見出し画像

バレンタインと失敗作

バレンタイン、なんとも面倒臭いイベントだと
小学生ながらに思っていた。

わたしが面倒臭かったのは、
お父さんやおじいちゃんにも
チョコを用意しなければならないことや、
仲良い人たちにはなんとなく、
全員分用意しなければならないこと…ではない。

「他の人とは違うものを用意したい」という、
わたしの謎の意地が実に面倒臭かった。

チョコを溶かして固める、なんて小学生のよくある手は
記憶の限り一度も使わなかった。
気になる男の子の記憶に残るため必死である。

お父さんたちにあげるのと同じ、
ガトーショコラにしておけば良かったものの。
二色クッキー、チョコプリン、チョコ春巻き。
どれも思うようにできなかったのに、時間も材料もなく
結局限りなく失敗作に近いそれを
友人や気になる男の子に配った。バカめ。

特に記憶に残っているのは、高校2年生のバレンタイン。
その当時、クッキー屋さんで食べた
ヨーグルト味のクッキーがめちゃめちゃに気に入り、
なんとかして自分で再現したくて、
ネットのレシピを参考にして作った。

美味しくできたかな〜なんて気楽に味見をする。

……あれ?
なんか、硬くない?

完全に失敗だった。
クッキーとしてはあり得ない硬さを誇っていた。
サクッと食べられるだろう、と噛むと
歯が通らないくらい硬かった。

でも一気に何十枚も焼いてしまっている…。
わたしは個包装するのを止めて、
笑い話としてタッパーで持っていくことにした。

案の定、仲間内では
「何を入れたらこんな硬いクッキーになるんだ!?」
と大ウケだった。

みんなにウケたことで味をしめ、
放課後に仲の良い先輩達にも配りに行き、
先輩がクッキーを一口。
「…みんなが笑顔になるクッキーだね」
こんな秀逸な返しが来るとは!
わたしも、周りの友人達も、衝撃と笑いが止まらなかった。

「ウケる」を「笑顔」に変換するだけで印象がまるで違う。
あの瞬間、こんな人間になりたいと
先輩のことを尊敬した高2のわたしであった。

高校を卒業してからは、専らバレンタインは購入派である。

最後まで読んでくださり、ありがとうございます! コメントもいつでもお待ちしております。