 アニメから映画までなんでもありそうな雰囲気だ。有料だが1つ500P。物売ればポイントが増えるということが分かった今、大して高いとも思えない。
八幡「まぁ、この手の店は借りなくても楽しめるもんだし」
 所謂ウィンドウショッピング。悪い言い方で冷やかしだ。適当なことを呟きながら店内を歩き回る。
八幡「…………」
 気が付けば俺の足は止まり、1つの作品に目を奪われていた。それはなんてことはない、ただの映画。この前テレビでやっていたような映画だった。
「面白いね!お兄ちゃん」
 前まで当たり前だった日常。その日常も、日常の登場人物も、どちらももうない。何回も考えて引っ込んだ思考が頭を埋め尽くす。気が付けば俺は泣いていた。
八幡「小町…」
 レンタルショップで泣きながら立ち尽くすという異様な光景が、そこにはあった。

 どれくらいたっただろうか、俺はまだレンタルショップにいた。時計はどこだろう?周囲を見渡す。お目当てのものはすぐに見つかった。
 19時過ぎ。そろそろ食堂に行かないといけない。皆に無用な心配はかけられない。最も、ぼっちの俺を気に留める皆もいないのかもしれない。今の俺はとにかく思考がネガティブになっていた。
八幡「行かねぇと…」

 食事当番が廃止になったので、夕食を買わないといけない。食欲があまりなかったが食べないとそれはそれで辛い。お腹に優しいと思われるうどんをチョイスした。
八幡「いただきます」
 うどんを啜りながらこの後の予定を考える。どうせ俺は食堂の掃除当番だし、食べ終わったら残って適当に過ごすか。幸い、図書室から拝借した本もある。1時間は余裕で時間を潰せるだろう。
 食堂に人が集まってきた。皆各々で食事をとる。俺とは違って有意義な時間を過ごしていたんだろう。
「隣、いいですか?」
 俺の許可もとらず座ってくる。誰だと思って振り向いてみたら、その正体は一色いろはだった。
八幡「なんだ一色か。どうした?」
一色「…………」
一色「先輩、この後お時間よろしいですか?」
八幡「この後?当番あんだろ」
一色「その当番の後ででいいです」
八幡「なんだよ…。要件なら今聞くぞ」
一色「大事な話です」
 一色の顔は真剣そのものだった。普段のふわっとあざとい様子とは似ても似つかない。
一色「先輩、もしかして警戒してますか?」
 「警戒」が指す意味は間違いなくアレだろう。
八幡「してない…といえば嘘になるな」
一色「そう、ですよね…」
一色「でも、それでもやっぱりお話はしたいです。どうしても…無理ですか?」
 そう何度も言われるとつらい。実際、俺もこいつが滅多なことはしないだろうとは思っているが…。
八幡「はぁ…場所はどこだ?」
一色「二人で話せる場所ならどこでもいいです。先輩が話しやすい場所を指定してくれればそこでいいですよ」
八幡「俺が話しやすい場所……」
 この学園で居心地のいい場所は正直少ない。
八幡「図書館…でどうだ?」
一色「できれば夜時間でも入れる場所がいいです」
八幡「別に夜時間でもポイントを使えば入れるだろ」
一色「無理して使う必要もないでしょう?他にないんですか?」
 一色は意外と金勘定にうるさいのかもしれない。だが他に居心地のいい場所なんて…
八幡「俺の部屋…」
 自分で口にして失敗したと思った。相手は一色、年下の女子だ。女子を部屋に誘うとか気持ち悪すぎるだろ。
一色「先輩…」
八幡「いや、悪い一色…。今のは…」
一色「別にいいですよ?じゃあ今晩部屋にお邪魔しますね」
八幡「え」
一色「あ、でも勘違いしないでくださいよ。もし手を出して来たら思いっきり叫びますからね」
八幡「しねぇよ…」
一色「じゃあ今晩よろしくでーす」
 気が付けばいい時間になっていた。各自の当番の持ち場へと着き始める。食堂の掃除当番は俺以外には雪ノ下、川崎、材木座が担当だ。
雪乃「比企谷君、さっき一色さんと何を話していたの?」
 正直に言ったら間違いなく軽蔑される。それに一色本人にとっても、俺と二人で話をするというのは知られたくないものだろう。
八幡「別に…ただの世間話だ」
材木座「八幡、嘘をつくな。お主が年下の女子相手に世間話ができるはずないだろう」
八幡「お前…俺を何だと思ってるんだよ…」
八幡「てか見回り当番の時俺と一色が話してる姿見てんだろ…」
川崎「その当番も含めて、最近あんたと一色が一緒にいるのをよく見る気がするけど?」
八幡「ああ?そうか?」
雪乃「あなた、この学園に来て最初も一色さんと図書館にいたでしょ?」
雪乃「これ以上一色さんを追いかけまわすのはやめなさい。彼女に迷惑が掛かるし、何より気持ち悪いわ」
八幡「何で俺が追いかけてる前提なんだよ…」
雪乃「あなたならやり兼ねないでしょう」
八幡「はぁ…」
 とりあえず俺が攻められる状況を対処するのは疲れる。全部処理しててもしょうがないしな。
材木座「むむむ…八幡よ、我を裏切りおったな」
 まだ続けるかこいつ…。

