文章を遅く書く方法について考える
文章を書いている人なら、だいたいが速筆に憧れる。
執筆速度が速ければ速いほど、沢山の文章を書くことができる。沢山の文章を書くことができれば、それだけ経験値が溜まり、文章力も向上する。
それに、執筆を仕事にすることも視野に入れれば、速度を上げることは自分の収入を上げることとイコールになる。
だから皆、とにかく速く書こうとする。
しかし、自分の好きな作家等を思い浮かべてみると、遅筆の人も結構多い。
めちゃくちゃ面白くて続きが気になるけど、なかなか続刊が出ない……。そうして待ちわびている作品の一つや二つ、誰にだってあるはずだ。
だからどうしても、こう考えてしまう。
良いものを書くには、ある程度の時間が必要なんじゃないか、と。
少し話は変わるが、パソコンのタイピングで文章を書くのと、手書きで文章を書くのと、どっちが優れているのかという問題があったりする。
すぐに修正できたり発表できたりするという点で、タイピングで文章を書く方が圧倒的に優れている。というか、手書きの方が優れている点はほとんど無い。
にも関わらず、頑なに手書きに拘る小説家というのは珍しくない。
単に機械に疎いというわけではない。パソコンを使うと便利だが、どうしても文章の感じが変わってしまう……作家のインタビューで、そういう受け答えを何度も見てきた。
手書きとタイピングの違いについては、軽くググるだけで色々と出てくる。
勉強の際に、手書きでメモをとったかタイピングでメモをとったかで、成績に違いが出てくるんだとか……。
ちゃんとエビデンスまで確認したわけではないが、どうやら、手を動かして文字を書くという動作自体が脳を大きく刺激するらしく、なんかそれが良いらしい。
手を動かすことによる脳への反応だとかは、正直よく分からない。
ただ実際に手書きで文章を書いてみると、なんとなくパソコンを使う時よりも、より深く考えて書くことができている気がする。これは大体の人が実感できると思う。
そして同時に気づく。
手書きって、タイピングに比べてめっちゃ遅いのだ。
ブラインドタッチができていない人は別だが、できる人にとっては、タイピングでの文章執筆はものすごく速い。
それは少し速すぎるくらいで、頭の中で文章がまとまる前に書けてしまうくらいだ。
それはつまり、考えるスピードよりも速い、ということになるかもしれない。
僕の場合は特に、長時間パソコンで文章を書いていると、だんだんと思考が上滑りしていくような感覚に陥る。
もしかするとそれは、自分の文章を自分で制御することができなくなっているんじゃないだろうか。
だからこそ、文章を速く書く方法だけでなく、遅く書く方法についても考える必要があるんじゃないかと思う。
手書きのように、ゆっくりと書く方法だ。……可能なら手書きで書くのが一番良いんだろうが、それはちょっと、不便だったりする。
せめて書くスピードだけでも手書きと同じくらいにまで落とす。そういう方法も、考えてみる価値はあるのかもしれない。
一文を書くのに時間をかけ、たまに手を止めて考えながら、じっくり書いていくというやり方でしか、書けない文章もあるんじゃないだろうか。
速く効率的に書くための方法は、軽くググるだけで大量に出てくる。
それでもうまく文章を書くことができない僕のような人は、そろそろ、遅く書くというアプローチを試みる必要に迫られているのかもしれない。
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