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振え、動くのは体か、心か

ふと、思い出した。
「自分は生きている」と感じたあの日の話。

いつか話したかもしれないけど、聞いてってよ。
話をしたい気分なんだ。

もう3年も前になるらしい。
仕事に行けなくなり、適応障害と診断され1年近く経った夏。
地元のとある友達が好きなバンドのライブを見るため、(ついでに)私に会うため、石川に来ると言った。

わたしも好きなバンドだったし、元々軽音部なこともあり、機会さえあればライブに行きたいと常々思っているので良ければ一緒に、とお願いをした。

なんとなく浮き足立ってバンドのタオルを買い、
よくあるポージングでふたりで写真を撮り、
知らない曲でも楽しいだろうなとわくわくしたのも束の間だった。

ライブが始まった瞬間、
それが一種の分岐点だったように思う。

会場中に音が響き渡る。

歌が、演奏が、音楽が
すべての「振動」がわたしの心に、
身体中に響いて、流れて、
それはまるで、心臓蘇生のような。

「あ、わたし、生きてる」

死んだつもりはなかった。
けれど、生きているという気持ちもなかった。

でもあの瞬間、確かにわたしは生きてるんだと感じたのだ。

その日があったとて、わたしの病状が良くなるわけではなかった。
その後何日も寝込んだし、その間に消えたくもなった。
それでも「わたしは生きている」そう実感できたことは確実に、わたしにほんの少しの自信を与えた。

わたしは自らの手で、手潮に流るる赤い血を眺めることはしない。
けれど、そこに求める感情はわたしがあの時感じたそれなのではないかな、なんて、勝手に考えたりもする。

音楽は世界を救う、なんて大層なことは思わない。
あの時のあのバンドが神だったとも思わない。
そもそも、あの1曲目がなんだったかも
既にわたしの記憶からはいなくなっている。

しかし時に、音楽は興奮や感動を追い越した
何かを与えてくれることがある、というのを
ひとつの真実として刻んでおきたいと思うのです。

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