 食堂の掃除を終えた俺たちは各自の部屋へと戻った。時間は22時くらい。確か一色が今晩訪れてくるんだったよな。何時ぐらいに来るんだか…。それに、何の話をするかも全く見当がつかない。
八幡「はぁ…」
 掃除の時みたいにため息がこぼれる。昼間はずっと泣いてたし、いろんな感情が渦巻いている。そう自覚できるくらいには冷静だが、相対的にみると冷静じゃないのかもしれない。
ピンポーン
八幡「ん?」
 部屋のチャイムがなる。一色が来たのだろう。ドアを開ける。
八幡「一色か?」
雪乃「残念だけど、一色さんじゃないわ」
 まさかの雪ノ下。
八幡「何しに来たんだよ…」
雪乃「私のことはどうでもいいわ。それより、あなたよ比企谷君」
雪乃「どうして扉を開けた時、一色さんだと思ったのかしら?」
 この状況で変な言い訳しても仕方ないだろう。一色には悪いが、ある程度のことは話さないといけない。話すほど濃い内容でもないがな。
八幡「今晩一色と会う約束してるんだよ」
雪乃「一色さんと?こんな夜遅くに?何を企んでるの比企谷君?今すぐやめなさい」
八幡「だから俺じゃねぇって…。今回俺を呼び出したのは一色だ」
雪乃「一色さんが?嘘じゃないでしょうね?」
八幡「嘘じゃない。場所も一色に案内される形になってる」
 俺は真実半分嘘半分のことを言った。会う約束はしたが、場所俺の部屋だからな。これこそ、真実を言ったら軽蔑されるからな。
雪乃「仮にそれが本当だとしても、夜に2人で会うのは危険よ。一色さんが」
 あとから言わなくてもわかってるから。おまえが俺の心配なんかしてないの知ってるから。
八幡「確かに危険…だが、俺か一色に何かあったら、おまえが証人になるだろ」
雪乃「それもそうね」
八幡「だから大丈夫だ。おまえも部屋に戻って休め」
雪乃「……信用していいのよね?」
八幡「何回も言わせんな、大丈夫だ」
雪乃「……わかったわ」
 そういって雪ノ下は自室へと戻っていった。そしてその直後に…。
一色「先輩!」
八幡「今度こそ一色か」
一色「…雪ノ下先輩と何話してたんですか?」
八幡「ちょっとおまえのことを問い詰められていた」
一色「え、私のことをですか?」
八幡「『こんな時間に一色に会って何をするんだ』ってな」
一色「それで…なんて答えたんですか?」
八幡「別に普通だぞ。お前と話をするだけだって言った」
一色「そうですか…」
一色「というか、いい加減中にいれてくださいよ。ここにいるとちょっと…恥ずかしいです」
八幡「あ、ああ…。悪い」
 俺は一色を部屋の中へと招き入れた。一応、警戒心を持って一色を見てみる。一色はパジャマのようなラフな格好をしていた。仮に凶器を持ち込もうと思っても、隠しておける場所がないような服装だ。やはり、一色は単純に話をしに来ただけのようだった。
一色「?こっちをジッと見て…どうしたんですか?」
八幡「その服…どうしたのかと思ってな」
一色「これですか?ブティックができたとのことだったので早速買いに行ってみたんです」
一色「ほら、今朝の探索の時も同じ話したじゃないですか~」
八幡「そうだったな」
一色「そういう先輩はまだ制服…。買ってないんですね」
八幡「まぁ、な…」
一色「…………」
 一色がジッとこっちを見てくる。話をしに来たというのに、その話はなかなか始まらない。部屋に男女で二人っきり…。構図的にマズイ。さっさと話し聞いて帰らせよう…。
八幡「話ってなんだよ…?」
一色「…………」
八幡「おーい?一色?一色さーん?」
一色「先輩、無理しないでください」
 一色は突然訳のわからないことを言い始めた。
八幡「無理って…何の話だ?」
一色「先輩、昨日からずっと無理してます」
一色「いつも通りでいようと、無理してます…」
八幡「そんなこと…」
一色「あります」
 一色は確信めいた様子で言い放つ。
八幡「……おまえがそう思っただけだろ。実際は違う」
一色「違く…ないですよ」
八幡「…やけにつっかかるんだな?」
一色「だって…見たんですもの」
八幡「見た?」
一色「私がブティックで私服や寝巻を買った後…レンタルショップをちょっと覗いてみたんですよ」
一色「そこで、先輩の姿を見たんです」
八幡「なっ…!」
一色「先輩…泣いてました」
八幡「見てたのかよ…」
一色「薄々わかってたんですよ。皆がいる前でも少し陰がありましたし、何より先輩のような人は1人じゃないと気持ちを吐き出せないんです」
一色「あるいはよっぽど親しい人物の前…例えば、小町ちゃんとか」
八幡「!」
 言い返せなかった。実際にその通りだと、気持ちが認めてしまったからだ。
八幡「俺はいつだって素直だぞ。確かにぼっちだが、話をする相手には素直だ」
 気持ちは認めているのに、俺の口は認めていないらしい。
一色「そういう意味じゃないですよ。わかってて言ってますよね?」
 一色もそのことに気づいているみたいだ。意外と俺のことをよく見ているのかもしれない。
一色「先輩…寂しいですよね?苦しいですよね?」
一色「私にとっても先生が亡くなり、唯一の後輩と言っても差し支えない存在が亡くなりました」
一色「私でさえこんなにも悲しいんです…。先輩の悲しさはきっとその比じゃないでしょう」
八幡「…一色、お前の言いたいことはわかる」
八幡「だがそれまでだ。俺の気持ちなんて俺にしか整理できないものだ」
一色「その通りですね…」
一色「でも先輩が…1人で泣いてた事実は変わりないです」
八幡「…それもさっきおまえが言っただろ。1人で気持ちの整理をしてたんだ」
一色「そこですよ!」
八幡「は?」
一色「1人で吐き出してないで…もっと他人に頼ってくださいよ…」
一色「1人で苦しんでる先輩なんて…見たくありません」
八幡「一色…」
八幡「おまえがいくら言おうと、結局俺がぼっちなのは変わらないだろ」
八幡「俺の気持ちの吐き出し口は、1人でいること、そして小町の前…さっきおまえが言ったことだぞ」
一色「私がいるじゃないですか」
八幡「え?」
一色「小町ちゃんの代わりになろうだなんて傲慢なことは言いません。少しでも先輩の役に立ちたいんです」
一色「先輩の気持ち…分かち合いたいんです」
八幡「一色…おまえ……どうしたんだ?」
一色「……相変わらず、水を差すことに定評がありますね」
八幡「俺の知ってるおまえはそんな言うやつじゃない」
一色「…そうかもしれませんね」
一色「でも本心です。先輩……ダメ、ですか?」
八幡「……ダメ…じゃないな」
一色「じゃあ!」
八幡「だが…まだだ…。まだ整理しきれてない」
八幡「もう少しだけ待てないか?」
一色「それなら待ちますよ。ここで、待ってます」
一色「先輩が頼ってくれるまで…ずっと…」
 そういって一色は俺の部屋でくつろぎ始めた。どうやら帰る気はないらしい。
 一色の思い…。今思い返すと、俺は確かに無理をしていたのかもしれない。いや、無理をしていたのだ。恩師を失い、妹を失い…それでいつも通り過ごせる人なんていないだろう。俺も例外じゃなかったみたいだ。そのことに今の今まで気づけなかった自分が不甲斐ない。そして、それを気づかせてくれた一色にも心配をかかけてしまったことが申し訳ない。だからこそ、これ以上迷惑もかけたくもない。
一色「~♪」
 一色がくつろぎ始めて結構時間が経った。こいつは文句を言うでもなくずっと待ってくれている。
 俺は一色を信用していないわけじゃない。むしろ信じているんだ。一色の態度、様子、目を見ればそれは自ずと伝わってくる。
 だから、怖いんだ。俺と小町の関係のように、俺と一色は本物の関係になることが。恐れているんだ。また壊れてしまうことが。裏切られることが。環境が変わっても、俺はまだ変われていない。むしろ退化してしまっているまである。
 さらに時間が経過する。一色の様子は変わらない。俺はまだ悩んでいた。だがそんな俺に対して一色は何のアクションも起こさない。そしてきっと、それは正解なんだろう。冷静に自己分析できるからこそ、そう結論付けられる。
 俺も、覚悟を決めなくちゃいけない。

 一色が部屋を訪ねてきてからおよそ3時間。俺の思いは昇華していた。
八幡「一色」
 一色は覚悟を持って、今日ここに来てくれた。なら俺もその覚悟に応えなければいけない。
一色「…はい」
 俺の心境を知ってそれを突き付けたら俺がどんな反応をするか…、それを考えるのは想像に難くないはずだ。
八幡「…いいんだな?」
一色「ふふ、何をですか?」
八幡「…頼っても、いいんだな?」
一色「もちろんです」
一色「その言葉、待ってましたよ」
一色「結構待ちましたよ?」
八幡「すまん」
一色「先輩は自意識の化物ですからね。これくらいしないといけないと思ってました」
八幡「…すまん」
一色「でも待った甲斐もありました!」
一色「じゃあ、どうぞ!全部吐き出しちゃってください!」


 朝8時。ゆっくりと目覚める。
 昨晩はいろいろあったな…。俺が寝ている間に一色は部屋に戻ったみたいだ。
 一色…。
八幡「うわああああ恥ずかしいぃいいいい!!」
 急に恥ずかしくなってきた。本来、男の子は弱音を人前に見せないものだ。仮に見せても、それは信用できる大人か家族の前だけ。でも俺は、そのどちらでもない年下の女子に弱音を見せた。これが恥ずかしくないわけがない。
八幡「ああぁぁあもう…。あれが深夜テンションってやつか…」
 でも後悔はしていない。俺にとって必要なイベントだったのだ。そのきっかけをくれた一色に感謝しないとな。
八幡「ふぅ…いくか、の前に」
八幡「墓…もうできているよな?」
 昨日葉山達が作ったであろうお墓に向かってみる。

 寄宿舎の隣にはしっかりお墓が2つ並んでいた。もちろん墓といっても話し合いした通り花壇が置かれているぐらいだ。その花壇が2つ並んでいて、手間には犠牲になった人の名前が書かれた板が置かれている。
八幡「お供え物ぐらいは用意してあげてぇな」
 犠牲者のために、俺がしっかりしないとな。

 食堂で最初に話しかけてきたのは案の定、やつだった。
一色「せ~んぱい!」
八幡「おう」
 一色の様子はいつもと変わらなかった。意識してるのは俺だけだったらそれは滅茶苦茶恥ずかしい。
一色「これから、よろしくです」
 一色は照れながら耳打ちしていた。その行動は男心を擽るからやめてほしい…。
結衣「やっはろー!」
 元気がいいやつも来た。人が増えるだけで雰囲気は一変する。昨日までの俺はきっと、そのことにも気づけてなかったのかもしれない。
葉山「みんな、ちょっといいかな?」
 葉山が呼びかける。きっと悪い知らせではないだろう。
葉山「これからも親睦を深めるために、お昼過ぎからスポーツ大会を開こうと思うんだ」
陽乃「へぇ?スポーツ大会ねぇ…」
葉山「正直、毎日いつも通りに過ごしていても暇になっちゃうと思うんだ。せっかく体育館やプールがあるんだしそれを利用しない手はないよ」
陽乃「ふぅん、隼人もいいこと言うじゃん」
陽乃「うん、いいよ!他のみんなはどうかな?」
三浦「あーしも賛成」
相模「うちもいいと思う」
戸塚「僕も構わないけど、何時にどこでするの?」
葉山「お昼を食べたら、体育館でやろうと思う」
葉山「それで明日とかも似たような感じで随時イベントを開きたいとも思ってるんだ」
 葉山の提案は案の定、という感じだ。だがこの生活に退屈を覚え始めていたのも事実、仮にそうでなくてもいつかは来る退屈だろう。
八幡「いいんじゃないか?」
 俺が唐突に発声したことに何人かが驚いていた。雪ノ下とか雪ノ下とか…。
葉山「ありがとう、ヒキタニ君。それじゃあ皆、よろしく」
八幡「あ、すまん。その前にいいか?」
雪乃「どうしたの?いいんじゃなかったの?」
八幡「あ、いや。葉山の意見には賛成だ。俺が今から言うことはそれとは関係ない」
葉山「何かな?」
八幡「お墓参りのことなんだが、お参りの時何かを供えないか?」
結衣「それいいね!小町ちゃんと先生が喜びそうなものをお供えしようよ!」
雪乃「比企谷君にしてはまとなことを言うのね」
海老名「てっきり落ち込んでるかと思ったけど、大丈夫そうだね~」
川崎「それで、何を供えるわけ?あんたの妹が喜びそうなもの教えてよ」
八幡「あいつはなんでも喜ぶと思うぞ。お菓子とかでいい」
一色「なるほど~、先生の方はどうしましょうか」
陽乃「それなら煙草でいいんじゃない?売店にあったはずだし」
雪乃「私たちのほとんどが未成年なのに置いてあるのね…」
陽乃「もちろん、吸っちゃダメだぞ!吸ってるのみたらお姉さんが許さないからね」
戸部「べーマジ怖いっしょ」
葉山「よし、じゃあお墓参りもその方針でいこう」
 というわけで解散となった。今日のイベントは午後の体育館でスポーツ大会だ。

 スポーツ大会を行うならジャージぐらいは買わないといけない。俺はブティックに向かった。
八幡「マジで数揃ってんな…」
 ブティックには俺の想像以上に品ぞろえが豊富だった。これなら服に困らないな。
 買えるポイントがあるかどうか確認する。ポイントは十分にあった。ちなみに、昨日振り込まれたポイントは2500Pだった。少し増えている。何でだろうな?
八幡「とりま、買うか」
 何となく良いと思ったジャージを3着購入した。今日のスポーツ大会用とこれからの寝巻用だ。制服で寝るのは割と辛いしな。
八幡「買い物、終わっちまったな」
 これから昼まで何をしようか計画をたてる。売店でお菓子と煙草、それから灰皿を買ってお墓参りするか。今朝もしたけど、ちゃんとお供えはしてなかったからな。それでも時間が余るだろうから、図書館で本を借りて食堂で読んでいよう。食堂に居れば皆集まってくるだろうし、そのまま体育館に行けるだろう。…誘われるよね?俺だけスルーとかされないよね?
 少し不安を覚えながら図書館と売店に行った。

八幡「ほれ、チョコでいいよな?」
八幡「先生は煙草でいいですよね?火をつけてがあげますよ」
 チョコレートと煙草をお墓の前に供える。これで少しぐらい喜んでくれるだろう。スポーツ大会が終わったら回収しておかないとな。ずっと放置してるわけにもいかないし。

 時間というのは過ぎるのがあっという間で、気が付けば昼飯も食い終わり体育館に来ていた。ちゃんと誘ってもらえてよかった。
三浦「はやと~何するの~?」
葉山「やっぱりみんなでできるゲームがいいよね。バレーボールとかどうかな?」
陽乃「いいんじゃない?人数も14人だし、7人で別れて勝負だね」
雪乃「勝負…」
 雪ノ下に火が付いた気がした。
 そのまま普通にバレーボール。特に何か起きたわけでもなく平和に終わった。その後卓球とかバスケとか体育館でやりそうなスポーツを片っ端からやった。
 俺や雪ノ下は後半でバテて休憩状態。俺はサボリの節の方が強い気がするが。
 そのままいい時間となり、みんなで食堂に戻り夕飯をとる。そして21時なり、各自の当番の場所の掃除をする。
 ここで、気になったことがあったので同じ掃除当番のやつに聞いてみることにした。
八幡「なぁ、お前らってポイントいくつもらってるんだ?」
雪乃「なぜそんなことを気にするのかしら?」
八幡「いや、俺この間まで1000Pだけだったんだが、昨日はいきなり2500Pも貰ってな。それを疑問に思ったんだ」
川崎「え?あんたってそれしか貰ってないわけ?」
八幡「おまえはもっと貰ってるのか?」
材木座「八幡よ、我もお主と同じポイントの変動だったぞ」
川崎「はぁ?あんたも?」
八幡「おまえはいくらもらってるんだよ?」
川崎「私は今まで2000P。昨日は3000P貰ったけど」
八幡「俺らと大して変わらなくねぇか?」
雪乃「ここに来てからの日数を考えると3000Pほどの差はつくんじゃないかしら?」
八幡「そうかもしれんが…」
川崎「雪ノ下はいくらもらってるの?」
雪乃「私も川崎さんと一緒よ」
川崎「へぇ?それって偶然?必然?」
雪乃「私の憶測でしかないけれど…法則性はあると思うわ」
八幡「どんなだ?」
雪乃「学園での貢献度じゃないかしら?」
雪乃「私と川崎さんは事件前も食事当番としてみんなつくしたわ。それがポイントに反映されたのではないかしら?」
八幡「俺と材木座は見回り当番だから、学園に貢献してない判定で増えてなかったわけか」
八幡「その理論なら由比ヶ浜と一色も俺たちと同じポイントか?」
雪乃「おそらくね」
川崎「それなら何で昨日のポイントはいきなり増えたんだろうね」
雪乃「比企谷君たちも掃除当番として学園に貢献したからでしょうね」
八幡「それだとおまえらのポイントが増える理由にならないんじゃ……いや」
材木座「ふむ?八幡よ何かに気づいたのか?」
八幡「ここにいる全員学級裁判後でポイントが大きく増えたよな?」
川崎「そうだけど、何?」
八幡「これは学級裁判を乗り越えたご褒美…といったところじゃないか?」
八幡「不服だがな」
雪乃「その可能性は十分あるわね」
雪乃「モノクマの事だもの、それぐらいしそうだわ」
川崎「てことは貰えるポイントを増やすには学校のためになることをすればいいわけ?」
八幡「正確にはモノクマにとって有益なことじゃないか?」
材木座「ふむ?」
八幡「学園内を綺麗にすること、学級裁判を行ったこと、どちらもモノクマにとっては嬉しいことだろ」
八幡「それにルールにもあっただろ?貰えるポイントはモノクマの独断で決まるって」
川崎「その理論でいったらコロシアイに協力的だったらたくさんポイントがもらえるってことになるけど」
雪乃「実際そうじゃないかしら?」
雪乃「小町さんが3万Pためたのは物を売ったと言っていたけれど、それだけだとまだ届かなさそうじゃない?それならモノクマから貰ってたポイントが多かったとも考えられる」
八幡「場合によってはどれだけポイント貰ってるかも全員に聞いた方がいいんじゃないか?」
雪乃「それはそれで反発が出るでしょうね。自分の財布の中身を暴露するのと同義だもの」
川崎「確かに私もあまり見せたくはないし…」
 ポイントも難しい問題だと改めて認識した掃除時間だった。

 夜部屋に戻る。すっかり忘れていた煙草の回収に向かったら既になかった。まぁ当番に墓掃除もあるしその時片付けられたのだろう。墓掃除してくれたやつに謝らないとな。
 …23時になったのでポイントがいくら入ったか確認する。昨日と変わらず2500Pだった。もしかしたら掃除をサボったら2000Pぐらいに減るかもしれないな。これはこれで実験してみたい。
 こうして夜も更けていく…。

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